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僕は、姉の下僕 先祖返りの王弟✕元婚約者の弟
番外 シャルルサイド ヤンデレ?による溺愛
しおりを挟む私の最愛は、いつでも美しい。
オレンジ掛かった銀髪に、少し茶の入った金眼。
幼少期に体調を崩しがちだったせいか、白い肌。
やっと手に入れられた、腕の中で眠る最愛の頬に汗で貼り付く髪を耳に掛けると、現れた紅色の頬にやんわりと唇を当てて存在を確認した。
この最愛との最初は…
この国の創成期。
私が、のちに魔王と呼ばれる魔法国の始まりの王であった頃…
大陸中を魔法で色々とやり放題だった我が国は、立ち上がった、魔法を持たない国の《勇者》と呼ばれる者の手で滅びた。
この勇者と呼ばれたのが、その国の王子の1人であった、この最愛と同じ魂をもつ者である。
勇者は言った。
「人間は皆意志を持つ。貴殿らに操られるままに生きていいものではない!」
「本当に? 世の中には自分が何をするべきか見出だせずに、働かない者や酒浸りの者、犯罪に手を染める者も居るではないか。」
「確かに居るだろう。しかしそういった者達の中にもそれを自ら選んだ訳ではなく、選ばざるを得ない環境に育ってしまった者も居る。貴殿によって親を戦に持って行かれ、そのまま親を失った子どもたちだって大勢いる。
ならばそうだな…貴殿も次に生を受ける時には支配される人間になってみればわかるのではないか?」
勇者が私を指差したすぐ後だった。
勇者が仕掛け、私は応戦する。
しかしその切っ先は少しずつずれ、互いに相打ちになって、同時に生を終えることとなる。
「神よ! どうか次の生では、目の前のこの者を監視できる立場へ転生させてください!」
勇者の最期の言葉が玉座に響くと、普段なら昼間でも薄暗い我が城に暖かな光が射し、勇者は穏やかな表情で逝く。
もう痛みさえ感じ難い私も瞼を下ろすと、私は勇者であった者と手を繋いで、この世界に誕生していた。
不思議なことに、我々は何度転生しても双子の兄弟だった。
私は兄や弟になり、彼は兄や姉、それから妹や弟になった。
時には理不尽に、時には甘やかす代わりに外で恥をかかされ、時には頼るふりをして押しつけられ…どの生でも私は彼に自由を奪われ、従わされた。
内心怒りながら、反発しながら、私は記憶を持ちながら何度も彼の下僕生活を送り、同時にその生を終えた。
だが、1つ前の生ではそれまでと違うことが起こる。
双子の姉として生まれた彼は、その当時の国王に見初められて嫁に行ったあと、襲われた国王を庇って先にその生を終えてしまったのだ。
対面した時には既に人としての温もりを失っていた姉だった。
それまでは憎み、恨みもしていた。けれどその時はっきりと、私の中に仇を討ちたいという気持ちが芽生える。
そして私はその国王を討つことに成功し、しかし国王の近衛らに討たれ、ふと気付いた時、私はその国の次の次の王の王弟として生を受けることとなった。
先祖返りとして一番最初の生と同等の魔法を扱うことができ、魔法国の城だった場所へと転移できるようになった。その場所はどうやら実在する訳ではなく……亜空間とでも言うべきか時間が止まっている。
丁度、どういう訳か勇者であり前世の姉である魂の気配は全く感じられなかったので、王立学園に通う年頃になった時に周囲へ本当のカラクリを話せば理解するのは難しいと考え《不死》であると伝えると、亜空間とを行ったり来たり、時には数年、数十年と居続けて、この生を終えないままその魂の気配の訪れを待つことにした。
気配を感じたのは、それから数百年後のことであった。
成人頃のままで過ごしていた私は、その気配が学園に通う年齢になると再びこちらで時間を進めることにした。
ただし、彼が眠っている間に見に行くことはあっても、起きているところへ会いに行くことはしなかった。
代わりにきちんと根回しをして、彼と婚約し、当時から性に奔放で親でさえ持て余していた彼の姉と仮の婚約の契約を結ぶ。
そしてその時はやって来た。
私はとうとう、かの勇者の魂を持つ者─最愛であるリアム─と結ばれたのだ。
私は本当にリアムを愛している。
だから何度も何度も、気が遠くなるほどに、リアムを善がらせ昂らせイかせた。
そうして亜空間にある城とこちらの城とを往き来しながらも、その生を終える時がやって来た。
互いに目を閉じ、次の生が再び双子の兄弟だとわかった直後、私はとある魔法を発動した。
『私とリアムの魂を、亜空間の城に引き寄せ、閉じ込め、縛り付ける魔法』
片方には実体があり、片方は魂だけというなら交われない。
けれど互いに同じ魂だけの存在ならば、交わることも、触れ合うことも、文字通り溶け合うこともできた。
「ぁんっ…もう…もう…!!!」
「イけばいい。何度でも、私の手で…!」
「ぁああああああああーーーーー!!!」
今日もリアムを抱く。
私の最愛は、今日も美しい。
おしまい
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