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「…と、いう訳で母上。カイルの残念会をしましょう。」

母上は僕の方を不思議そうに見た。

「名も知らないけれど、ずっと一緒に居たいと思う娘がおります。
それが、やっと数年前に父親の家名がわかって、父上にお願いしたら………………」
「あら。あらあらあら、そうだったのね!」
「けれど現れたのは違う女性で、しかもカイルの初恋の女のコは…」
「そうだったのね。もしかして、テディって?」
「テディは僕のことです。ずっと部屋にあった白いテディベアに魔法で僕の意識を乗せて、野薔薇の迷路で迷子になっていた彼女を助けたのが出会いなので……」
「まあ! まあまあまあ!!」
「どうです?母上。カイルの初恋の彼女にお心当たりが?」
「えぇ。もちろんよ! その子は私の姪、アネットですもの。
スカーリー侯爵家の娘というのも正解。
けれど、先月婚約してしまったのも正解。」

母上はそこまで言うと、正面から僕を見据えた。

「実は今、探っている事があるの。あの子はとても優しいし、幸せになってもらいたいわ。
もし、カイルのアネットへの気持ちが消えないと言うなら……
どう? 待てる?」

「はい。僕は、彼女じゃないといやです。彼女が欲しい。彼女以外はいりません。
まだチャンスがあるなら、諦めません。待ちます!」

僕の宣言に、母上はゆっくりと頷いた。

「宜しい。カイルの覚悟はわかりました。《その時》を待ちなさい。」



あれから、どれほどの時をじれじれと過ごしたか。

派手で高飛車な、《王子妃》をブランドバッグか何かとでも思っているんじゃないかという、媚びたような……それを見る度に思い出すのは、彼女のあの純真さ。

まぁ僕だってわかってる。
あの純真さは、子どもだったからだろう…と。

けれど忘れられないんだ。
僕は彼女の笑顔が見たい。
彼女の1番近くで……


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