「暑い」から始まる異世界ショートショート集 （シメ）

僕は、姉の下僕 先祖返りの王弟✕元婚約者の弟

登場人物紹介を兼ねた、はじまり

「暑い…」

今日も剣の鍛錬を終えた僕は、袖で額の汗を拭う。

僕は、公爵家の第三子であるリアム。
趣味は剣の鍛錬である。

「暑…」

シャツのボタンを第三ボタンまで開けると、襟元から外気を取り込むようにパタパタと動かす。
ふと視界に入るのは僕の薄い胸。
趣味の剣の鍛錬をいくらやっても、筋肉がついてくれないのが悩みのタネだ。




「うふふふふ…」

そこへ、鈴を転がしたような笑い声が聞こえる。

そちらへ視線を移せば、一区画向こうを散歩する男女─公爵家の第ニ子である姉とその婚約者で隣国の王弟殿下であるシャルル様─が楽しそうにお喋りをしていた。

シャルル殿下は、隣国の王族のもつ特徴…碧の瞳に、白に近い金の髪の映える王子様フェイス。
細身ではあれど華奢ではなく、立ち姿が素敵なのできっと薄い筋肉は纏っているのだろうと想像できるタイプの体躯は本当に素晴らしく、同性としてとてもうらやましい。

姉は、少し桃色掛かった銀髪に金彩の入った茶色の瞳、紅をさしたような唇や薔薇色の頬を際立たせるような白い肌、ほっそりとして華奢な指先ながら、全体として女性らしい凹凸のある、大陸一の美姫と噂になるほどの、僕にとっては崇拝対象となり得る方。

婚約してからこの３年、未成年の僕が出席できない様々なパーティ参加のため、殿下にエスコートされる姉を眺めても、とても似合いのお二人だった。