なぜか、同期のモテ男に好かれてしまったのですが…

325号室の住人

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「あ、だから見たことがあったんだ!!」

俺は、デジャヴュ感のある目の前の人に、ようやく合点がいく。

叔父の部屋には、いつだって大事にしてる写真があった。
父の存命中には叔父の自室に、最近では今日も部長室で見ている。
若い女性が幼女を抱っこしている写真はこの人だとわかった。

「俺と姉が、叔父のところに転がり込んだからですよね?」
「そうね。雅史は『海外赴任が終わったらきちんと結婚しよう』って籍だけ入れてイギリスに行って、帰国したら『甥と姪と住むことになったから、すまない!』ってね。
まぁ、私としてもスカイと2人の暮らしは楽しかったからラッキー♪って。あぁごめん、ヨシヨシ…」






母が部長の頭を撫でるのもだけど、島津並みに大きな体の部長が背中を丸めて母の言うがままということに笑ってしまう。

「とにかく! 私も雅史も、2人の結婚は祝福する。だからスカイ、今日は灯くんのところに泊めてもらってくれるかしら。ついでに…」

母は、私が島津にずっと握られている手に視線を移してから言った。

「この際、2人一緒に住んじゃいなさいよ。2人はもういい歳なんだし明日入籍したっていいわよ? アタシみたいに、妊娠が判った直後に夫が単身赴任になるかもしれないんだし、ね。」

目元を赤らめた部長がこちらを見て、

「2人の結婚には賛成だ。ただし、絶対に娘を幸せにしろよ、灯。泣かせたら承知しない。
それから、スカイの荷物は全部梱包してウチへ送る。代わりに僕の荷物は人をやるから月曜までにこちらへ送ってくれないか。」
「え…」
「これまで新婚生活なんて全然できなかったんだ。少しくらい真似事はさせて欲しい。
それで、できたら…2人の結婚式には呼んで欲しい。
スカイ、一緒にバージンロードを歩くぞ。」

言うと部長は私に左手を差し出し、私も同じ手を差し出し、ガッチリと握手をした。

「スカイ…幸せに。僕らはどこにいても、空で繋がってる。」
部長は笑って言った。

「名前の由来だよ。《スカイ》は僕が名付けた。」
とは部長。
「キラキラネームでごめんね。」
とは母。

私は父?と握手をしながら頷いた。

本当は右手が良かったけど…
島津を見れば、右手の先に唇を付けた上目遣いの彼と目が合って微笑まれた。

苦笑いで母を見れば、真剣な顔で頷いていた。
隣で部長は呆れ顔で頷いており、私はもろもろ悟ったのでした。






「いろいろ、許してくれてありがとうございました。」

日付が替わる頃…
玄関先で島津が両親に頭を下げた。

「ありがとう、お母さん。それから部…いや、お父さん。」
「スカイぃ~…」

感極まった様子の部長がこちらに手を伸ばしたけれど、島津に拐うように玄関から連れ出されてしまった。

「また…会社でね!」

島津に手を引かれながら、反対の手で両親に手を振る。

自宅のドアから出るだけなのに連れ去られるような…実家でのその年最後の滞在になるとは思わなかった。


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