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しおりを挟む──オレは、一体何をさせられているんだろう……
最近、日に何度も思う。
溜め息と共に心の中にまたこの言葉を浮かべた時、背後から声が掛かった。
「スイレンの君、ごきげんよう。」
「ごきげんよう、リンさん、メイさん。」
──うげぇ、面倒臭っ
「申し訳ありません。少々お花摘みに……」
「まぁ! いってらっしゃいまし。」
オレは、相手の女達に会釈をしながら微笑むと、その場を去った。
「あぁ残念。せっかくスイレンの君とお会いできたのに、また喋れなかったわ。」
「仕方ないって。だってあのスイレンの君だもの。それに、今日もまたお花摘みなら仕方ないわよ。
引き留めてお漏らしなんてシャレになんないわ。」
「アハハハ……」
女達が笑いながらその場を去るのを、柱の影から確認すると、本来の目的地だった書物部屋を目指した。
オレの名前はスイ。性別は男だ。
とある冬の日、オレは身形からしてお貴族様のお忍びって感じの、オレより少しだけ背の高いキラキラしい美形に、場末の酒場で声を掛けられた。
オレ達は意気投合し、その男の宿の部屋で飲み直すことになり、半分酔い潰れたその男をへべれけなオレが欲望の赴くままに抱いたのが、オレたちの付き合いの始まりだ。
まぁその時は、オレだって行きずりの相手との遊びってことで、1回限りの相手だとは思っていた。
けれどその翌月、オレが別の町の別の酒場から出てきたところをその男に張られていて、オレたちは再びその男の宿の部屋へ行き、今度はお互い理性の残る中で交わった。
仮名ではあるが名乗り合い、その男─セリ─はオレ─スイ─の名を叫びながらイッた。
以来、オレたちは数ヶ月に1度の割合で会ってはお互いを貪り合った。
そうして1年程経った頃……
事後にオレの腕枕でセリが言った。
「もう僕、スイ以外の前ではイけないんだ。」
「なぁ、それ煽ってんの?」
「いや。僕は…もう気付いてるとは思うけど、中央(王都の貴族という意味)の人間で、後継者を作らないといけないんだ。
でも、いくら美女と言われている女を前にしても、無理矢理勃たせたってイけなくて…
もう僕……どうしたらいいか。」
セリは宝石みたいに綺麗な瞳を潤ませて、オレを見上げる。
オレは不安そうなセリにキスをしてから、抱き締めて言った。
「心配すんな! じゃあオレがナカでイく練習台になってやんよ!!
そうすれば、相手が女だって、ナカでイけるだろ?」
以来、オレはセリの名を叫びながらイくことになった。
セリの攻めは容赦ないけど、いつだってオレの反応を見ながら我慢できるギリギリのラインを狙ってくる。
オレはいつの間にかセリとの快楽に溺れて行った。
あの日が初めてだったってのに、今では後ろに挿さなくても、見ながら想像しただけでイける。
「スイは淫乱だね。」
「そうしたのは誰だよ!」
「ふふ…僕だね。」
セリは言いながら、再びオレの後ろに穿つ。
「……んんっ! コラ、馴らすぐらいしろ!」
「ふふっ、無理矢理挿れられるの、好きなくせに。動くよ。」
「……うっ…ん! あぁ………」
その晩も、オレはまたセリの名を叫びながら、イッた。
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