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本編
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しおりを挟む「ここが騎士団の詰所だ。」
降りた馬車を辺境伯邸まで先に帰し、それから徒歩20分。
急に立ち止まったリッカ様はこちらを振り返り言った、ものの……
ここは森の中の少し開けた草原だった。
「え?」
「リッカお姉ちゃん、本当にここ?」
戸惑う私達にリッカ様は大仰に頷き、右足を振り上げたと思ったら、その足をずんっと下ろす。それを3回はやっただろうか。最初は少しの揺れだったのが、足の下が立っていられない程に揺れ始めた。
「きゃ! 何?」
「地震なの?」
「2人とも、私に掴まって!」
「「きゃーーーー!!!」」
リッカ様の右腕と左腕を私とシュカで仲良く分け合いながら、まるで《舞台のせり》のように、半径1メートルの地面と一緒に地中に降りる。まるで地底に吸い込まれるようだった。
「フレリア、シュカ、今のうち目を閉じてなさい。下とは光量が違うから。」
「「はい。」」
頭の先までが地中に入ってしまうと上でビデオカメラのフタが自動で閉まるようなシャッとした音が聞こえ、辺りが真っ暗になる。
リッカ様の指示で目を閉じ、体感時間として5分程度かしら。
「そろそろ下だ。私が良いと言うまで目を閉じているように。」
私はリッカ様の左腕をダメにしてしまいそうな勢いで搔き抱きながら、怖いけれど俯かないように耐えた。
次第に、瞼の向こうが赤く見えるようになってくる。
「良いよ。」
リッカ様の声に瞼を上げると、そこはつい今しがた上で見ていた平原だった。
「さぁ、降りるぞ。せーのっ!」
リッカ様の右腕に腰を抱かれ飛び跳ねて少し前へ降りると、背後のシュンッという音と共に透明な壁ができ、地上から一緒に降りてきた芝の地面が水に浮くように上がって行った。
「フレリア、ほら落ち着いて。団長のところへ向かうよ。」
「団長?」
「父様のこと。ここに来ると《父様》とは呼ばない。辺境騎士団長だから、《団長》と呼ぶことが多いのだ。」
「リッカお姉様、カッコいいわ!」
「そうか? では、私が2人をエスコートさせてもらうよ。
姫たち、お手を!」
リッカ様はふざけた様子で恭しく頭を下げ、私とシュカにそれぞれ手を伸ばす。
「えぇ!」
「宜しく。」
シュカと同時に出された手に指先を乗せると、流れるように平原を歩いた。
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