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#6 夫の浮気を突き止めたら監禁された
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娘から京介さんが浮気しているかも、という相談をされた時は、「そんなバカな」と思った。
でも、送られてきた証拠……それは確かに女性と一緒にいる写真だった。
娘が裏切られている……そう考えただけで自分のことのように怒りが込み上げた。
「あなた……」
夫も当然そうだと思った。
だけど、
「放っておきなさい」
夫の言葉に、私は愕然とした。
「そんな……」
「離婚させるつもりか? 離婚して、真琴はどうする?」
ハッとした。
「京介くんは優秀だ。一家のために多少の我慢はさせろ」
「……それがあいつのためにもなる」
私は黙って頷くしかなった。
「……はい」
そして、地獄が始まった。
◯
真『今から帰るから』
その日、まず真琴から連絡があった。
少しいつもと違う声のトーン。
「帰ってくるって……」
なんとなく察しはついた。
「わかった……気をつけて」
ため息をつく。
京介さんから電話があったのは、それからすぐだった。
『もしもし』
「京介さん……」
『ごぶさたしております』
それはひどく爽やかな声だった。
咄嗟に浮気した、という真琴の言葉を思い出し血が上る。
「……どうしたの?」
『ええ、大変申し訳ないんですが……』
『そちらに真琴が行くかと思いますが、なんというか、ちょっと精神が錯乱していまして……』
「錯乱?」
『はい。僕に関してあることないことを言うかもしれません』
『僕が浮気している、だとか』
この男……!
怒りで頭が真っ白になる。
怒鳴ろうとした瞬間、腕を掴まれる。
夫が手を掴み、首を横に振る。
それから受話器を取ると、
「ああ、京介くんか」
「ああ」
「わかった。苦労をかける」
しばらくして受話器を置き夫は、
「今から京介くんが来るそうだ」
と言った。
「……真琴が来るのよ」
夫は私の言葉に頷く。
それから、
「ああ、だから……」
「……真琴には京介くんが来ることを言わないように」
結局、私は京介さんのその言葉を嘘だと知りながら受け入れることにした。
家族の平穏のために……
◯
静かに響く食器の音。
息が詰まりそうだった。
娘に嘘をついていることが苦痛だった。
罪悪感で頭がどうにかなりそうだった。
「どうしたの? お母さん……食欲ない?」
食欲なんか湧くわけない。
しかし、何も話さないわけにはいかない。
「これからどうするの?」
と私は娘に聞いた。
真琴は一瞬驚いた顔をして、
「とりあえず、弁護士に相談しようと思う」
と言った。
ああ……もう覚悟が決まっているんだ。
そう思った。
沈黙していると、夫が諭すように、
「なあ、離婚はまだやめたほうがいいんじゃないか」
と言った。
その時の娘の顔を私は一生忘れない。
「え……どういうこと?」
「もう少し、冷静に考え直した方がいい」
「ちょっと! 何言ってるの?」
「その浮気なんだが……本当に浮気なのか? お前の勘違いってことも……」
「京介くんは高校の同級生だと言ってるそうじゃないか」
絶望した顔の真琴。
もちろん、私も夫もそんなこと信じていない。
でも、信じたふりをするしかない。
私は卑怯者だ。
何も言うことができない……
玄関の呼び鈴が鳴った。
「……出てくるわね」
誰が来たのかはもちろんわかっていた。
玄関を開けると、京介さんが立っていた。
「京介さん……」
してはいけないと思うのに、どうしても険しい顔をしてしまう。
彼はにこやかに笑う。
「こんばんは」
「すみません。お食事中でしたか?」
あまりにも平然とした態度。
「あなた、本当に……」
口から言葉が出かけるが、なんとか堪える。
「……真琴なら、リビングにいるわ」
「……上がって」
「ありがとうございます」
そう言って娘の夫は家に上がる。
私はその後ろ姿を見ながら、顔を覆った。
自分の一番愛する娘を、私は自分の手で……
真琴「……ちょっと、どういうこと?」
娘の顔をまともに見ることができなかった。
罪悪感で胸が押しつぶされそうだった。
「京介くん、真琴をよろしく頼むよ」
「はい」
全部、茶番だって知っている。
知っていながら、私たちは……
私は……
真琴が京介に連れていかれる。
「真琴……」
「お母さん!」
助けを求める真琴に、私は何も言えない。
玄関のドアが閉まる。
私は玄関のドアに手をつく。
「ごめんなさい……」
「ごめん……」
外からは真琴の抵抗する声。
私はその場に崩れ落ちた。
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