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しおりを挟む「ん…………え、昼?」
私は目を覚ました。
それから慌てて、そしてココが実家だと思い出した。
昨日は実家に戻されると、有無を言わさず平民のワンピースを剥かれて侍女らによる湯浴み→マッサージのフルコースで磨かれた。
私をシンプルな白いワンピースに包むと私室まで送り届け、外側からガチャリと施錠されただけだった。
今日はたぶん、父母達から話があるのだろうと思われる。
なのに、目覚めたのは既に陽の高い時間。
見渡せば室内に誰かが入室した気配がある。
……というのも、既にしっかり冷めてしまった食事が、お盆に載ったままベッドサイドテーブルに置かれていた。
昨日までは、S級冒険者として生きていた。
気配には敏感だったと言える。
それなのに、寝室に侵入者が居たのに気付かず眠りこけ……
アンリは自分にちょっとガッカリすると共に、その侵入者が心当たりの人物かどうか思い描く。
くぅ~
そこでお腹が鳴ってしまったので、アンリは頭を切り替えてさっと洗顔し、冷めてしまっている食事に手を付けた。
冷たかったけれど、とても美味しく食べられた。
コココ、ココンッ
ポーライルの居室のドアがノックされたのは、ポーライルが目覚め、クローゼットから取り出した懐かしく肌触りの良いお気に入りの服に袖を通し、穿いたスラックスのウエストを閉めようとしてサイズが合わないことに気付いた時だった。
「はい。」
とりあえず返事をして、けれど手近な紐を掴んでウエストマークの下で紐を結び、慌ててドアを開ければ、そこに居たのは長年侯爵家に仕えている家令だった。
既に、何となしに着替えが済んでいるポーライルの、上から下へ視線を移動させると、
「やはり、少し痩せられましたね。」
の言葉と共に、ドアの死角になっていた左腕を引き寄せ、まだたたみジワの残る布をポーライルに差し出した。
「もう、お着替えを手伝うお年でもないでしょう。
ここにおりますので、お着替えが終わりましたらご当主様の執務室へ向かいましょう。」
「あ、あぁ。ありがとう。」
ポーライルは、久し振りの家令の《何でもお見通し眼》から早く離れたくてすぐに扉を閉めた。
着替えのサイズは、ジャストサイズで……
ポーライルは家令の視線を思い出して悪寒を感じながら、ドアの向こうの家令と合流し、父の執務室へと足を踏み出した。
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