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しおりを挟むチュッ
まだ少し体に力が入りきらないものの上体を起こした僕に、アイツは『別れない』と強く断定した唇で、軽くキスをした。
「好きだ。好きだよ。俺を捨てないでくれ。頼む。」
チュッ…チュッ………
今度は両頬にキスされた。
「でもさ……」
後孔の辺りにまだ違和感があって少しモジモジしながら、僕はアイツが僕に対して遊びであると確信できる理由を話すことにする。
「僕まだランに名前呼ばれたことないから。」
「………………は?」
「それに……」
今度は、バランスを崩して前に手をついた関係で、少しだけ上目遣いになりながら…
「『好きだ』も今初めて…」
言えばアイツは顔を真っ赤にさせてフリーズしてしまった。
「自分の中では言ったつもりになってた…とか? まぁ、表情や動作にはダダ漏れだった訳だけど。」
──まさかな。
「……………………………………………………ごめん。」
アイツは呟くように言うと、僕の左右の二の腕を外側からギュッと掴んだ。
上げた顔は凄く真面目で、瞳は真っ直ぐに僕を見据える。
「哲のことが…好き…だ。」
言い終えても真剣な表情は崩さない。
これはアレか?『カットの声がかかるまでは、演技し続ける』とかいうやつか?
僕がまだ疑い深くアイツを見ていると…
「サトルと1つになりたい……ダメ?」
こちらを窺うような、ちょっと不安気な表情で、アイツは僕を見てくる。
少しだけ、キュンと来てしまった。
結局僕は、アイツのことを好きで、アイツを許してしまうんだよな…
「……いいよ。」
僕達はそのまま、唇を重ねた。
荒々しく唇を慾られれば、あっという間に僕の股間では主張が始まる。
「『サトルのこれ、触って』って言ってるな。」
今度はいちいち僕の反応を見ながら手順を進めるランは、僕の体の状況に逸早く気付き行動する。
緩急をつけながら扱き高められた僕は、あっという間に昇り詰めて雄叫びと共に果てた。
全身が痙攣したようにビクビクと震える中、体に力が入らない僕の体はランによって体勢をかえられ、まだナカが落ち着かないというのにスルッと挿入が始まった。
「…ま!……ちょ……ラ!ァん……あん……ぁん……ぁあん……あっ…あっ……」
ありきたりだけど、『あ』以外言えなくなる。
いや。『あ』しか言わない分、脳の配分が《感じる》コトへ振り切れてる。
僕の脳内はランに伝えたい言葉で溢れてしまい、僕は腕を伸ばしてランの首へぶら下がるように巻き付けた。
「愛っし…てるぅ。ラン…好きぃ……」
舌っ足らずになりながらランの耳元に噛み付きそうな距離で伝えれば、ランに深いキスをされ、ランの先端からは僕のナカへ熱いものが打ち撒けられた。
直後、僕は意識を手放した。
気が付くと、僕が今朝まで住人だったマンションの部屋の、テレビ前のローソファに、身動きが取れない状態だった。
身動きが取れないというのは、縛られているとかそういうことではなく、単純に倦怠感と疲労感だ。
サイドテーブルには、常備しているペットボトルの水がフタを開けた状態で置いてあるのだが、喉の乾きよりも腕を伸ばすのが億劫であることの方に振れているため、自力で喉を潤すことは諦めた。
僕は恥ずかしいけれど未だ全裸で…そういう風にされた記憶はないけれど、全身にキスマークがポツポツと出ている。
それは、服を着たって隠れない場所にもあり、これが消えるまでは大学に行けないなぁという溜め息を吐いた。
少しして、ランの在/不在が気になった時、機械音の女性が入浴の準備が整ったことを告げた。
ランが迎えに来て僕をお姫様みたいに抱きかかえるのが、全裸なだけに小っ恥ずかしい。
風呂への移動中、通り過ぎながら見えた玄関に、朝捨てたハズの僕の傘があるのが見える。
僕の歯ブラシもある。
風呂場にはラン専用ではないシャンプーのシリーズも、まるで昨日に戻ったかのように、自然な感じに置かれている。
その時、僕はランの、僕に対する執着を初めて実感できたのだった。
──こわっ
こうして、別れると思っていた僕とランは、僕が想像以上のランの執着やら愛を見せ付けられるような形でヨリを戻した。
たぶん、もしまた同じシチュエーションを迎えたとしても、僕たちなら大丈夫だと、素直にそう思えたから。
おしまい
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