「暑い」から始まる異世界ショートショート集 (シメ)

325号室の住人

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地底にて   ネタバレになるので… ◯◯✕勇者パーティの荷物持ちの僕

登場人物紹介を兼ねた、はじまり

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「暑い…」
「〇〇だ!」
「「へ?」」

ここは、魔王の城へ向かう途中の地底の町。

魔王の城へ向かうのは、勇者と聖女と、騎士団長の息子である剣士と魔法師団長の息子である魔法師、神殿長の息子、と、僕。
ただし、勇者は第2王子、聖女は先日まで平民だった男爵家の娘、騎士団長の家の長男、魔法師団長の家の長女、神殿長の三男で、ここまでは国王から選ばれた真正パーティ。
僕はただの近隣の村の子どもで、やたらに我儘な一団に奴隷のように扱われつつある、荷物持ちである。

で、それなりに旅をしてきた僕と勇者御一行様。

森を抜け、1つ目の山を越え、大河を渡り、砂漠を越えている途中で流砂に巻き込まれ、落ちた先の空洞を歩き、明るさにつられてやって来たここは、マグマの川が流れる熱湯の湖のあるこの場所で数日を過ごし…そうだな。僕の体内時計で3日ってとこかな。

「あぁ…もうダメだ…ここから出られないんだ……」
「何日ここで過ごしてるの?」
「俺たち、もうここで……それなら…なぁ、アイリス! 俺、最初からお前のこと好きだったんだ!」
「本当? アタシもなのぉ! ギルくんラブなのぉ! ねぇギルくん、アタシぃ、ちゅーしてみたくてぇ…だって、ここでしんじゃったらぁ…初ちゅーもできないままなんてヤらしぃ…」
「ぐふふ…アイリス! それじゃ向こうで俺と…」

勇者が聖女に告白。鼻の下の伸び切った勇者と、カマトトぶってる聖女が一団から離れて行く。

「かァー!あいつ等…」
「はぁ…」
「オレらも行くぞ。」
「はぁ…」
「仕方ねぇだろ。…一応婚約者なんだし。」
「だから何ですか?貴方も交尾にご興味が?」
「かァー…お前だからだろ。そうだよ、興味がある。お前の表情がどんな風になるのか。」
「………は?」

どうやら婚約者同士だった騎士団長の息子と魔術師団長の娘。
騎士団長の息子は、マグマの熱で暑いこの場所とは関係なさそうな理由で真っ赤になった魔術師団長の娘の手を引きながら、勇者たちとは別の崖へ向かう。

それらをぼぅっと見ていた僕は、呟いた。
「暑い…」
それと同時に頭の上から呟かれた言葉…
「〇〇だ。」
聞き返すのは同時。
「「へ?」」
他の登場人物は、退場済み。
残るは、僕の頭の上で喋るこの男と、僕。
そのハズだったんだ。

僕の頭の上で語るのは、神殿長の3男である。
この家は、長男は神殿長補佐、次男は地方の神殿長をしている関係で、すぐに差し出せるのはこの3男だけだったらしい。

ちなみに、年はこのパーティの最年長の32歳。僕は勇者たちと同年代の19歳だ。

「あぁ、《好きだ》って言ったんだ。」
「好き?」
「そうだよ。みんなイイコトしに行っちまっただろう?だから、形だけ、告ったまでだ。」
「形だけ?」
「そうだよ。だからさ、死ぬ前に、お兄さんとシよう?とても気持ちの良いこと。」
「……………………」
「さぁ、暑いだろう? そんなもの、脱いでしまえばいいよ。」
瞬間、身に付けていた布が何もかも消えた。
「…!!」

僕は、男に馬乗りになられてしまった。
クソッいつもノソノソしてるくせに、こんな時だけ俊敏に動きやがって!

上から、汗や涎や気持ち悪い視線が降ってくる。
体格差と地形の関係で、どうにも押し退けられない。
股間に膝が押し付けられる。

──もう、来世に期待しながら諦めて喰われるか?


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