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元治元年

ごたいめ~ん(参)

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 んんん??

 心の声が面白かった?

 ちょっと白川さん、なんで私の心の声が聞こえてるの?エスパー?エスパーなのか?

「その、えすぱあ、というのはよくわかりませんけど、君の心の声はちゃんと聞こえています」

 なーんてこったい。これはバッチリ聞こえてるじゃないですか!え、まさかパンダにも聞こえてるの?

「その、ぱんだ、というのは、あのやせ細った彼のことですか?なら聞こえていませんよ」
(あ、なんだ。よかった)

 聞こえてないんならいいや。さっきから悪口連発してたからね。

 私が一人安堵している横で、白川さんとパンダは睨み合っていた。正確には睨んではいないが、空気がバチバチしてたもんで。

「どちら様ですか?」
「あなたに名乗る必要はないと思いますけど?」
「邪魔をしないでいただきたい」
「そういうわけにはいきません。彼女のことは守らなければならないので」
「これは我ら入山の問題です。部外者は手を出さないでくれませんか?」
「部外者ではないから手を出させてもらいますよ」

 おうおう、険悪ですね。

 というか白川さん、あなた部外者ですよね?だって入山の里にそんなイケメンはいなかったよ?みんな死んだ魚みたいな目ェしてたもん。

「それは面白い例えですね。確かに彼らの目は、死んだ魚のようです」
(え、気にするとこそこ?)
「違いました?」
(部外者の下りで反応してくださいよ)
「それはあとでちゃんと説明しますよ。今は彼らを追い払う方が先決です」

 そう言って白川さんは再び入山の追っ手5人に向き直る。

 聞きたいことは山ほどあった。なんでここにいるのかとか、どうやって入ってきたのかとか、私を守らないといけないってどういうことなのかとか、部外者じゃないってどういうことなのかとか、etc………。

 ま、それは全部おいといて。

 確かに今はさっさとパンダたちを追っ払ってしまおう。

「引いてはもらえませんか?」
「それはできません。我々の偉業を成し遂げるためには巫女様と九尾様のお力が必要なので」
「その偉業というのは、日ノ本征服ですか?」
「無論です」
「ならば、なおさら渡すわけには行きませんよ」

 白川さんは微笑みながら入山5人を見ていたが、目が笑っていない。

「我々と戦う気ですか?5対1で……いや、巫女様を含めたら6対1か。そんなんで勝ち目があるとお思いに?」
(うおーい、ちょっとなんで私がそっちの戦力に数えられてるのよ)
「彼らの目は節穴なのですよ、きっと。どう見ても5対2ではありませんか」
(それでもこれは多勢に無勢でしょう)
「そうですね。どうしましょう」

 えええええ。考えてなかったのー?

「さあ、どうします?ここで引けば、見逃してあげますよ」
「いいえ、それは結構です」
「…………よほど死にたいようですね、あなたは」

 さっきから思ってたんだけど、あのパンダって目が据わるとすごい怖いんだよね。なんかこう、呪われそうで。

「奇遇ですね、僕もそう思ってたんです」
(白川さん、そんなこと言ってないでどうすんですか)
「どうしましょうか。多分どうにかなりますよ」
(なんですか、その根拠のない自信は)

 うん、本当にどうしよう?このままでは白川さんが負ける未来しか見えないんだけど。

「壬生狼と呼ばれる我らの巣に、白昼堂々踏み込んでくる命知らずがいるとは思いませんでしたよ」
「屯所襲撃に来たのかと思えば、こいつにいったい何の用だよ」

 私が内心焦り始めたちょうどその時、背後から聞き覚えがすごくある声たちが聞こえた。

 振り向くと案の定、そこには平助君と山南さんがいた。

(ナイスタイミング!お二人が救世主に見える)
「では僕も救世主なんでしょうか?」

 とりあえず白川さんはちょっと黙っておきましょうね。

 こうして、私の前にさらに背中が二つ増えた。

(ほむろ、城壁感が半端ないよ)
『諦めろ。全員お主より背は高いんじゃから』

 うん、そうですね。
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