【完結】僕の覚醒

325号室の住人

文字の大きさ
上 下
1 / 3

  かわいい子は誰?

しおりを挟む

僕の姉ちゃんはかわいい。
年子で春生まれの姉ちゃんと、冬生まれの僕アユム。
中学の時はテニス部の部長で学校内にファンクラブがあり、高校の時は生徒会長で学校内にファンクラブがあった。

僕の自慢の姉ちゃんが、高校を卒業した。
姉ちゃんが居ない高校生活は、平和そのものだ。

姉ちゃんには高2から彼氏がいる。
ちょっと年上の彼氏は大学生のイケメンだ。
姉ちゃんと彼氏のタツさんは、とてもお似合いで僕の自慢だった。

僕が、高校生活最後の誕生日を迎えたのは、姉ちゃんと同じ大学に合格したのが判った日だった。

その日、僕は姉ちゃんに言われた。
「おめでとう。ねぇ、これ私からのプレゼント。」

もらったのは、姉ちゃんの彼氏のハズのタツさんだった。






「え…タツさんは、姉ちゃんの彼氏なんじゃ?」
「違うわよ?」
「え……」

混乱する僕、ちょっと困った笑顔のタツさん、そして極上の笑顔の姉ちゃん……

「じゃ、あとはヨロシクやりなさい。」

姉ちゃんは、僕らを置いてけぼりにして行ってしまった。




「「………………………………」」





流れて行く沈黙。
未だ困った表情のタツさんと、観察する僕。

──タツさん、大人なんだからしっかりしてよ!!






「「………………あのっ…あ、どうぞ!」」

沈黙ののち、タツさんと同時に喋ってしまった。

「アユムくん、先にどうぞ。」

タツさんに促されて、僕から話すことになった。
僕が訊きたいのは、ただ1つだ。


「あの…タツさんは、姉ちゃんの恋人なんじゃなかったんですか?」
「あぁ…そのことか。俺は、そのつもりだったんだけどね…ハハハ…」
「?」
「俺たちは同じ高校で、テニス部の先輩後輩の間柄だったんだ。
ある日、1年で1番カワイイと評判の女子から告白された。
『私、付き合ってください!!』
俺の方が一目惚れだったよ。」

「……?……はぁ…」

「そして俺たちは付き合うことになった。……いや、彼氏彼女として付き合い始めたと思っていた。
実際、デートと称して遊園地や映画に行ったり、行き帰りは一緒だったし、帰り道に1つのクレープを分け合ったりね。
けれどそのまま、俺の受験勉強が本格化して、会えない日々が続いた。
彼女は言った。
『受験が終わったら、イイトコロへ行きましょうね。』
とても妖艶な笑みでね…シタゴゴロのあった俺は、それを励みに受験を頑張ったんだ。
その報告をした日だった。俺と彼女は、初めてラブホテルに行ったんだ。」
「え…身内の生々しいの、聞かなくちゃダメですか?」
「いや、ここからが大事なんだよ。聞いて。」
「はい。」

「『かわいい子を、抱きたいでしょう?』
彼女を抱けると思って行った先でね、俺は、彼女に…されるがままに、されて……
こうして、無事に国立大学の大学生になることが決まった。
その頃からだよね。君に度々会えるようになったのは。」

タツさんの顔が上がり、微笑む。
僕は頷いた。

「大学生になったらなったで、
『就職先が決まったら、その時に弟のアユム私のかわいい子をあげるわね。』
と。
それからも、今度は彼女の望む俺になるように、頑張…らされた。
そして、内定先についても先日彼女のOKをもらえて、そして、今日を迎えた。」

タツさんの瞳は、ギラギラとしていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

彼女のお見合い相手に口説かれてます

すいかちゃん
BL
カラオケ店でアルバイトしている澤木陸哉は、交際している彼女から見合いをすると告げられる。おまけに、相手の条件によっては別れるとも・・・。見合い相手は、IT関連の社長をしている久住隆一。 だが、なぜか隆一に口説かれる事になる。 第二話「お見合いの条件」 麻里花の見合い相手と遭遇した陸哉。だが、彼には見合いをする気はないらしい。おまけに、麻里花に彼氏がいるのを怒っているようだ。もし、見合いが断られたら・・・。 第三話「交換条件」 隆一と食事をする事になった陸哉。話しているうちに隆一に対して好感を抱く。 見合いを壊すため、隆一が交換条件を提案する。 第四話「本気で、口説かれてる?」 ホテルの部屋で隆一に迫られる陸哉。お見合いを壊すための条件は、身体を触らせる事。 最後まではしないと言われたものの・・・。 第五話「心が選んだのは」 お見合い当日。陸哉は、いてもたってもいられず見合い会場へと向かう。そして、自分の手で見合いを壊す。隆一にも、2度と会わないつもりでいたが・・・。

用法用量を守って正しくお使いください

煮卵
BL
エリートリーマン✖️老舗の零細企業社長 4月2日J庭にて出した新刊の再録です ★マークがHシーン お気に入り、エールいただけると嬉しいです

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

【完結】催眠なんてかかるはずないと思っていた時が俺にもありました!

隅枝 輝羽
BL
大学の同期生が催眠音声とやらを作っているのを知った。なにそれって思うじゃん。でも、試し聞きしてもこんなもんかーって感じ。催眠なんてそう簡単にかかるわけないよな。って、なんだよこれー!! ムーンさんでも投稿してます。

【完結】身代わり婚の果てに

325号室の住人
BL
☆全6話  完結しました とあるノートの内容から、双子の妹と自分の死を回避するため奔走する俺は、最終的に双子の妹と入れ替って第2王子と婚姻したのだが……

花嫁さんは男前

丸井まー(旧:まー)
BL
村で10年に1度行われる神事で、幸福の運命の番に選ばれ、結婚することになってしまったデビィとルーカスのお話。 男前×平凡。 ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。 (リクエストをくださった、はかてなほ様に捧げます。リクエスト【流され受け】楽しいリクエストをありがとうございました!)

勃起できない俺に彼氏ができた⁉

千歳
BL
大学三年生の瀬戸結(セト ユイ)は明るい性格で大学入学当初からモテた。 しかし、彼女ができても長続きせずにすぐに別れてしまい、その度に同級生の羽月清那(ハヅキ セナ)に慰めてもらっていた。 ある日、結がフラれる現場に出くわしてしまった清那はフラれて落ち込む結を飲みへと誘う。 どうして付き合ってもすぐに別れてしまうのかと結に尋ねてみると、泥酔した彼はぽつりと言葉を零した。 「……勃起、できないから」 衝撃的なその告白と共に結は恋愛体質だから誰かと付き合っていたいんだとも語った。 酔っ払いながら泣き言を零す結を見ながら清那はある一つの案を結に提示する。 「誰かと付き合っていたいならさ、俺と付き合ってみる?」

処理中です...