【本編完】しがない男爵令嬢だった私が、ひょんなことから辺境最強の騎士と最強の剣の精霊から求愛されている件について A-side

325号室の住人

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「……ん?」

目覚めると、夕暮れ時だった。
変な体勢で眠ってしまったので、首が痛い。

首を撫でながら体を起こすと、

「おぃさま、目覚めなすったか?」

意外と近いところから、老婆の声がした。

「だあれ?」
訊ねると、

「ミーヤでございます。王妃様より、今この時より、お姫ぃ様のお世話をするよう言付かりました。」
と答える。

「そう。ありがとうございます。ミーヤ。」
「さぁ、明かりを灯しましょう。」

ミーヤが窓の間やチェストの上のランプに火を入れてくれたので、あっという間に室内が明るくなった。

ミーヤの顔がよく見えるようになると、

「お姫ぃさま、お風呂へ入られてはどうかの?
着替えは、王妃様のを借りてきたけんど、その胸じゃ、こっちのが良いかも知れんね。」

最初に出してきたのは、きらびやかな装飾のある豪奢なドレス。
次に出したのは、実用性のある動きやすそうなワンピース。
私は即座に後者に手を伸ばすと、ミーヤに案内されて浴室へと向かう。

猫足の華奢なデザインの浴槽を見、それから自分の胸や尻の凹凸を見下ろすと、迷わずシャワーを借りることにした。

出るのは水だろうと思っていたのに人肌のお湯で驚くが、浴室にあったシャンプー、トリートメントにコンディショナー、ボディソープは全て日本語表記で、この場所が本当にR18かはともかく日本のゲームの世界…に、似た世界だと思わずにはいられなかった。

スッキリさっぱりとして、髪の水分を軽くタオルで吸収させ、《とぐろ》のように巻いてからタオルを被り、ワンピースを着る。

既製品のように《もうちょっと胸が広ければ》ということはなく、どちらかと言えば少し余裕のあるデザインに嬉しくなる。

そのまま居間に戻れば、ミーヤがドヤ顔で出迎えてくれた。

「やっぱりそのサイズでよぅございましたね。」

「あの、このワンピースは…」

「はい。わたしのです。わたしは、自分で産んだ年子の双子と息子、第2・第3王子殿下方の乳母をしておりました。
その時の、爆乳時代の服にございます。」
「え……でもこの服、まだ胸に余裕があるわよ?」
「はい。それはもう肩が凝って、お腹が空いて、母乳製造機のようでございましたから。」

遠い目をしたミーヤに、私は想像するのをやめた。

「この服は、この胸の下のリボンを絞ることでスッとしたデザインにもなります。
そうする場合にはこの上の紐を調節して、これをここに隠して…ほら、また少し違うでしょう?」
「えぇ、そうね。」

それから、先程の黒髪の青年が食事の時間を知らせるまで、ミーヤと爆乳あるあるで盛り上がった。


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