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第18楽章 音楽教授の苦悩 3
しおりを挟む「なんだよいい所な…ストラヴィス教授っ」
「君たちは魔術師学科の2年か。何をしている?」
「別に…ああこのリボンを落としたみたいだったから、彼女に聞いたんですよ」
そう言って返されたリボンを、コールディアはひったくるように取り上げてぎゅっと胸の前に抱きしめた。
「図書館で騒ぐんじゃない。他の学部にも迷惑だ」
コールディアを囲んだ彼らは、「失礼します」と言うと散り散りになった。
ほっと胸をなでおろす。
「ストラヴィス教授…ありがとうございます」
「ノートヴォルト教授は――」
あまり接触したくはない人物に助けられ、コールディアはすぐに去るつもりだった。だけどノートヴォルトのことで何か言いかけた彼の次の言葉を待つ。
「彼は…何者なんだ」
「何者?」
「以前彼に返された魔力。普通ではなかった…正直あの夜は眠れなかった…今も恐ろしいと思うことがある…」
「ちょっとだらしない音楽教授では?」
「そんなことはわかっている…いや、知らないならいい。変な話をして悪かった」
ストラヴィス教授は本来は学院でもトップクラスの魔力の持ち主で、彼の教え子の多くは宮廷魔術師として働いている。
プライドが高く芸術系を馬鹿にするが、実力はあるはずなのだ。
学院の在籍期間も長く、確か15年以上前から魔術学部にいたはず。
そこでふと気になったことがある。
もしそうなら、ノートヴォルトの子供の頃を知っているのではないか。
「教授、私も1つ変な質問をしていいですか?」
「なんだね?」
「10年ちょっと前、魔術師学科に飛び抜けて優秀な子っていませんでした?」
「10年…ああ、飛び級の子供がいたな。私の教え子でもある」
「え…教授が?」
「私の講義に来ていたのは覚えている。いつも教室の1番端の席に1人でいるんだ。最初は女の子かと思ったが、金髪で綺麗な顔の男の子だった。私の方が質問に答えられないこともあったな。だがいつの間にか学院から消えていた」
「金髪…?」
「知り合いか?」
「いえ、飛び級ってほんとにする人がいるんだなってちょっと聞いてみたかっただけです」
「稀にいるな。彼以外にも見た事はあるが、普通に卒業し、大体は宮廷魔術師になる」
「そう、なんですね…あ、ありがとうございました。助かりました」
「そのなんだ、ここでは気を付けなさい…」
手にしたリボンをポケットに大事に仕舞うと、本を借りてノートヴォルトの部屋に向かう。
(金髪…金髪ってなんだ…なんで? すごく見てみたいけど)
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