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42 軽いバトルあり
しおりを挟む「先触れなく申し訳ない。実は道中野盗を捕まえたので連行してきました。」
第2王子ラティアスの側近は、辺境伯邸のエントランスにて用件を告げた。
「野盗か……まぁ、その辺に放っておけ。」
辺境伯は答えて言った。
「放って?」
ラティアスの側近は聞き返す。
「そうだ。この領では人手がなくて困っているところが多い。
農地であれ、工場であれ、傭兵団に冒険者に警邏、騎士団に騎士団の寮など、どこも人手不足だ。
野盗であれ人間で、話せるし、指示を聞いて理解もできる。
だから放っておけば、どこかで誰かが拾うだろう。」
「なるほど。理解した。それではこれらはあちらで放そう。」
ラティアスの側近は言うと、辺境伯邸から出て行った…のだが……
扉を出て行く直前に視界に入った者が気になってしまい、ラティアスにその旨伝えた。
その報告を受けたラティアスは、単身で辺境伯邸を訪ねた。
「アンリ様、夕餉でございます。」
客間でドレスのコルセットを緩めてもらうと、あとは自分でと伝え、湯浴みとセイド式のドレスに着替えたところで、マーチが呼びに来た。
着付けを少し手直ししてもらうと、アンリはマーチの後に続いて食堂に向けて歩き始めた。
階段を上がって、廊下を端から端へと歩き、再び階段を半階上がってから先程とは違う方向へ廊下を角まで歩いてから階段を2階分下りる。
その時マーチが、
「あ!」
何かを思い出したように声を上げると、アンリにこの屋敷の地図を渡して、地図の中の1点を指差した。
「ここが目的地である食堂です。申し訳ありませんが、先に向かっていてください。」
マーチはそれだけ言うと、来た道を戻って行ってしまった。
アンリは地図を見て、現在地がどこか把握すると、食堂に向かって歩き始めた。
廊下を突き当りまで歩いてから、階段を半階上がった後に、壁の一部をひっくり返した先にある階段を1階分下り、少し廊下を歩いてから再び壁の一部をひっくり返した先の階段を1階分下りると、目の前が食堂だった。
ノックしてから返答を待って入室すると、アンリの顔に向かってフォークが飛んできた。
無意識に掴めば、直ぐに下から黒尽くめの人物の膝が飛んできたのでそのフォークを刺した。
声を出さないままソレが去れば、今度は手を祈るように組んだ人物が、天井?とにかく上から降ってきたので、アンリはテーブル側へ避けると、魔鳥の丸焼きを切り分けるナイフを手に取り、その人物に向かって走る。
振り下ろされた腕の拳の重なりに右足を掛け、ドレスの裾ごと膝を抱えてその人物の背後に回ると、その首元へナイフを突き付けた。
「何者だ?」
アンリは低めの声で問いかける…が、相手はナイフを握るアンリの手首を捻ってナイフを落とさせる。
アンリは咄嗟にその手に左手の爪を立てた。
途端に相手はアンリの手を離して部屋から去って行った。
「そこまで!」
若くはない男性として低い声が室内に響いた。
アンリは体勢や身形を整えると、声のする方を向けば……
そこには、先程見た《威厳ある貴族家のご当主》のような男性が、食卓についていた。
「アンリ嬢、先ずは夕食にしましょう。話は食べ終えてからだ。どうだね?」
「わかりました。」
アンリはゆるく微笑み、男性の向かい側の席についた。
魔鳥の丸焼きは、マーチにより新たに運び入れられたナイフで切り分けられた。
気持ち、マーチが片足を引き摺っているような気がするのは…まぁ、置いといて、アンリは目の前の食事を楽しんだ。
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