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文久3年

文久3年だってぇぇぇ!?(壱)

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 とりあえず、落ち着こうか私。人外になってしまったけど平常心を保とうか。

 今、私はとんでもない力を持ったとんでもないサイコパス(的な何か)になっている。

 九尾の狐から説明があったわけではないが、自分感覚だと、フルパワー本気を出したら街一個吹っ飛ばせそうな凄まじい力だ。

 だから人前では力を使わない方がいい。できる限り隠すべし。

 そして真人間に戻るには9回死なないといけない。これが一番大事。

 って!相当な状況に置かれてるはずなのに、私は何を一人で冷静に自己分析してるんだ。九尾の狐の力を吸収したついでに人間の常識的感情もなくしたのか?

『それよりもお主!今すぐここを離れるのじゃ!』
(はい?なんで?そもそも五感が皆無でしゃべることもできない私にどうやって移動しろと?)
『問題ない。妾が直々に案内してやる。嬉しかろう』

 いや………別に。

(そもそも案内だけでどうにかなるの?私のこの状況は)
『その辺は当たって砕けろじゃ』
(やめて、砕けないで!?)

 何それものすごく嫌な予感!

『とりあえず京の都に向かうぞ』
(京の都?京都の間違いじゃなくて?)
『なんだ、そのきょうと、とかいうものは。京の都は京の都じゃ』

 それ、江戸時代らへんの京都の呼び名じゃね?なんだか過去にタイムスリップしてきた感があるんだが……。

 あ、でも妖怪がいるから完全な日本じゃない?

 じゃあ異世界?日本風の異世界?

(まあ、いっか。なんで京の都に行くの?)
『お主に多くの死亡機会を与えるつもりだからじゃ』
(今ものすごく不穏で不吉なことをしゃべったな、この猫狐)
『誰が猫狐じゃ!!良いか!妾は千年もの間生き続けてきた、由緒正しき九尾の…………』
(あーはいはい。続きをどーぞ)
『お主……力が戻ったらいつか目にものみせてやる』

 え、それはヤだな。

(じゃあ頑張って死ぬのをやめるね。祟られたくないもの)
『わ、わかったのじゃ!何もせぬ!何もせんから力を持ち逃げするのはダメなのじゃ!』
(とりあえずさっきの続きを話してよ。なんで京の都に行ったら私の死亡機会が増えるのよ)
『それは単純な話じゃ。今の京の都は治安が悪いからじゃ』
(治安が?)

 京都ってそんなに治安悪かったっけ?

『お主の言うその"きょうと"とやらが京の都と同じかどうかはわからぬが、今の京は不逞浪士がうろつき、毎日人が死んでいる荒れた街じゃ』
(何その物騒な街。……って、ん?不逞浪士?)
『なんじゃ、お主。不逞浪士を知らぬのか?』
(いや、そういうことじゃないけど………)

 待て待て待て。不逞浪士?それって、幕末の都にはびこっていたという、あの?

 ちょっとここはどこ?今更ながらここはどこ?

(ちょいと九尾の狐さん、今って何年なの?二十一世紀の京都に不逞浪士なんて絶対にいないはずなんだけど?そもそも武士なんていないし)
『今年か?妾は人間の時代にはそう詳しくないのじゃが……確か文久3年の8月末だったはずじゃぞ?』
(……………………)




 文久3年だってぇぇぇぇぇえぇぇ!!!!!
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