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第26楽章 運命の日 3
しおりを挟む「レングラント様、こんな時に失礼なのは十分理解した上での質問をよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「ショスターク侯爵閣下は、どうなされているのでしょう?」
レングラントの目線が広場の戦いのさらに向こうに向けられた。
「アフィが倒れてすぐ前線に出られた…父のやり方は正しいとは思えないが、魔術師としての誇りは誰よりも強くお持ちの方だ。魔術師を引き連れ、マギア・カルマの増加を抑えようとしている。私は学院の方をまかされ戻ったところだ」
「あの、結界はどうなるんですか?」
「回復は見込めない。それこそ“燃料”を投下しなければ、このまま破壊が進むだけだ。我々はとにかく現状発生している魔物の数を減らし、被害を最小限にしなければならない。では私はもう行く。コールディア、大丈夫だ。アフィはすぐ回復する。魔力量だけでなく回復も早いから」
そう言うと、彼は先の魔術師の戦闘に加わるために行ってしまった。
「先生…」
「コールディア、大丈夫というのですから大丈夫ですわ」
「回復したら、また戦うんだよ…先生、壊れちゃうよ…そうやって何度、道具にされてきたの…」
「コールディア、今は心配しても仕方ありませんわ。教授がお戻りになる頃、もう必要なかったと言えるくらい魔術師たちに頑張っていただくしかありませんわ」
「そうだね、そのために出来ることを私たちもしよう」
コールディアたちも、もっと戦況の分かる場所まで急いだ。
レングラントが来た事で魔物を押し返す力は圧倒的に増したが、ついに3つ目の結界が壊れる音が響くと、またすぐに魔物は増えた。
魔物の咆哮と断末魔、そして魔術師たちの魔法と怒号が飛び交い、その後ろで何をすべきかもわからないでいる学生が多数いた。
「みんな、何してるのよ!? 戦えなくても私たちにも出来ることはあるでしょう!? 魔術師たちを助けるのよ。みんなできる補助をどんどんかけて! それが彼らの助けになるから!」
「訓練を思い出すんですわ! 魔楽部だって補助の練習をしたはずですわよ! 魔力上昇でも、防御上昇でも、お怪我をされた方の回復でもなんでも思い出して! 私たちは魔術学院生ですわ!」
「何したらいいかわからないなら、水の加護を! みんなここを水の場にするんだよ! 氷ができなくたって、水の場になれば使いやすくなるって授業で習ったよね!?」
3人の言葉に、学生たちが少し落ち着きを取り戻す。
やがて上級生は自分の知る補助をありったけ使い、うまく出来ない者は場を水にすべく水の魔力を空気中に流した。
攻撃は無理でも防御はできる者は魔術師に襲い来る魔物の攻撃をシールドで防ぎ、彼らに反撃のチャンスを作る。
皆が今、一丸となって立ち向かおうとしていた。
現場に“自分たちにも出来るのでは?”という希望の兆しが見え始める。
しかしその時、無情にも耳をつんざく新たな金属音が響いた。
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