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  運命が記されたノート

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「は? 誰が見ていたのだ!」

俺は、読んでいたノートを丸めると、床に叩きつけた。
なぜなら内容が、どうしても許せなかったからだ。

そのノートは、俺の机の上へ置かれていた。

見覚えのないノート。記名はない。

だから開いてみた。
何ら、変な行動ではないと思う。

だが驚くべきことに、中には俺の名前と妹の名前、妹の婚約者である第2王子殿下の名前があった。
だから読み進めた。

ここまでもどうだ? 誰だって、ノートに知り合いの名前があったら、読み進めてしまうだろう。そうだよな?

で、読んで行くと…
そこには、俺が主人公である物語が書かれていた。

なのだが、何と、俺の記憶と内容とが完全にリンクしている。

たとえば……
俺と妹は、額(髪の生え際)に傷がある。

物心ついたくらいの幼い頃、俺の髪は妹と全く同じに腰まであった。
でもそのせいで、俺はいつも妹に間違われたり、そうでなくても女に間違われたりしていた。

そこである日の俺は、俺と妹を左右の膝にのせて、ひっくるめて「かわいいかわいい。」と言っていた父から跳んで、ローテーブルに置いていた父の仕事道具である剣を抜き、頭の上で俺の髪を斬ってやった。

手入れが行き届いてメチャ切れ味の良かった剣が額をかすめた。

妹は俺の行動に驚いた父の膝からバランスを崩してローテーブル側に体を傾かせ、ローテーブルの角で頭を打った。

で、俺と妹はほぼ同時の流血騒動に発展。俺達はそろって驚いて気を失い、目が覚めたのはそろって3日後のことだった。



その話が、話の流れとして正しく書かれていた。

そして、俺がノートを床に叩きつける5分前に読んでいたのは、俺の昨日の行動だった。

読んでいた本が面白くて完徹してしまい、通う学園の自国語の時間にうっかり居眠りをしてしまって担当教員に呼び出され、その日の授業内容のレポートを書かされたのだ。

『はい、不合格!』
『残念!!』
『今度こそ合格しろよ。』

散々言われながら追試追試で合計10回書き直しを命じられた。

やっとで合格して部屋を出るとそこは既に日暮れ。
確か入室したのはまだ陽が高い時間だったはずだ。

その時の俺は、やっとの開放感からひと言呟いた。

「先生のバカヤロー…」

それが、そのノートには細かく書かれていたのだ。

そりゃ、床に叩きつけたくなるってモンだろ?

けれどそこで、俺は思い出す。
そのノートには、昨日のページ以降も記載があったことに。

──もしかして、俺の未来が…?

俺は、ノートを拾い上げると、恐る恐る最後のページを開いた。

そこにはこう書かれていた。

「『シャノンのしをなげき、みずから……せいを終える』……だと?」

特に日付はないが、今の俺は10歳。
その最後のページはそれまでのページに比べたら枚数的に少なかった。

「シャノンに何が……?」

1ページ捲れば、そこには婚姻後の妹シャノンと第2王子の生活が書かれていた。

「『シャノンのことは、あいせない』……『シャノンはきぞくとしては白いこんいんと言えたが、国王と王妃のあいだでりえんは難しかった』
は? シャノンは幸せな婚姻ができないということなのか?」

婚約3年目の今の2人を思い出し、俺は愕然とした。

「なら、シャノンは第2王子とは婚姻させない!!」

俺は、シャノンの幸せのため色々と画策し、実行に移しては2人の仲を引き離した。

………………が、やはりあのノートに記載があるのは俺達の未来だったのか、どうしても婚約を解消させることはできず、とうとうシャノンと第2王子との婚姻の日がやって来た。


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