【本編完】しがない男爵令嬢だった私が、ひょんなことから辺境最強の騎士と最強の剣の精霊から求愛されている件について A-side

325号室の住人

文字の大きさ
上 下
22 / 49
本編

  22

しおりを挟む

「こっちだ。」

ボソボソと何かを呟いていたリッカ様の歩調に合わせて90度に曲がる度、シュカの袴の裾がヒラリと舞うようで可愛らしいのを見ているうちに、風景が母艦の中のようにメカメカしてきた。

「団長率いる第一センカンに入ったからな。」
「だいいちセンカン?」
「戦艦。あの平原の先は断崖絶壁になっていて、それ自体が秘密の基地になっている。もちろん海からの侵略にも対応できるようになってる。」
「そんな文明、この国に?」
「あぁ。なんでも、《ショウワアニメ》という文明らしい。」

──昭和アニメ? あの宇宙を旅する戦艦?

「この世界に魔法を使える人族は居ないけど、この領には魔法が使える種族も大勢共に生活しているんだよ。
最終的に、機関車も空へ飛ばしたり、あと喋らせたり自分で燃料を補給したり走らせたりしたいらしいよ。
この基地内には研究者がたくさん住んでいて、魔法に頼るモノ頼らないモノ関係なく、今もなお、いろいろな研究が進められているんだ。」

「よくわからないわ。」
呟くシュカの横で、私の頭の中は懐かしのアニメ大会が繰り広げられていた。






「ここがコックピットだ。」
暫く進んでリッカ様が足を止め、何かの暗号のような複雑なノックをした。
「……団長、失礼します。」
「入れ。」

私達3人はその部屋に足を踏み入れた。



そこは、目の前の大きな窓からの眺望が素晴らしい、昭和レトロな旅館の広縁だった。

白い砂浜のオーシャンビューの広縁、左の籐椅子に赤いアロハシャツに黄色い縁のサングラス、緑髪に白髪が交ざった抹茶ミルクみたいな色合い、お行儀悪く手前のローテーブルの上に足を組んでいる。

──えっと… コレが辺境伯様?

すると、右側から見覚えのある黒の長髪を左肩側へ流すように纏めた、細身の男性がやって来た。
その男性へ体を向けながら敬礼し、リッカ様が口を開いた。

「団長、フレリアとシュカです。」
「おぉ! よく来たなぁ。私が辺境伯だ。宜しく。」

辺境伯様が握手を求めるようにこの手を伸ばしてこちらへ足を踏み出した時だった。

「やーんっ。モノホンのフレリアちゃんじゃなーい!」

そんなテンション高めのセリフと共に右側から柔らかな物体に抱き締められた。

「もう! 母様止めてください。」
「えー、でもモノホンのフレリアちゃんなのよ? 髪ピンクだし、めちゃカワイイし、スタイル抜群なんだよ? テンション上がらない訳にいかないじゃない!!」

シュカのツッコミにテンション高く返答しながら、今度は正面から抱き締められた。
そして耳元に囁かれるのは、
「あたし、《享楽のフレリア》知ってるの。」
の言葉。

けれどそのままシュカに引き剥がされたのは、真っ赤な髪から少し尖った耳を覗かせた、スレンダー女性だった。

「あたし、ここで副団長してるミレア。いつも娘のシュカがお世話になってます。」
ガバリと頭を下げる女性は、何とシュカのお母様だった。

「えっと、こちらこそ!」
私も慌てて頭を下げる。

「ホント、羨ましいわ。この胸!」

サッと私の背後に回り込んだミレアさんは、なぜかそんなことを言いながら私の胸に手を伸ば…

バチバチバチッ!!

伸ばされる前に、剣精サマの結界が発動され、電撃が走る。

シャキーン!

鞘から抜かれた剣でその電撃を受けたミレアさんは、
「これが剣精の結界かぁ。了解!」
そのまま剣を鞘に戻すと、
「じゃ、愛しの彼らの雄姿を見に行きましょうね。」

ミレアさんはなぜか右の押入れを開けてきれいに畳まれた布団に手を翳すと、大きなポスターが向こう側から破られたように空間に穴が開いた。

「さぁ、こっちよ。」

リッカ様とシュカと私は、ミレアさんに続いてその穴の中へ進んだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花
恋愛
 公爵令嬢のカミラ・リンディ・ベネット。  彼女は階段から降ってきた誰かとぶつかってしまう。  その『誰か』とはマーセルという少女だ。  マーセルはカミラの婚約者である第一王子のマティスと、とても仲の良い男爵家の令嬢。  いつに間にか二人は入れ替わっていた!  空いている教室で互いのことを確認し合うことに。 「貴女、マーセルね?」 「はい。……では、あなたはカミラさま? これはどういうことですか? 私が憎いから……マティスさまを奪ったから、こんな嫌がらせを⁉︎」  婚約者の恋人と入れ替わった公爵令嬢、カミラの決断とは……?  そしてなぜ二人が入れ替わったのか?  公爵家の令嬢として生きていたカミラと、男爵家の令嬢として生きていたマーセルの物語。 ※いじめ描写有り

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

処理中です...