学生だけど、魔術学院の音楽教授で最終兵器な先生を好きになってしまいました。

茜部るた

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第13楽章 先生のピアノ 5

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「ちょっと、そんな迫らないでよ」

 いつまでも答えないでいるコールディアに、目力の強いフレウティーヌが迫る。

「白状なさい」

「絶対誰にも言わないでくれる?」

「私とあなたの仲ですわ…秘密は絶対でしてよ」

「あの本当に冗談抜きで誰にも言わないでよ?」

「言いませんわ。我が家の名誉にかけても言いません」

「あのね…ちょっと色々理由があってね…」

「ええ」

「先生に…」

 そう答えた瞬間、フレウティーヌは「ああっ」と言いながら大袈裟に机の上に倒れ込むふりをした。

「ついに…ついに2人は禁断の壁を越えてしまわれたのねっ」

「違うから! それに選んだのは先生じゃないの。先生の知り合いと言うか…」

「でも、でもでも贈ろうと思ったのは教授ですのね!?」

「それはまあ、そうだと思うけど」

「脈ありですわ…これはきっと脈ありですのよ」

 フレウティーヌは顎に手をあて、探偵でも気取っているかのようにそう話す。

「待って、脈ありとかの前に私は別に…」

「あら? 今更“好きなわけじゃない”っておっしゃるの?」

「あのねフレウティーヌ、そこまで簡単な話じゃないのよ」

「恋に落ちるなんて簡単ですわ。一瞬ですもの」

「そうじゃなくて。あのね、私が先生を好きになるとしたら確かに一瞬でいいかもしれない。でもちょっとそういう単純な話でもないの」

「相手が教授だからですの?」

「うーん…ごめん、フレウティーヌでも話せない。その代わり恋に落ちたと思ったらちゃんと報告するからさ」

 いつもの調子と違い、沈んでしまったような表情の親友に、フレウティーヌも流石に何かあるのかと察した。

「わかりましたわ。きっと何か事情がおありなのね」

「うん」

「ではあまり詮索しないように努力いたしますわ」

「努力なんだ」

「だって興味ありますもの! 教授と学生…ある意味禁断ですわっ」

「人を自分の嗜好を満たす道具にしないでよ…」

 コールディアは苦笑する。でもこの親友はちゃんと一歩手前で加減してくれる。

「フレウティーヌ、突っ込まないでくれた代わりに、もう1つ先生の秘密教えてあげる」

 くわっ、とフレウティーヌの目つきが変わる。興味津々の目はどんな爆弾発言が来るのかという期待に満ち溢れていた。

「ちょっと食いつきすぎだよ……あのね、このリボンの色、先生の目の色と同じなんだ」

「ああっ」

 今度こそ机に倒れ込んだフレウティーヌは、しばらく親友の話で悶え喜んでいた。
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