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第13楽章 先生のピアノ 3
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「魔術の実技は今月末。ピアノは来月始め、ペーパーは実技と並行かー。なんでこんな詰め込むのかな」
「魔術実技は今回は威力と正確性ですって。ピアノの課題曲は“技巧訓練のためのピアノ狂詩曲”ですって。指が死んでしまいますわ」
「うぇえ。どっちも無理」
魔法の威力は慣れない者が高めようとすると、そちらに集中してしまい的を外してしまうことがある。
そして課題曲は、短いが技巧的で速いテンポ。これが弾けないならピアノを辞めろと言われるほど有名な練習曲だが、とにかく運指が早く滑らかに弾くにはかなり練習が必要だ。
「はぁ。ペーパーは?」
「前期の総復習ですわね」
「そこだけはなんとかいけそう」
「さすが専属講師がいただけはありますわ」
「ああ、練習室に走ればよかった」
「もう埋まっていますわね」
「とりあえず今日は帰るよ。テスト期間中は助手もできないしね」
「私もまずはピアノ練習をしますわ」
「また明日ね」
「ええ、御機嫌よう」
ノートヴォルトの家に行くのは週末だ。今からすぐにピアノを借りてしまいたいが、そんなに入りびたるのも何だかいけない気がする。
明日こそ練習室を取らねば。
そう決意して、今日は帰ってペーパーの勉強をすることにした。
「あ…」
帰ろうとしたのに、なぜか癖でノートヴォルト教授の部屋の前に来ていた。
「何してんだろう」
「何してるの」
横から呆れた声がしたので見ると、書類を抱えたノートヴォルトがいた。
「うっかり来てしまいました。帰ります」
「どんなうっかり」
「なんか寄るのが癖になってまして。あ、扉開けますね」
「ありがとう」
「ねえ先生」
「なに?」
「あー、やっぱいいです」
「気になるんだけど」
「あのですね、ピアノが…」
「そんなだろうと思った」
「だってぇ。誰が選曲したんですかあれ…」
ノートヴォルトは半べそのコールディアを置いて1度部屋に書類を置きに入ると、すぐに出て来た。
テスト期間中に教授の部屋には入れない。
「僕じゃないからね。ほら手出して」
「手?」
コールディアが手を出すと、その上に鍵を置かれた。
「使っていいのは下校から夕方4時まで。警戒魔法をかけてから4時15分の馬車には乗ること」
「え…いいんですか」
「早くしまって。僕が良くても世間的には良くない」
コールディアは慌てて鍵をポケットにしまうと、「ありがとうございます」と言った。
「もう行きな。テスト期間中にあんまりうろつかないで」
「はい、あの、本当にありがとうございます」
ノートヴォルトは軽く片手を上げると部屋に戻ってしまった。
扉に「さようなら」と言ってから校門まで走った。
とてもじゃないがのんびり歩いている気分ではなかった。
「魔術実技は今回は威力と正確性ですって。ピアノの課題曲は“技巧訓練のためのピアノ狂詩曲”ですって。指が死んでしまいますわ」
「うぇえ。どっちも無理」
魔法の威力は慣れない者が高めようとすると、そちらに集中してしまい的を外してしまうことがある。
そして課題曲は、短いが技巧的で速いテンポ。これが弾けないならピアノを辞めろと言われるほど有名な練習曲だが、とにかく運指が早く滑らかに弾くにはかなり練習が必要だ。
「はぁ。ペーパーは?」
「前期の総復習ですわね」
「そこだけはなんとかいけそう」
「さすが専属講師がいただけはありますわ」
「ああ、練習室に走ればよかった」
「もう埋まっていますわね」
「とりあえず今日は帰るよ。テスト期間中は助手もできないしね」
「私もまずはピアノ練習をしますわ」
「また明日ね」
「ええ、御機嫌よう」
ノートヴォルトの家に行くのは週末だ。今からすぐにピアノを借りてしまいたいが、そんなに入りびたるのも何だかいけない気がする。
明日こそ練習室を取らねば。
そう決意して、今日は帰ってペーパーの勉強をすることにした。
「あ…」
帰ろうとしたのに、なぜか癖でノートヴォルト教授の部屋の前に来ていた。
「何してんだろう」
「何してるの」
横から呆れた声がしたので見ると、書類を抱えたノートヴォルトがいた。
「うっかり来てしまいました。帰ります」
「どんなうっかり」
「なんか寄るのが癖になってまして。あ、扉開けますね」
「ありがとう」
「ねえ先生」
「なに?」
「あー、やっぱいいです」
「気になるんだけど」
「あのですね、ピアノが…」
「そんなだろうと思った」
「だってぇ。誰が選曲したんですかあれ…」
ノートヴォルトは半べそのコールディアを置いて1度部屋に書類を置きに入ると、すぐに出て来た。
テスト期間中に教授の部屋には入れない。
「僕じゃないからね。ほら手出して」
「手?」
コールディアが手を出すと、その上に鍵を置かれた。
「使っていいのは下校から夕方4時まで。警戒魔法をかけてから4時15分の馬車には乗ること」
「え…いいんですか」
「早くしまって。僕が良くても世間的には良くない」
コールディアは慌てて鍵をポケットにしまうと、「ありがとうございます」と言った。
「もう行きな。テスト期間中にあんまりうろつかないで」
「はい、あの、本当にありがとうございます」
ノートヴォルトは軽く片手を上げると部屋に戻ってしまった。
扉に「さようなら」と言ってから校門まで走った。
とてもじゃないがのんびり歩いている気分ではなかった。
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