なぜか、同期のモテ男に好かれてしまったのですが…

１

「はぁ…」

地方出張から戻った島津灯あかり（♂・同期・既婚）のお土産がシフォンケーキで、手掴みで食べるには大きいからと部署のネイラー女子らが言った。
筆頭が上司だから、どうしたってこうして余計な仕事が回ってくるんだ。

空スカイは、みんなの使ったケーキフォークを振ると、少し乱暴に水切りかごへ放る。

転がったフォークが２本、先を絡ませるのを見て、頭に浮かぶのは今日発売のＢＬ雑誌の一番人気達のＲ18の絡みだった。

確か前号では本編のメインヒーローだった魔法国の王子の男根がエロスの魔法に支配され、使い物にならなくなってしまう。
けれど、後孔から供給した子種の影響で、魔根化を遅らせることができるのだと、幼馴染でもある騎士団長に告げたんだ。

だから今日発売の最新刊では、絶対に２人の絡みを見ることができると、とっても楽しみにしていたのだ。

──家に帰れば、ネット注文したのが届いてるんだけど……

空は鬱々とした気持ちのまま午後の業務に取り掛かるのはイヤだった。

だから、電子書籍で単話買いすることに決めたのだった。






──うっはぁ……やっぱり思った通りだった。

いつものコーヒーショップではなく、ファストフードの店でアイスコーヒーを購入した空は、前に窓しかないカウンター席に陣取るとスマホを取り出し、早速読み始める。
そして読了すると、

──絵師様……

空は思わず、スマホに向かって手を合わせた。

王子と騎士団長の絡みは最高だった。

『お前、物欲しそうな表情カオでココ眺め過ぎなんだよ！
お前はコレが欲しいのか。欲しいなら、俺をその気にさせてみろよ！！』
頬を染めながら徐ろに膝を折る王子…

うへへ…

そこまで読んだものの…

──やっぱり、スマホで読むと目が疲れるわ。帰ってから紙の雑誌でじっくり読もっと。

そうして、顔を上げた時だった。
店の窓越しに、島津と目が合ったのだ。

その時、島津の瞳が光ったような気がした。

けれどそれはほんの一瞬で、島津はフイッと顔を進行方向に戻して行ってしまった。