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覚醒
しおりを挟むディアマンテ達が立ち去ってから間もなく、潮が満ち、祭りの始まりを告げる笛が鳴り響く。
司祭の祈りの言葉の後に、エドアルドが集まった国民に向けて短いスピーチを行うと、それぞれ用意された祝祭船やゴンドラ船に乗り込んでいく。祝祭船は基本的に王族や聖職者、そして上位貴族が乗り、ゴンドラ船には下位貴族や平民が乗るという決まりがある。
「まさか、船に乗るのも初めてか?」
「はい」
不慣れな足取りで、恐る恐る先頭の祝祭船に足をかけるクラリーチェを見兼ねたエドアルドは、軽々とクラリーチェを抱き上げた。
「きゃあっ!」
「しっかりと私に捕まっていろ」
言われなくても、クラリーチェは突然の事に、エドアルドの首にしっかりと腕を巻き付けてしがみつくしかない。
エドアルドはクラリーチェを抱えたまま、ひらりと船に飛び移る。
それは、巷で流行している恋物語の一節のようだった。
リリアーナをはじめとした、令嬢達から黄色い歓声が上がった。
「わざわざ目立つような事をしなくても良いと思いますが………」
後ろからついてきたラファエロが、やや呆れ顔で呟く。
「国王とその婚約者が仲睦まじい所を見せるのも、大切なのだろう?」
エドアルドはにやりと嗤う。
その言葉を聞き、クラリーチェは大衆の前でエドアルドに抱き上げられている事に気がついた。
「お、降ろして下さい………、エドアルド様っ」
「初めて船に乗るのであれば、酔ってしまうかもしれない。波は穏やかだとはいっても、かなり揺れる。大人しく私の腕の中にいた方が安全だ」
すっぽりと後ろから、抱きしめられればクラリーチェは抵抗のしようがない。
顔を真っ赤に染めながら、クラリーチェは恥ずかしそうに俯いた。
同じ祝祭船には、ラファエロと司祭、そしてダンテを含む護衛の近衛騎士と船の漕手が乗り込んだ。後続の船にはディアマンテ、ブラマーニ公爵夫妻とジュストとリリアーナ、フェラーラ侯爵夫妻が乗り込む。
船の船尾には、キエザの象徴である青地に白い獅子が描かれた旗が掲げられる。
「出航!」
エドアルドが声高らかに告げると、一斉に漕手達が櫂を動かす。
太陽の光を反射した水面がキラキラと輝き、クラリーチェは眩しさに目を細める。
頬を撫でる潮風が心地よく、クラリーチェはエドアルドの胸に頭を凭れさせた。
ふと後ろを振り返ると、リリアーナがクラリーチェに向かって手を振っていた。
その後ろにも続々と船が連なり、沖を目指していく。
クラリーチェはリリアーナに手を振り返すと、再び進路方向に視線を移した。
波が、船首部分にぶつかって弾け、小さな飛沫となってクラリーチェの顔にかかる。
こんなに近くで、海を感じたのは初めてで、クラリーチェは嬉しくなり、思わず微笑んだ。
………それが、絶望への船出だとも知らずに。
司祭の祈りの言葉の後に、エドアルドが集まった国民に向けて短いスピーチを行うと、それぞれ用意された祝祭船やゴンドラ船に乗り込んでいく。祝祭船は基本的に王族や聖職者、そして上位貴族が乗り、ゴンドラ船には下位貴族や平民が乗るという決まりがある。
「まさか、船に乗るのも初めてか?」
「はい」
不慣れな足取りで、恐る恐る先頭の祝祭船に足をかけるクラリーチェを見兼ねたエドアルドは、軽々とクラリーチェを抱き上げた。
「きゃあっ!」
「しっかりと私に捕まっていろ」
言われなくても、クラリーチェは突然の事に、エドアルドの首にしっかりと腕を巻き付けてしがみつくしかない。
エドアルドはクラリーチェを抱えたまま、ひらりと船に飛び移る。
それは、巷で流行している恋物語の一節のようだった。
リリアーナをはじめとした、令嬢達から黄色い歓声が上がった。
「わざわざ目立つような事をしなくても良いと思いますが………」
後ろからついてきたラファエロが、やや呆れ顔で呟く。
「国王とその婚約者が仲睦まじい所を見せるのも、大切なのだろう?」
エドアルドはにやりと嗤う。
その言葉を聞き、クラリーチェは大衆の前でエドアルドに抱き上げられている事に気がついた。
「お、降ろして下さい………、エドアルド様っ」
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すっぽりと後ろから、抱きしめられればクラリーチェは抵抗のしようがない。
顔を真っ赤に染めながら、クラリーチェは恥ずかしそうに俯いた。
同じ祝祭船には、ラファエロと司祭、そしてダンテを含む護衛の近衛騎士と船の漕手が乗り込んだ。後続の船にはディアマンテ、ブラマーニ公爵夫妻とジュストとリリアーナ、フェラーラ侯爵夫妻が乗り込む。
船の船尾には、キエザの象徴である青地に白い獅子が描かれた旗が掲げられる。
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頬を撫でる潮風が心地よく、クラリーチェはエドアルドの胸に頭を凭れさせた。
ふと後ろを振り返ると、リリアーナがクラリーチェに向かって手を振っていた。
その後ろにも続々と船が連なり、沖を目指していく。
クラリーチェはリリアーナに手を振り返すと、再び進路方向に視線を移した。
波が、船首部分にぶつかって弾け、小さな飛沫となってクラリーチェの顔にかかる。
こんなに近くで、海を感じたのは初めてで、クラリーチェは嬉しくなり、思わず微笑んだ。
………それが、絶望への船出だとも知らずに。
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