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35 王子を茶眼に訂正しました
しおりを挟むアンリ達冒険者は、各々の獲物を構えると、気合いの発声と共に魔獣へ飛び掛かって行った。
しかし、剣も弓矢も跳ね返されてしまう程、硬い装甲のような皮膚をしていて、攻撃は効かないようだった。
それどころか、魔獣の振り回す尻尾に当たって、冒険者が2人、大木に打ち付けられて戦線離脱となる。
「鰐は口をロープで縛ってしまうのです!」
騎士の声に、アンリは、投げ輪のように頭の上で輪になったロープを回す。
魔獣は、その回る輪が気になったようで頭を上げ、アンリはその隙をついて投げ輪を魔獣の長い口へと巻きつけることに成功し、ギリッと縛り上げた。
だが、所詮は女の力。
ロープを引き千切ろうと頭を振る魔獣に引っ張られる。
「……クッ」
指にロープが食い込み、ギリギリと締め付ける。
その時、頭を振るのを諦めたのか魔獣が尾を振り回した。
「危ない!!」
アンリは咄嗟に伏せる。
ザシュッ
キィーーーン
その時、何か金属が閃いて魔獣の硬い装甲のような肌に突き刺さった。
途端に魔獣が喚き、周りの人間の鼓膜に響く音波を放つ。
皆、自分の両耳を両手で塞いで耳を守る。
しかし、アンリはロープを掴んでおり、それが遅れる…が、何かに頭を覆われるように庇われた。
暫くして、1人、また1人と身動ぎすると周りを見た。
すると、魔獣の腹には太い大剣がずぶりと突き刺さり、地面まで貫通していた。
アンリも気配でそれがわかり、顔を上げれば、そこには金髪茶眼の見覚えのある顔があった。
それは、セイド国第2王子のラティアス殿下だった。
「王子殿下! 失敬した!!」
アンリは慌てて王子から体を離した。
「殿下。私を助けてくださり、ありがとうございました。」
アンリが言えば、
「いや。君が助かって良かったよ。」
王子は返答し、微笑んだ。
「ラティアス王子殿下! ご無事で何よりです。」
アンリに応援を求めたのとは別の、しかし同じ制服を身に纏った1人の騎士達は、魔獣を取り囲んでいたが、殿下の元へ集結する。
「おぉ、そなたら! 私は大丈夫だ。」
王子は1人ずつの騎士と握手を交わし、肩を叩いて魔獣討伐を喜んでいる。
「マリッシュ隊長!」
案内をしてきた騎士は、先程探し回っていた人物を騎士の中に見付けたようで、そちらへ向かってしまった。
先程、膝上から下を魔獣に喰われた冒険者は、セイド国産の高級ポーションをジャバジャバと掛けられ、足の再生はできなかったが無事に傷を塞ぐことができた。
アンリも、ロープを握っていた両掌にパシャッとポーションを掛けてもらえば、少し荒れていた指先まで、赤ちゃんの頬ようなもちふわな肌へと生まれ変わった。
こうして、アンリや他の冒険者達による魔獣討伐は、隣国セイド国の騎士たちの力により依頼達成となった。
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