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#5 夫の浮気を突き止めたら監禁された
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「お客様……」
電話機の前で呆然としていると、スタッフが遠慮がちにそう声をかけてくる。
ハッとして、立ち上がる。
「ごめんなさい……」
スタッフが気まずそうに私に聞く。
「あの、大丈夫ですか……?」
私は頭を振って、なんとか微笑む。
「大丈夫……」
戻らなきゃ……京介に怪しまれる。
◯
「どこ行ってた?」
戻ると、京介が訝しげな顔で私にそう尋ねた。
「ちょっとトイレに……」
そう答える、京介は納得したように頷く。
「そうか」
良かった。
なんとか疑われる前に戻って来れて……
「大丈夫だったの? 車」
私の問いに京介は苛立ちながら、
「ああ、擦れていただけ。相手の保険会社から後で連絡あるらしい」
と答える。
「そう」
本当は車なんてどうでもいい。
どこにでもいいから逃げたかった。
でも、私にはもう……戻る場所はない。
「帰ろう」
と京介は言った。
「うん」
またあの生活が始まる。
終わりの見えない、あの生活が……
◯
真綿で首を絞められるように、ゆっくりと私の心は殺されていった。
「さあ、真琴、起きて」
朝起きると京介と朝食を摂り、昼はずっとベッドで横になる。
家にはずっと京介がいて、仕事をしている。
あるのは簡単な受け答えのみの単調な生活。
カレンダーの印はもうずっと前からつけなくなっていた。
その生活は、やがて私から思考力を奪っていった。
「真琴」
その晩、晩御飯を食べ終わると京介が私を呼び止めた。
「改めて、あの時のことを話そう」
と京介は言った。
「あの時のこと……」
ぼんやりする頭で、京介が浮気のことを言っているのだとわかった。
「やっぱり、誤解したままだと良くないだろ?」
誤解、と京介は言った。
「誤解?」
首を傾げると、京介は微笑む。
「真琴はどうして、俺が浮気してるって思ったの?」
「……それは」
それはもちろん、だって証拠が……
ぼんやりする私に、京介がぎゅっと手を握る。
「聞いてくれ」
「全部、真琴の妄想なんだ」
「えっ……」
何を言ってるの……?
私が戸惑っていると、玄関の呼び鈴がなる。
「……ああ、良かった」
京介は立ち上がると、玄関へと歩いていった。
戸惑いながら見ていると、リビングのドアが開く。
「真琴……!」
そこにいたのは、智子だった。
「智子……?」
◯
私たちは3人でテーブルにかけた。
私の対面には、智子と京介が並んでいた。
「どうして智子が……」
困惑して京介を見ると、京介は微笑む。
戸惑っていると、智子が真剣な声で、
「真琴が具合を悪くしたって言うから……私……」
と言った。
智子は決意を固めるように目を釣り上げた。
「真琴……落ち着いて聞いて」
私は戸惑いながら智子を見つめる。
智子は、
「京介さんは浮気なんかしてない」
と言った。
真琴「え……?」
谷底に突き落とされるような衝撃に襲われる。
真琴「何言ってるの……? 智子……だって」
だって、あんなに浮気の相談したのに……
「違うの……真琴はそう思い込んでいただけ。ずっと言い出せなかった」
「嘘……! だって、証拠が……」
「本当に、写真が浮気の証拠になるの? 偶然、同級生と会っていただけだって、京介さん言ってたよ」
頭の中で、証拠写真がフラッシュバックする。
記憶の中、もやがかかったように思い出せなくなっていた。
浮気だと思っていたのは全部……
「全部、真琴の考えすぎなの……」
「考えすぎ……?」
呆然とする私に、京介が微笑みかける。
「大丈夫、ゆっくり治していこう……」
足元がガラガラと崩れ落ちるような感覚に襲われた。
◯
あれから考えることをやめた。
「じゃあ、行ってくる」
いつからか、京介は私を一人にして会社に行くようになっていた。
「いってらっしゃい」
部屋の中から、私は京介を見送った。
もう、一人にされても外に行こうという気力はなかった。
どこもおかしくなかったはずなのに、最近では本当に具合が悪いみたいに、ずっとベッドで横になっている。
鏡を見る。
私はひどい顔をしていた。
本棚から辞書を取り、辞書に挟み込むようにして隠していた証拠写真を取り出す。
京介と長い金髪の女が歩いている写真。
二人で店に入って行く写真。
これがあれば簡単に終わると思っていた。
でも、今は迷っていた……離婚して、それでどうする?
何もかもがどうでもいい、そう思った。
呼び鈴が鳴る。
配達?
無気力な足取りで私は玄関に向かった。
ドアを開ける。
「え……」
そこに居たのは母だった。
「お母さん……」
呆然と母を見る。
なんで、お母さんが?
母は真剣な顔をしていた。
「今、京介さんは?」
「いないけど……」
私がそう言うと、母は私の腕を強く掴んだ。
「えっ……?」
「逃げるわよ」
と母は言った。
電話機の前で呆然としていると、スタッフが遠慮がちにそう声をかけてくる。
ハッとして、立ち上がる。
「ごめんなさい……」
スタッフが気まずそうに私に聞く。
「あの、大丈夫ですか……?」
私は頭を振って、なんとか微笑む。
「大丈夫……」
戻らなきゃ……京介に怪しまれる。
◯
「どこ行ってた?」
戻ると、京介が訝しげな顔で私にそう尋ねた。
「ちょっとトイレに……」
そう答える、京介は納得したように頷く。
「そうか」
良かった。
なんとか疑われる前に戻って来れて……
「大丈夫だったの? 車」
私の問いに京介は苛立ちながら、
「ああ、擦れていただけ。相手の保険会社から後で連絡あるらしい」
と答える。
「そう」
本当は車なんてどうでもいい。
どこにでもいいから逃げたかった。
でも、私にはもう……戻る場所はない。
「帰ろう」
と京介は言った。
「うん」
またあの生活が始まる。
終わりの見えない、あの生活が……
◯
真綿で首を絞められるように、ゆっくりと私の心は殺されていった。
「さあ、真琴、起きて」
朝起きると京介と朝食を摂り、昼はずっとベッドで横になる。
家にはずっと京介がいて、仕事をしている。
あるのは簡単な受け答えのみの単調な生活。
カレンダーの印はもうずっと前からつけなくなっていた。
その生活は、やがて私から思考力を奪っていった。
「真琴」
その晩、晩御飯を食べ終わると京介が私を呼び止めた。
「改めて、あの時のことを話そう」
と京介は言った。
「あの時のこと……」
ぼんやりする頭で、京介が浮気のことを言っているのだとわかった。
「やっぱり、誤解したままだと良くないだろ?」
誤解、と京介は言った。
「誤解?」
首を傾げると、京介は微笑む。
「真琴はどうして、俺が浮気してるって思ったの?」
「……それは」
それはもちろん、だって証拠が……
ぼんやりする私に、京介がぎゅっと手を握る。
「聞いてくれ」
「全部、真琴の妄想なんだ」
「えっ……」
何を言ってるの……?
私が戸惑っていると、玄関の呼び鈴がなる。
「……ああ、良かった」
京介は立ち上がると、玄関へと歩いていった。
戸惑いながら見ていると、リビングのドアが開く。
「真琴……!」
そこにいたのは、智子だった。
「智子……?」
◯
私たちは3人でテーブルにかけた。
私の対面には、智子と京介が並んでいた。
「どうして智子が……」
困惑して京介を見ると、京介は微笑む。
戸惑っていると、智子が真剣な声で、
「真琴が具合を悪くしたって言うから……私……」
と言った。
智子は決意を固めるように目を釣り上げた。
「真琴……落ち着いて聞いて」
私は戸惑いながら智子を見つめる。
智子は、
「京介さんは浮気なんかしてない」
と言った。
真琴「え……?」
谷底に突き落とされるような衝撃に襲われる。
真琴「何言ってるの……? 智子……だって」
だって、あんなに浮気の相談したのに……
「違うの……真琴はそう思い込んでいただけ。ずっと言い出せなかった」
「嘘……! だって、証拠が……」
「本当に、写真が浮気の証拠になるの? 偶然、同級生と会っていただけだって、京介さん言ってたよ」
頭の中で、証拠写真がフラッシュバックする。
記憶の中、もやがかかったように思い出せなくなっていた。
浮気だと思っていたのは全部……
「全部、真琴の考えすぎなの……」
「考えすぎ……?」
呆然とする私に、京介が微笑みかける。
「大丈夫、ゆっくり治していこう……」
足元がガラガラと崩れ落ちるような感覚に襲われた。
◯
あれから考えることをやめた。
「じゃあ、行ってくる」
いつからか、京介は私を一人にして会社に行くようになっていた。
「いってらっしゃい」
部屋の中から、私は京介を見送った。
もう、一人にされても外に行こうという気力はなかった。
どこもおかしくなかったはずなのに、最近では本当に具合が悪いみたいに、ずっとベッドで横になっている。
鏡を見る。
私はひどい顔をしていた。
本棚から辞書を取り、辞書に挟み込むようにして隠していた証拠写真を取り出す。
京介と長い金髪の女が歩いている写真。
二人で店に入って行く写真。
これがあれば簡単に終わると思っていた。
でも、今は迷っていた……離婚して、それでどうする?
何もかもがどうでもいい、そう思った。
呼び鈴が鳴る。
配達?
無気力な足取りで私は玄関に向かった。
ドアを開ける。
「え……」
そこに居たのは母だった。
「お母さん……」
呆然と母を見る。
なんで、お母さんが?
母は真剣な顔をしていた。
「今、京介さんは?」
「いないけど……」
私がそう言うと、母は私の腕を強く掴んだ。
「えっ……?」
「逃げるわよ」
と母は言った。
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