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しおりを挟むスカイとはなかなか話せない日々が続いているが、先日はファストフード店のウィンドウ越しに顔を合わせた。
最初はこちらに気付いておらず、レアな眼鏡なしの状態でスマホを眺めてた。
頬を朱に染め、フニャッとした笑みを浮かべるスカイ。
眉間に寄せたシワも相まって、何だか色っぽかった。
最終的には瞳を潤ませているのを見て、俺はついムラッと来て、そちらへ近付いてしまった。
目元をマッサージした後に顔を上げたスカイと一瞬目が合ってしまい、ドキッとした拍子に俺の本能が目覚めるような気がして、慌てて会社のトイレに駆け込んだ。
その日の午後は下半身をスースーさせて過ごす羽目になったけれど、やっぱり俺はスカイが好きだし、スカイとは男女の関係になりたいとも思っていることを実感した。
そこで翌日、資料室で迫ってきたスカイの後輩の女から手渡された趣味じゃないマグカップをダシに、スカイと数年ぶりに会話をすることに成功した。
しかも事故ハグもしたし、俺の腕の中で眼鏡を外したところを間近で見られたし、本当に幸せだった。
けれど、デートの誘いは突き放されるように食い気味に躱され、しかも走って逃げられた。
久々に聞いたスカイの声はとてもかわいらしく、直後にトイレに駆け込んだのは言うまでもない。
──また、話せるといいな…
俺の片想いは、まだまだ続きそうである。
昨日の給湯室で島津と会話したところを、後輩の小出とすぐ上の上司のネイラーズに見られていた。
朝から島津との関係を根掘り葉掘り…
心的ストレスが半端ない。
「スカ先輩って、確か《王子様》みたいなタイプが趣味なんですよね?
ソレって、まんま島津主任じゃないですか!」
小出にネチネチと言われる。
あの時は確か、《王子受が好み》だと自分が腐女子であるとカミングアウトしたつもりだったのだが、どうやら受け取った相手の解釈でのリスニングだったらしく、肝心なところが抜けている。
「島津く…いや、主任は違うよ。今はしてないけど、ちょっと前まで結婚指輪してたじゃない? 私、できたら初婚の人がいいから。」
「そうかぁ。スカ先輩、もう四捨五入したら三十路っていうか、30台に片足突っ込んでますもんね。お付き合いするなら次は結婚相手ですよね。」
「だったらさぁ、スカちゃん今日はアタシに付き合いなさいよ。
で、来週末は婚活パーティーに行くわよ!!
これは上司命令だからね。」
「……………………は?」
そうして私は、ネイラーズの思い付きによる傍迷惑なパワハラに、強引に付き合わされることになった。
「なぁ、総務部に儚い系の美人が入ったって?」
「何言ってんだよ、前から居ただろ? 斉藤さんだよ。」
「斉藤……? あの眼鏡の?」
「そうそう。最近、眼鏡替えて顔がよく見えるようになったんだよ。あと髪型もメイクも変わった。」
「え…あの?」
「そうそう。それに、服装もさ、スカート穿くようになっただろ? 足がキレイなんだよな。足首がキュッとしまってさ。」
「それに、意外とスタイル良くね?」
「だよな。やっぱり《階段族》は違うよな。お前もやれば? 腹ヤバいぞ!」
「アハハハ…」
スカイと給湯室で過ごした翌週の金曜、軽食を貰おうとやって来た食堂で俺は耳を疑った。
昨日までは出張でずっと地方を巡っていた。
《総務部の斉藤さん》とはスカイのことではないのか。
スカイの魅力が周りにバレてしまったのか?
想像よりライバルが増えてしまったようで、俺は頭を抱えた。
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