【完結】秘密

325号室の住人

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この、若いけれど高位ランク冒険者をしている男は、名をアンリと言った。

実家は辺境地なのだが、家出同然に実家を飛び出してきたのは、今から2年ほど前のことだ。

それなりに学問などしっかり教育を受けて来たものの、この王都へやって来てみれば、それらが全て役に立たないものだと気付いてしまった。

その中で役に立ったのは、辺境の森で得た、薬草についての知識と健康な肉体からだ、腕っぷしの強さと剣技だった。

『他になかったから』

そんな理由で冒険者になったアンリは、日々の生活のために日にいくつもの依頼を受けて全て達成し、着々とランクを上げて行った。

そして冒険者を始めて約1年でBランクまで駆け上がり、今年の夏にはAランクに、そして先月にはとうとうSランクまで昇格した。






アンリとポーラは、並んで冒険者ギルドの受付へやって来た。

無事に依頼達成手続きを行なうと、1階でポーラの旅行鞄を預け、2階へと向かう。

ポーラは慌てて追いかけた。

初めて入る冒険者ギルド。

1階は各種受付と登録窓口と待合室、依頼貼り出しの掲示板がある。

アンリに追い付いた2階は食堂になっていて、ギルドに登録している者とその連れの1人のみの利用ができる。

トレーを持ったら大皿を1枚載せ、好きなだけ食べたいものを盛る。
足りなければまた盛りに行き、好きなだけ食べることができるのだ。

「うわぁ、スゴ」
クゥ~……

ポーラは感想を述べた途端にお腹が鳴ってしまって恥ずかしい。
アンリは、そんなポーラが可愛らしくてクスクス笑った。
途端にポーラの顔が果実のように真っ赤になる。

「ごめん。ついかわいくて。」

アンリは、ポーラの頭に手を乗せてポンポンとした後、申し訳無さそうにポーラの顔を覗き込んだ。

ポーラは機嫌を直したようだ。
少し膨れたけれど、すぐに舌を出して、アンリを見てケラケラ笑った。

それから、食べ物を盛って空いた席を見付けて向かい合わせに座る。
ポーラは主に肉、アンリは主にスイーツを乗せており、お互いにお互いの皿を見て笑った。

食べ終えると、一度階下の受付へ向かうと、ポーラの旅行鞄を持って3階へ向かう。

3階は休憩室で、個室と大部屋がある。
但し、個室は1人の利用のみが認められ、2人以上は大部屋の利用となる。

大部屋は毛布1枚が支給される雑魚寝部屋だった。

「ごめん。王都のギルドにはしか居ないんだ。
でも、私が必ず守ると誓うから、安心して一緒に寝よう。」

ポーラはアンリを信用して、サッと寝る準備をすると、アンリの背中と壁に挟まれるようにして、毛布に包まると眠りについた。


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