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第10楽章 兵器の子 3
しおりを挟む「お待たせいたしましたっ」
「あらありがとう。お菓子もお願いできるかしら。あ、お兄様には緑のものでお願いね。中を見ればわかるわ」
「おにいさま…?」
「ああ、教授のよ。でねお兄様、それだけじゃないのよーー」
「おにいさま」
コールディアがノートヴォルトの方を向けば、彼は片手で顔を覆っていた。
「お兄様聞いてます?」
「聞いてない…」
もう止まることのないお喋りの阻止を諦めたのか、令嬢が話すままにしている。
コールディアはとりあえず言われた通り渡されたお菓子のうち緑の焼き菓子をノートヴォルトに、もう1つピンクの焼き菓子は令嬢の前に出した。
「あ、ここの焼き菓子美味しいのよ。緑はピスタチオですって。甘さ控えめだそうよ」
彼女はそう言うと上品に一口食べた。
「ん、ピンクってイチゴかと思ってたわ。これ桃ね。桃もおいしいじゃない! あ、それで発表会のことなのだけど…その前に、どうしてあんなことになっていたの? 魔奏グラスハープはどうしたのかしら?」
グラスハープの話が出てキッチンの方に一歩下がったコールディアが顔を上げる。
「…直前に破壊されていた」
「その話は聞いていませんわ。レニーお兄様も何も…結界派は関係あるのかしら?」
「多分ないと思う…」
「そう…あ、そのハープの奏者の女の子もレニーお兄様が気にしていたのよ。公爵は気づかなかったようだけど、私も少し気になることが…」
自分の話が出て、思わず話に聞き入る。
「フリーシャ、その話はまた後日ではだめ?」
「だめよ。私そう度々来られないもの。何が気になるって、マギアフルイドの色が時々揺らいでいたの、アフィお兄様ならご存知よね?」
「待って…」
「ほとんど青でしたけど、時々緑になって…でも公爵はそこには気づかなかったようなの。よかったわ…」
「どういうことですか」
メイドが話に割り込み、フリーシャと呼ばれた令嬢が一瞬きょとんとする。
「彼女が奏者だ」
「ええっ!? ごめんなさい、私てっきり日雇いメイドなのかと」
「それは合ってます。仕事が欲しくて先生にお願いしたんです」
「まあ、私そうとも知らずお話ししすぎてしまったわ…」
「だから待ってって言ったのに」
数分後、コールディアは自分の分のお茶も淹れるとノートヴォルトの隣に座った。
いつの間にかすっとピスタチオの焼き菓子がコールディアの前に移動している。
「もう半分お話ししてしまいましたし」
そう言うとフリーシャはまた話し始める。
「マギアフルイドの特製はご存知かしら?」
「安定性が高いとか、魔力に反応するとか…」
「ええそうよ。グラスハープみたいにちょっと触るくらいなら普通は誰が触っても大体青よ。魔術師学科の魔力の高い子で緑になることはあるけど。魔力が低ければ青、そこから徐々に緑になり黄色になって、最も高い色が赤なのよ」
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