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隣国からの侵攻
山の上の神殿の役目
しおりを挟む山の上の神殿が暖かさに包まれた後は、神殿にとって悪意のある者は神殿にやって来なくなったの。
けれど、他の村の怪我人やこの国の聖騎士や兵士なんかの怪我人はこの神殿に集められるようになり、逆に元気な村人達はもっと広い中央神殿や王城へと転移魔法陣で運ばれて、この神殿の礼拝用のベンチは救護人の手当てに使われるようになったの。
それから、この神殿に集められた怪我人を癒すための《癒しの聖女》と護衛の聖騎士や看護師らが、城仕えの魔法師達を伴って日に何度かやって来たり休息のために中央へ戻ったり、食料や水と毛布や清潔な着替えなどをこちらへ運んだりと、城や中央神殿とのルートが幾本も繋がれたの。
その中で、私は朝に夕にと女神像の祭壇の前で『祈りの歌』を捧げたわ。
たまに《癒しの聖女》も誘ったけれど、びっくりするほど声が出なくて歌えなかったのよ。
現在の《癒しの聖女》は、キャリアは長いけれどまだ9つのチェルリーンちゃんという子で、本気を出せば町1つ分の範囲の怪我人を治癒させる力を持つという女の子なの。
ただし、今この神殿に運ばれてくる怪我人達は程度がさまざまなので、個人個人に向けての施術となるの。
その方が心身共に疲れるみたいだから、チェルリーンちゃんと1日ずつ交代で、前の《癒しの聖女》や前の前の《癒しの聖女》も1日ずつのローテーションに入っていたの。
何代か前の聖女が『聖女にも女性の幸せを!』と唱えて、聖女の引退は25歳になって、婚姻も出産も望めるようになったんですって。
だから、前の《癒しの聖女》は現在34歳、前の前の《癒しの聖女》はもうお婆ちゃんに近いご年齢で、ギリアン爺のお知り合いだったのよ。
最初にラウを見てくださったのも、この方だったのですって。
引退後の年数に応じて聖女としての力はどんどん弱まって行くそうなのだけど、この方の力は元々歴代の《癒しの聖女》の中でも最大だったとかで、ご年齢のことがなければもっと力を使えるのですって。凄いわよね。
そんな流れから、私は初めて近くで他の聖女の仕事を見ることになったの。
《癒しの聖女》の力の色は若葉色で、使えば辺りの空気が澄んで、周りに居る人まで清浄化されたようになって…とても素晴らしかったわ。
逆に私は歌うことしかできないし、個々の人間には使えない力だから、何だか役に立ててないような気がして……
とにかく、朝夕の『祈りの歌』だけは、いつも心を込めてしっかりと歌わせてもらっていたの。
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