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しおりを挟む──神様…過酷すぎる試練だと思うのですが…
これまでの人生でここまで3次元の男性に囲まれたことなどない。
何故かわからないけれど、昔からリアルの男子の視線が怖い。
そこで、本来視力は良いのだが母が買ってきてくれた伊達眼鏡を掛け始めてみると、途端に視線が気にならなくなった。
ただ、今もアレだけは苦手。
それは、《島津の笑顔》だ。
さっきも驚いた。メイクを直し終えてトイレを出た時に島津とぶつかって、髪に触れられて、その後は壁ドン。
あんなに男に接近されたのだって初めてで…怖いのを隠すようにいつもより饒舌になってしまった。
始業のチャイムに助けられたものの、次の試練はこの婚活パーティー会場だった。
ネイラーズ他オシャレ番長系女子の皆さんは、部長のところへ集まって、
「島津くん♪」
なんて。
「あの、そちらは部長ですよ。」
「は? スカ先輩、何言ってるんですか?」
「いや、うん。島津灯は私の甥なんだ。」
「え…でも、この顔……」
「資料室で君からヒアリングした、それは私だよ。最後までわかってもらえなかったけど。」
「はぁ…毎回皆さん階段上るの嫌で、私に書類のお届けを頼むからですよ。」
「嘘! 損したぁ…」
「それじゃあ部長、あちらでお話ししませんか?」
「え…あぁ、それじゃ、行こうか。」
部長はあっという間にネイラーズに連行されて行った。
でも、資料室での島津の噂は、部長だったんだ…
もしかして、本当に遊んでいないのかしら。
婚活パーティー開始の時間まで、まだ時間がある。
空は時間まで何か食べていようと考えていたものの、お皿まで1mのところで、参加者の男性に声を掛けられ、部長とはまた別のソファで男性に囲まれることになってしまうのだった。
叔父に言われた約束の時間より前に社員食堂に到着したのだが、何故か中はもう出来上がっていた。
叔父はハーレム状態で、ポロポロと2人きりで話す者も居たが、あぶれたであろう男共がスカイを囲んでいた。
スカイは昼間のスーツとは違って、地味なつもりか紺色のシンプルなワンピースに身を包んでいるのだが…
襟元や袖口に白のレースを使っているのが上品で、黒のストッキングは収縮色のため余計に足をほっそりと見せ、女子の平均より小柄なところは庇護欲を誘っていた。
けれど、近付いて行けば目が泳いで視線が定まらず、困っているのが丸わかりだった。
俺は迷わずスカイのところへ歩いて行くと、彼女の目の前に跪き、右手を取る。
その時に司会者がパーティーの開始を告げ、スカイの周りの男共が立ち上がった。
「斉藤さん、俺と来て欲しい。」
俺の言葉は司会者のマイクで掻き消されたが、1番伝えたかったスカイには届いたようだ。
俺はスカイの手を引きそのまま彼女の指先に口付けると、驚きで呆然とするスカイを担ぎ上げ、屋上のテラス席へ出た。
「え、あ、ちょ、島津…くん!」
途中で自分の状態に気付いたスカイが何か言っていたけれど、俺は聞こえないふりをしたまま彼女を壁際のベンチに下ろし、隣に掛けた。
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