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終曲 先生と私のピアノ・フィナーレ 8
しおりを挟む「どうして恥ずかしいんですか?」
コールディアは処女で、男性の体をよく知っているわけではない。
そういう行為に近いことを彼としたことはあるので、気持ちが良くなれば射精することくらいはわかっている。
だがその早い遅いはよくわからなかった。
それよりも、自分の中で気持ち良くなってもらえるのならそんな嬉しいことはないのではないだろうか。
「あのね。男は早く終わってしまうのが恥ずかしいものなんだよ。アレが立派で思いのまま女を啼かせられるのが至高って思うサルなんだよ。こんなのまるっきり童貞ですって言ってるようなものじゃないか」
普段聞かない下品な言い方に、コールディアがちょっと驚く。
「先生もそういう言い方するんですね」
「君もしかして僕に幻想抱いてない?」
「幻想は抱いてないですけど、先生は私の理想です」
言われていることは嬉しいのに、彼はベッドの上に座ったままふてくされているように見える。さっきの蠱惑的な表情はどこに行ってしまったのだろう。
「あはは、先生もうまくいかないことってあるんですね。なんかちょっと嬉しいかも…」
「初めから何もかもうまかったわけじゃない…ピアノだって魔法だって練習を重ねて今がある・・・」
「アフィ」
コールディアが明るい声で名前を呼んだ。
コールディアも呼び慣れなくて照れているところがあるが、ノートヴォルトの方も呼ばれただけで高まるものがあった。
名を呼んだ彼女が、可愛らしく両手を前に出している。
「アフィ、一緒にいっぱい練習しよう」
ノートヴォルトは頭に手をやり、呆れた表情を浮かべた。
「練習って…何言ってるのかわかってる? 結構恥ずかしいんだけど…でも」
ノートヴォルトは彼女の両手を取ると、そのまま引っ張って自分の上に座らせた。
「でも、悪くない。君と積み上げていく感じは嫌いじゃない」
笑い合うと、また口付けから始まる。
「本当にいっぱいするよ? こんな不本意な結果じゃ満足できないからね」
「うん…いっぱいして…たくさん、いいところ探そう?」
2人はその後じゃれ合うように肌を重ね続け、互いの温もりに幸せを感じた。
今はうまくいかなくても、明日も、明後日も、さらにその先もあるのだ。
お互いにずっと欲しかった物を与え合い、この出会いのために生まれて来たのではないいかと思うほど、愛しい時間だった。
そして疲れ果てれば、抱き合ったまま眠ってしまった。
翌朝コールディアが目覚めた時、先に目覚めたノートヴォルトは優しい笑みで彼女の髪を撫でていた。
今はもう、心配しなくてもきちんと隣に温もりがある。
コールディアはそれが嬉しくて首に抱き着いたが、まさかそのままもう1度抱かれてしまうとは思わなかった。
2人が音楽堂に顔を出せたのは太陽ももう高くなってから。その日は休日で既に多くの生徒が利用していた。
突然現れた“先生の嫁”に女の子たちは興味津々で、この日は練習にも勉強にもならなかった。
気さくな雰囲気のコールディアに、皆次々と質問を浴びせていく。
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