【本編完】しがない男爵令嬢だった私が、ひょんなことから辺境最強の騎士と最強の剣の精霊から求愛されている件について A-side

325号室の住人

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本編

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「だあああぁ!!」

シャーーーーンッ

「リッカ嬢…元気だな。マーロン殿はよく恋人を抱き潰さずにいられるものだ。ハアァァ!」

シャーーーーンッ

「リッカ様が生まれた時、前辺境伯様の従者をしていたのが副団長だ。その時にリッカ様が自分の《運命の番》かもしれないと予感した。
あれから20年。忍ぶ恋がすっかり身に付いていらっしゃるのだ。テヤァーーー!!」

シャーーーーンッ

「まぁ、我々としてはライド様がこの地にやって来たことを歓迎しているのだ。トアアァァァ!!」

シャーーーーンッ

「やっとリッカ様が、《前辺境伯令嬢》に戻ることができるからな。ヤアァァァァ!!!」

シャーーーーンッ

「これで心置きなく、マーロン副団長と縁を結ぶことができるだろうから。デヤアァ!!」

シャーーーーンッ

「…にしてもキリがないな。夜明けはまだ、カッ!!」

シャーーーーンッ

「もう、あの山の稜線が明るく感じる、ガ!!」

シャーーーーンッ

「何だか少し、魔物が弱ってきたように感じる、ナ!!」

シャーーーーンッ

「本当だ。俺達は疲れてきているはずだが、剣の通りがよく感じる、ゾ!」

シャーーーーンッ

『ライドよ、そろそろ夜が明ける。陽が昇れば、魔物共は森の緑の深いところへ退いて行く。間もなくだ。』

「皆、陽が昇れば魔物は退く。あと少し、耐えるぞ!」

「「「「「「「「「おう!!」」

シャシャシャーーーーンッ






ところ変わって、ここは辺境伯騎士団詰所の見える丘……

「これでしまいだ。」
「第5は無事か?」
「タコちんの足と一緒に何本も得物が刺さってわやくちゃじゃけぇ、めげとるやろうのぅ。ほれ、いぬるわ。」

水平線へ昇る朝日が眩しくなってきた頃、第5との因縁である《タコちん》は成敗された。

だいぶ沖まで出ていた第5がこちらへ戻ってくる。
騎士達の剣が何本も甲板に刺さり、人工芝はたこ墨に染まっている。
この状態で無事ではないだろうというのが、商隊に化けてここまでやって来た騎士団員の見立てであった。

「あのぅ…」
「なんや!」

私は、ずっと気になっていたことを、勇気を持って訊ねてみることにした。

「私、まだ盗賊の《と》の字も見ていないのですが、盗賊役の方々って…」
「あぁ、騎士団役のヤツらと戦ってるんじゃん?」
「え…でも、味方同士なのですよね?」
「んー、まぁー…なぁ、このお嬢さんにどこまで話していいの?」
「お、戻ってきたぞ! んじゃ、お嬢ちゃん達は先に下行ってろし。」

親切に質問に答えようとしてくれていた、商隊役の中でも若い方に背中を押され、馬車のある方へ戻るように足を進める。

「おーい、フレリア~、こっちよ。こっち。」

馬車の停車場所との間、以前リッカ様とシュカと3人で詰所へ降りた辺りで、今まで眠り続けていたとは思えない元気いっぱいのシュカが飛び跳ねながら私に手を振っている。

「シュカ? 目が覚めたの?」

私が駆け出すと、シュカは両手を広げて受け止めてくれた。

シュカに抱きついた瞬間、平原を切り取るように地面が沈み始める。

その時だ。

「「「「ウォォォーーーーー!!!」」」」

突然、辺境騎士団の制服に身を包んだ男達が抜刀して駆け込んできた。

断崖絶壁の方からも、各々得物を手にした商隊姿の男達が迎え出る。

その中を、私とシュカは詰所へ向けて、前回よりも速いペースで地面ごと降りて行った。


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