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僕は、姉の下僕 先祖返りの王弟✕元婚約者の弟
おわりに
しおりを挟む瞬間体が浮くような気配があり、直後殿下に抱き締められた。
「ふふ…久々だったが、成功したようだ。」
ゆっくりと顔を上げれば、そこはどういう訳か、美しい刺繍の天蓋のついた大きくふかふかな寝台の上だった。
天蓋の薄布の向こうは、もう薄暗い。
「リアム。ようこそ、我が秘密の城へ。」
茫然とする僕の隣に座った殿下が言う。
「え…?」
「あ、魔法は初めてだったかい? 私は、先祖返りなんだよ。」
シャルル殿下は少し困ったように笑って、僕の手を取った。
「ここは私に与えられた城でね。父たちは僕の力を持て余して半ば幽閉の身なのさ。」
殿下は視線を落とし、僕の手の甲を撫でながら話を続ける。
「だけど、王族に生まれたからには婚約はしなければ何かを疑われるだろう。国王同士の話し合いで、君の姉に名前を借りて仮の婚約者になってもらうことになった。ただ、君の姉さんは少し正直過ぎるきらいがある。だから君の姉に真実は告げなかった。」
「では、姉が殿下の兄上の第三王妃になると言うのは…?」
「君の姉上はゴリマッチョが好みみたいだよね。だから、騎士団を率いている二番目の兄の正妻に決定したよ。実際会ってみれば、顔に傷があっても、腕に火傷の痕があっても、全然構わないみたいで、互いに一目惚れだったそうだ。
それでその…君の国の城の祭壇で二人きりで誓ってしまったそうだ。」
「そうなのですね…」
「私はね、本当は血を残さないために伴侶は得られない決まりだったのだけど…
男なら良いよねって、父を説得したんだ。」
顔を上げて僕に視線を戻した殿下は、少しギラギラした光を宿した碧で、僕を抱き締めた。
「君の姉との顔合わせで初めて君に会った時から、私はリアムが好きだよ。」
告白に、頬が瞬時に赤くなる。
「………ありがとうございます。」
ゆっくりと殿下が顔を近づける。
唇同士が触れる直前に僕が瞼を下ろすまで、殿下の碧は僕を捕らえてはなさなかった。
チュ…
誓いのための触れるだけのキス。
愛しい人の唇は、小さなリップ音と共に離れて行ってしまう。
──名残惜しい…
けれど碧は、僕の望みを見透かすようにギラリと光る。
「魔法で何でもできるけど、リアムの纏う布は私が剥がしたいな。」
殿下は言うと、脇まである長いグローブをスルリと脱がす。
左手の薬指の付け根にキスをされれば、不思議なことにそこに僕の誕生石が光った。
「私と番になるという証だ。これからリアムの身体にも刻ませてもらうけれど、いいかい?」
シャルル殿下が僕の右耳に囁く。
殿下の吐息交じりの声のせいで、内容を理解するため返事にワンテンポ遅れてしまう。
内容が理解できると直ぐに顔が熱くなってしまってうまく返事できなくなってしまったが、慌ててコクコクと頷いた。
「赤くなって…かわいいね。」
殿下の犬歯が僕の右の耳たぶに印を刻み、それを合図に激しく求められる。
そうして、その晩、月が辺りを明るく照らし始めた頃には、僕は心身共に王弟妃となった。
「あぁ…んっヤ! もう無理ぃ~…」
「もう私の味には飽きてしまったの?」
「違っ…ぁああっ…イヤーーー!!!」
もう幾日をこの寝台で過ごしたか。
最後に布を身に纏ったのはいつだったか。
全然思い出せない。
疲れては殿下の不思議な魔法で体力を戻し、胸の突起を甘噛されて傷になっても魔法で治癒し、喘ぎすぎて啼きすぎて喉を潰しても、殿下の体液を啜ればたちまち治癒する。
空腹になれば口移しでフルーツを与えられ、排泄したくなれば体内で甘い蜜に変体し、肌は魔法で浄化され…
殿下から僕への絶えない快楽への誘いと、尽きない精力と…
ここに来る前の僕はどんな生活をしていたのかなんて、もうすっかり曖昧になってしまった。
そんな日々の中、殿下に衝撃を受けた僕…
何故だと思う?
「さぁ、そろそろ戻らないとならないな…」
「?」
「言ってなかったかい? この秘密の城は亜空間にあるから時間の概念はないのだよ。だから…」
パチンッ
ぐらり…
ガタガタカタガタゴトッ…
僕は揺れの酷い場所で殿下に抱きつきながら、絶え間なく喘ぐ。
「『そんなに喘ぐなんて、御者に聞かせたいの?』」
「殿下? ぁあっ!」
「今の私の言葉で時が繋がった。おかえりリアム。もうすぐ王領に入るよ。王領内の方の私の城で、存分に初夜を楽しもうね。ふふ…」
それからも、たまに秘密の城に出掛けながらも、寿命の何倍もの時間愛された僕。
死の間際の殿下の言葉…
「来世でもずっと一緒だよ。」
内心青褪めるも、次の瞬間には双子として殿下と手を繋いで生まれ出たことでホッと一安心したのは、殿下には内緒だ。
おしまい
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