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かわいい子は誰?
しおりを挟む僕の姉ちゃんはかわいい。
年子で春生まれの姉ちゃんと、冬生まれの僕アユム。
中学の時はテニス部の部長で学校内にファンクラブがあり、高校の時は生徒会長で学校内にファンクラブがあった。
僕の自慢の姉ちゃんが、高校を卒業した。
姉ちゃんが居ない高校生活は、平和そのものだ。
姉ちゃんには高2から彼氏がいる。
ちょっと年上の彼氏は大学生のイケメンだ。
姉ちゃんと彼氏のタツさんは、とてもお似合いで僕の自慢だった。
僕が、高校生活最後の誕生日を迎えたのは、姉ちゃんと同じ大学に合格したのが判った日だった。
その日、僕は姉ちゃんに言われた。
「おめでとう。ねぇ、これ私からのプレゼント。」
もらったのは、姉ちゃんの彼氏のハズのタツさんだった。
「え…タツさんは、姉ちゃんの彼氏なんじゃ?」
「違うわよ?」
「え……」
混乱する僕、ちょっと困った笑顔のタツさん、そして極上の笑顔の姉ちゃん……
「じゃ、あとはヨロシクやりなさい。」
姉ちゃんは、僕らを置いてけぼりにして行ってしまった。
「「………………………………」」
流れて行く沈黙。
未だ困った表情のタツさんと、観察する僕。
──タツさん、大人なんだからしっかりしてよ!!
「「………………あのっ…あ、どうぞ!」」
沈黙ののち、タツさんと同時に喋ってしまった。
「アユムくん、先にどうぞ。」
タツさんに促されて、僕から話すことになった。
僕が訊きたいのは、ただ1つだ。
「あの…タツさんは、姉ちゃんの恋人なんじゃなかったんですか?」
「あぁ…そのことか。俺は、そのつもりだったんだけどね…ハハハ…」
「?」
「俺たちは同じ高校で、テニス部の先輩後輩の間柄だったんだ。
ある日、1年で1番カワイイと評判の女子から告白された。
『私に、付き合ってください!!』
俺の方が一目惚れだったよ。」
「……?……はぁ…」
「そして俺たちは付き合うことになった。……いや、彼氏彼女として付き合い始めたと思っていた。
実際、デートと称して遊園地や映画に行ったり、行き帰りは一緒だったし、帰り道に1つのクレープを分け合ったりね。
けれどそのまま、俺の受験勉強が本格化して、会えない日々が続いた。
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『受験が終わったら、イイトコロへ行きましょうね。』
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「え…身内の生々しいの、聞かなくちゃダメですか?」
「いや、ここからが大事なんだよ。聞いて。」
「はい。」
「『かわいい子を、抱きたいでしょう?』
彼女を抱けると思って行った先でね、俺は、彼女に…されるがままに、されて……
こうして、無事に国立大学の大学生になることが決まった。
その頃からだよね。君に度々会えるようになったのは。」
タツさんの顔が上がり、微笑む。
僕は頷いた。
「大学生になったらなったで、
『就職先が決まったら、その時に弟のアユムをあげるわね。』
と。
それからも、今度は彼女の望む俺になるように、頑張…らされた。
そして、内定先についても先日彼女のOKをもらえて、そして、今日を迎えた。」
タツさんの瞳は、ギラギラとしていた。
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