上 下
45 / 113
13

第12楽章 問一。 2

しおりを挟む
 上級生たちがニヤニヤ笑っている。
 1人がノートヴォルトに向かい「炎の槍フレイム・スピア」を放った。魔力加減こそ抑えているようだが、無抵抗のままのノートヴォルトの右手に当たり、手のひらを切り裂くと同時に火傷の傷を負わせた。
ジュっと嫌な音がする。

「んーっ!! んんーっ!」

「なんだよ、もうちょっとびびれよ」

 コールディアは魔法が唱えられないように口を塞がれてしまった。
攻撃されておきながら無反応のノートヴォルトが気に喰わないらしい学生は、今度は隣の学生に「お前もやってみろよ」と言っている。

「ストラヴィス教授。僕も抵抗しますがいいですか?」

「お前がストラヴィス教授の呪縛を破れるわけないだろ」

 精神、神経系の魔法攻撃の1つで体の自由を奪われている状態のノートヴォルト。
 これを解除するには他人が異常を回復させるか、本人がかけた相手より大きな魔力で破るのが常套だ。
 異常回復ならともかく、破られた場合かけた側の精神・神経は術を反射されたことによりダメージを受ける。

 ノートヴォルトの「いいですか?」とはつまり反撃によってダメージを喰らうがいいのか、ということだ。

風の矢ウィンド・アロー

 そうこうしている内に「お前も」と言われた学生がまたノートヴォルトに攻撃魔法を使う。今度は頬を掠め、黒髪が数本一緒に落ちた。
 かまいたちのように切られた頬からは、一筋の血が流れる。

「んーっ!!」

「動かない的は確実に当たっていいな。投石開始バリスタ・オーダー

 最後の学生が呪文を唱えると、無傷だった左手に小さな石つぶてが数発当たる。
 小さくても速さのある石つぶては、手の甲に数発めり込むと下に落ちた。少し遅れて血の雫がその上に落ちる。

「痛そうー。それってピアノ弾けるの?」

 攻撃しといてそう言うと、3人は何が面白いのかゲラゲラ笑い始めた。
 叫ぶこともできないコールディアが、悔しさとノートヴォルトの血の滲む手を見て涙を浮かべる。

「じゃあこいつは借りていくぜ」

 コールディアが乱暴に引っ張られると同時に、ノートヴォルトは目を閉じた。
 そしてすぐに目を開けた時、知らん顔をするストラヴィス教授が痙攣したかと思うとその場に崩れた。

「ストラヴィス教授っ!?」

「彼女の手を離してくれないか。そうでないのならフリオッソの後を追うことになる」

 ノートヴォルトが流れる血もそのままに、状況の飲み込めない上級生らに言った。
 コールディアを掴んでいた学生がその手を離す。
 しばらくノートヴォルトを恐れた目で凝視した後、倒れたストラヴィス教授に駆け寄った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

ぽっちゃりOLが幼馴染みにマッサージと称してエロいことをされる話

よしゆき
恋愛
純粋にマッサージをしてくれていると思っているぽっちゃりOLが、下心しかない幼馴染みにマッサージをしてもらう話。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...