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第1段階、始動
しおりを挟む僕は、とある田舎の男爵令息。
本当は、父さんがお金を遣り繰りして王都の貴族の学園に通う手続きを進めていたのは一応嫡男の僕だったのに、出発前夜に僕は双子の姉に頭を殴られ、昏倒してしまった。
その間に姉は男装し、僕として学園に入学し、何と婚約者のいる国の第2王子とその友人達とねんごろの関係になったらしい。
その姉は先週、僕として学園を卒業した。
そして今日は、姉の浮気相手である国の第2王子の婚姻式だった。
けれど姉と宿屋にしけ込んでいて、第2王子は婚姻式の会場である礼拝堂にはやって来なかった。
それどころか、姉と王子は、王子の婚約者である公爵令嬢を勝手に「国外追放だ!!」と言って、悪友たちに馬車で拐わせ、国境沿いの森へ向かわせたと言う。
大切なお嬢様をそのような目に遭わせた姉と第2王子のことは、どうしたって許すことができない。
だって…
姉が出奔した3年前、姉を追って王都にやって来た無一文の僕を拾って自邸で雇ってくださったお嬢様とは、姉の浮気相手である国の第2王子と今日婚姻式を礼拝堂で行うはずだった公爵令嬢であり、僕の命の恩人なのだから。
第2王子の悪友達が国外追放の準備をしていることは、何度も予行だか練習だか打合わせだかをするため公爵家の周りをウロウロしていればすぐにわかることだった。
彼らがお嬢様を押し込めた馬車は、今しがた公爵家の正門を出て行った。
僕は、お嬢様のご友人方へプランBの始動を伝えると共に、僕自身もプランBに向けて動き出すのだった。
僕がやって来たのは、本日から職場になる、お嬢様が婚姻後に住まう予定になっていた公爵家の敷地内に建てられた別館だ。
本来はお嬢様のものであるこの邸は、お嬢様を国から追い出して約1時間経過した今現在、姉と第2王子によって好き放題にされていた。
本来はお嬢様が婚姻式後の初夜を過ごされるはずであった御夫婦の寝室から続きになっている夫人の部屋の浴室では、本来過ごされるはずのお嬢様よりも先に、頭の先から爪先までを姉が隅々まで磨かれているのは確認済みだ。
僕はプランBに参加するため、小道具である姉の髪色のかつらを身に着け、衣装である女性モノの夜着と下着を身に纏った。
姉と、姉を引き留める担当のメイド達は、こちら側の扉を施錠してしまうので廊下側の扉から出入りすることになる。
その廊下側の扉の向こうには女騎士が詰めており、姉はそのまま、王城の牢へと入ることになる。
僕のいる夫人の部屋へは、次々と窓からお嬢様のご友人方が派遣された方々が入室され、衣装に着替え始める。
ちなみに、僕以外の皆様は侍女服だが、そのエプロンのポケットには様々なモノが仕込まれていた。
薬品、道具、精魂込めて育てた魔植物など、形状は色々だ。
薬品1つ取っても、粉に錠剤に液体に…また、効果も和らげるものに苦しませるものなど各種取り揃えているらしい。
同じ─とは思いたくないけど─男として、自分がと想像すれば3分で失神しそうな内容に、僕はできるだけお嬢様のご友人方から距離を置くのだった。
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