学生だけど、魔術学院の音楽教授で最終兵器な先生を好きになってしまいました。

茜部るた

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第4楽章 グラスハープ四重奏 2

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 指導が終わり、帰りに冒険者ギルドに立ち寄る。
 旅費を稼ぐ必要もあったので、指導ついでに討伐依頼も一緒に熟していた。

 素材換金したお金と依頼の報酬金を、ラピスと凛で折半する。

「パーティ組んでた頃は、こんなに稼げたことありませんでした」

 分け前の金額を確認して、ラピスは喜ぶ。

「それが本当の実力だったのよ。これから、もっと稼げるようになるわよ」


 二人で話していると、すれ違ったアランが舌打ちをして通り過ぎる。

「あら、自慢になっちゃったかしら」

 ラピスの元パーティメンバーであるアラン達は、先日の件を逆恨みしているようで、ギルドなどで遭遇した時には、睨みつけて来たりしていた。

「けど、ラピスちゃん的には、見返せた感じになったかもね。ラピスちゃんもやれるってことを、もっと見せつけてやりましょ」
「が、頑張りますっ」



 ギルドを出た二人は、宿屋へと向かう。
 住居はシェルターミラー内であったが、他の子をずっと中に閉じ込めておく訳にもいかないので、取った宿を集合場所として、日中は自由行動としていた。

「……なんだけど、地域によって報酬の相場も違うから、稼ぐ場所も考えないとね」

 喋りながら路地を歩いていると、前方の物陰からアランが姿を見せる。

「随分と稼げたみたいだな。丁度いいから、この前の慰謝料を頂こうか」

 物陰から他のメンバーも現れ、二人を取り囲む。

「え、何? かつあげ?」
「大人しく出さないと、痛い目合うぞ」

 アラン達は武器に手をかけ、二人を脅す。

「アランさん、貴方、実力差が分かってないんですか?」

 ラピスが少し驚いて言う。
 僅かではあるが、実際に凛と一戦を交えたにも拘わらず、アランはその実力の差に気付いていなかった。

「あ? お前はお前で無断で抜けやがって。お前がいきなり抜けたせいで、荷物持ちが足りねーんだよ。どうしてくれるんだ」
「それは騙していた貴方達が悪いんじゃないですかっ」
「抜けた途端偉そうに。もう土下座して謝っても、許してやらねーからな」
「謝罪すべきなのは貴方です。少しは自分の行いを見つめ直してください」

 ラピスが一歩も引かずに言い返すと、アランは蟀谷に青筋を立てる。

「この、劣化魔女が。マジで痛い目に遭わせてやる」

 激高したアランは剣を引き抜いた。
 他のメンバーも武器を出し、臨戦態勢となると、凛は庇うようにラピスの前に出る。

「私がやるわ。ちょっとお仕置きしてあげる」
「女がっ。なめんじゃねー!」

 アランは剣を振り上げ、凛へと斬りかかった。
 凛は特に動きを見せずに、アランの攻撃を待ち受け、その無防備な身体に剣が振り下ろされる。
 だが、剣は凛の身体には届かず、砂の鎧に止められた。

「は? な、何だ?」

 目に見えないものに阻まれ、アランは動揺する。
 その隙を突き、凛は無防備となった腹を蹴り飛ばした。

「ぐあっ」

 鳩尾に蹴りを思いっきり受けたアランは、腹を抑えて痛みに倒れる。
 すると、すぐさま他のメンバーの一人が魔法を唱えて、凛へと火炎放射を行った。

 凛は地面から盾を生成して、その炎を防ぐ。
 火炎放射は勢いを強めて続けられるが、凛は防いでいた盾をそのまま術者へと飛ばした。

「え!?」

 突っ込んでくる盾に、術者は何もできず、直撃を受け、その場に倒れた。
 続けて凛は、地面に落ちていた小石をいくつか浮かせ、仕掛ける隙も与えず、残ったメンバーへと飛ばす。
 投石はメンバーの額へと当たり、全員が地面へと倒れた。

 あっという間に、アランのパーティは全滅した。

「うん、楽勝。全然弱いじゃないの」
「アランさん達、若手の中では実力のある方なんですけどね……」

 若手の実力者といっても、所詮は地方の一冒険者。
 神獣や闇組織の構成員相手に戦ってきた凛の敵ではなかった。

「興が削がれたから、ちょっと遊んで帰りましょうか」

 絡まれて気分を害した為、凛達は気分転換に、少し町で遊んでから帰ることにした。
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