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いよいよお務めの終わり
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しおりを挟む私の言葉に続けるように、ウルは私の肩を抱いて言ったの。
「ならばいい案があります。俺とセアリアがこの場で婚姻の手続きをしてしまうのです。
受理からひと月は蜜月休暇に入り、隣国への聖女としての要請に応えなくて良いはずです。
婚姻も手続きだけならこれまでの聖女だって力は弱まりませんし…
何ならグラントも同時に立太子の手続きだけしたら良い。お披露目だけまだ後日にすれば良いし、俺もただの第二王子になるはずです。
実は、《歌姫聖女》についてはセアリアの歌に感銘を受けた女神によって直接の加護と認定を受けていますので、セアリアが存命のうちは次の《歌姫聖女》は現れませんし同時に次の世界への旅立ちまではどう過ごそうと力は失いません。
ですから女神官長様はどうぞそんな女は追い出してください。
それに、セアリアは爺さんに会いに行ける。」
「ウルもついてきてくれるの?」
「もちろん! 俺はセアリアの夫だ。」
そうして、私とウルの婚姻の書面と、グラント様の立太子の書面に各々サインをし、受理され、手続きは終わった。
「国王様、グラント様、神官長様、皆様、これまで大変お世話になりました。「ありがとうございました。」」
みんなへ挨拶すると、神官長が私とウルとマリー様を魔法で転移陣のある部屋まで送ってくれ、私達3人は、神殿のある山の麓の村の宿屋までウルの魔法を動力源に跳んだのだった。
「ギリアン爺…会いに来たわ。」
私がこの村にやって来て1番最初に泊まった部屋の1室のベッドに、ギリアン爺は横たわっていたの。
静かにゆっくりと呼吸をしながら、でも目を開けないまま、ギリアン爺はこちらへ顔を向けたの。
「セアリア…」
「ウルも居るわよ。」
「ギリアン。俺はラウルに戻ったよ。」
「…ウル……」
ギリアン爺の皺々な手を、ウルと2人で柔らかく包むの。
「俺が今、念話を繋ぐよ。」
ウルが言うと、手と手が重なる3人の心が繋がったような錯覚がある。
《これで、心の中で会話できる。》
《本当ね。》
そこへマリー様かギリアン爺の上に聖騎士の正装を広げ、マリー様自身も聖女のローブをはおってからギリアン爺の反対の手と、手を重ねた。
すると真っ暗な場所にウルが待っていて、私をエスコートすると、とても景色の良い花畑へと導いてくれた。
その花畑には先客が居た。
可愛らしい貴族のお嬢さんと、お付きの魔法師の青年。
その姿が少しだけ変わって、美男美女の聖女と魔法聖騎士になる。
大きな敷布に掛け、お茶を淹れながら、二人は微笑んで私達を迎えてくれたの。
「もしかして、マリー様とギリアン爺?」
2人は頷いて、
「さぁ、お茶にしましょう。」
私とウルも敷布に座ると、各々お茶を手に取って、お茶会が始まったの。
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