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~東への旅~
緊急依頼
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次の日。食堂で朝食を食べたあと、ユールたちはチェックアウトして宿を出る。各々馬車と馬に乗り、早朝にミミールの街を出る。
「ユール様、次はどこに行くのですか?」
御者台にいるテオが聞いてきた。
「そうね………ミミールの南にあるスルトが一番近いかな?」
「了解。では次はスルトに向かいますね」
街道の分かれ道で左へ進むテオ。左の道がスルトへ続く街道だ。
「今日はここで休もう」
街道を半分ほど進んだところで日が暮れた。一行は街道を外れ、野営の準備を始める。
「テオ、今日は何を所望?」
「そうですね……チーズリゾットにします。えーっと、チーズと肉と牛乳と米をお願いします」
「わかった」
テオが所望した材料を異次元収納から取り出す。
テオが焚き火のところで料理をしている横で、ユールとノルンはテントの準備などに取り掛かる。馬車と馬に結界を張るのも忘れない。襲撃してこないように近隣のエリアにいるモンスターも殲滅しておく。
「ユール様ー、ノルンー、食事だよー」
あれよこれよと準備していたらだいぶ時間が経ったらしい。
「うわぁ!おいしそう!」
「自信あるからね。ユール様も食べますよね?」
「うん、食べる」
ユールが異次元から取り出した皿に、テオが料理をよそっていく。
「うんまー!チーズとろっとろだよ!」
「ん、おいしい」
野営とは思えない良い食事を食べつつ、談笑する三人。周囲の警戒も怠らない。
「ところで、ユール様だけギルドに加入してないって、変な感じよね」
雑談中にふと、ノルンがそんなことを言った。
「確かに。ユール様だけ冒険者登録をしてないとなると不便な時もあるな」
テオも便乗した。
「でも、私は10歳未満よ?」
「そこはどうにでもなりますわよ」
「ええ。最悪リーヴ公爵の身分をちらつかせばなんとかなりますよ」
ノルンとテオの言うことも納得できる。確かにユールだけ冒険者ギルドに加入していないから、緊急時に別行動を取らざるを得なくなるかもしれない。それは手間だし、安全性が低い。それを考えるとユールも冒険者ギルドに加入した方がいい。
「それにユール様は大人びていますから、10歳と言われても疑われませんよ」
「そうですよ。バレませんよ」
二人は私にギルドに入って欲しくて仕方がないようだ。
「じゃあスルトの街で登録してみる。できればいいけど、できなかったら諦めてね」
「「はい」」
こうしてスルトの街で冒険者ギルドに登録挑戦(?)することが決まり、見張りを順番に立てて一行は森の隅っこで夜を明かした。
次の日、昼前にスルトの街に到着した一行は、勧められた宿屋で宿を取り、冒険者ギルドに向かう。今度はちゃんと普通の宿屋である。高級宿屋も悪くないが、そう何度も高い金を払いたくないのだ。
「いらっしゃいませ、ご用件はなんでしょう?」
「登録をお願いします」
昼前だからそこそこ空いているギルドで、ユールはギルド登録に挑戦。
「ギルドの登録ですね。登録は10歳以上の方が対象となりますが、よろしいですか?」
「はい」
さて、怪しまれるか?
「わかりました。ではこちらの記入事項を埋めてください」
全く怪しむそぶりを見せず、受付嬢は用紙を渡してきた。ごまかせたらしい。
とりあえず名前だけ書いておいた。年齢は書いてしまうとあとでややこしくなりそうだったから。
「ありがとうございます。この内容で受け付けます」
ユールが書いた紙をそのまま持って行く受付嬢。年齢を記載していないけど、どうやらそれは珍しくないらしい。
説明をしようとした受付嬢の申し出を丁重にお断りし、黒いランクFのギルドカードを受け取る。
「案外ごまかせるのね」
「俺の言う通りだったでしょ」
ついでだから依頼を受けてみようとボードを見にいく。
三人がFランクとEランクの依頼ボードを見て受ける依頼を検討していると、突然ギルドに誰か入ってきた。
「緊急依頼だ!街道付近にソルジャーアントが大量発生している。数からしてクイーンアントがいると思われる!ランクは問わない、実力があれば誰でもいい、至急討伐を頼む!」
入ってきたギルド職員らしく人が早口でまくし立てた。
「数は?」
「少なくとも40匹以上はいるかと。成功報酬は白金貨6枚、働きによって追加報酬あり」
「でもランクBのクイーンアントが………」
「4、40………」
パーティ登録もしつつ話を聞いていると、実に面白い依頼を聞いた。
「だって」
「ソルジャーアントぐらいだったら100体いても問題ありませんよ」
「クイーンアントも俺たちが協力すれば問題ないでしょう」
ヒソヒソと相談すれば、全会一致でソルジャーアント討伐依頼を受けることになった。
「それではこれがランクFパーティ、"世界樹"のパーティ証明です。パーティリーダーがなくさずお持ちください」
「ありがとうございます。それとさっきのソルジャーアント討伐依頼を受けたいんですが」
「はい?」
ユールがそう切り出すと、受付嬢が間抜けな声をあげた。
「え?ソルジャーアント討伐ですか?無茶ですよ、皆さんはまだFランクなんですよ?しかも登録したてですよ?集団だとランクD相当のソルジャーアントをどうやって………」
「相応の実力があればいいのですよね?」
「そうですが………」
「なら大丈夫です。ここにいる全員、一人でナイトホースを仕留められる程度の実力はあります」
「ナイトホース!?」
ナイトホースとは名前の通り夜に活動する馬の魔物である。普通の馬を装って人に近づき、油断しているところを襲う、小賢しい魔物である。皮は使えるし、肉も美味しいので、野営をしている時などにかなりお世話になった魔物である。ランクはC。
「それで、依頼は受けられますよね?」
「え?あ、はい。ではこちらに署名してください。詳しくは後ろにいる職員が説明してくれます」
渡された用紙を記入し、ユールたちは入り口で数名の冒険者に囲まれている男性職員のところに向かった。
「すみません、こちらで説明を聞くように言われたのですが」
「え…?説明、ですか……?」
「はい」
男性職員だけでなく、周りいる冒険者たちも目を丸くしてこちらを見ている。
「えっと……それは依頼を受けたということですよね?」
「そうですね」
「大丈夫なんですか?」
「問題ありません。ナイトホースを仕留める程度の実力はあるので」
「…!?た、確かにそれなら大丈夫そうですね………」
ナイトホースの名前を出せば納得してもらえた。周りの冒険者は「ナイトホースだと!?」「あれ、確かランクCだよな?」「あれを討伐したのか!?」「若いのに有能だな」とかいろいろ言っている。
「えっと………ソルジャーアントはここから北部の街道に出没しています。近くに大きな森がありますので、おそらくそこに巣を作っているのではないかと思います。可能であればクイーンアントの討伐もお願いしたいですが、それが無理でも群れを半分以上削ってください」
「わかりました。では日暮れまでには戻りますので」
聞くことも聞いたので、さっさとソルジャーアント討伐依頼に向かう。
スルトの北門から出て、そこそこの距離まで進んで転移。ここはユールたちがくる時に通ってきた道なので、ソルジャーアントが目撃された森の場所もわかっている。
森まで転移した三人は早速森に入る。途中ゴブリンが何体かいたが、全て瞬殺して森を練り歩く。
「「ギギギギッ!」」
突然そんな声が聞こえた。ソルジャーアントのお出ましだ。
「来た。さっさと倒すよ」
「「はい!」」
「ふぅ、これで最後ですね」
死屍累々。そう表現するのにふさわしい光景の中、最後の剥ぎ取りを終えて、ノルンが一息つく。討伐証明である背中の突起と、素材となる触覚が60匹分積み上がっている。ソルジャーアントのほかインペリアルアントも多数いたのでクイーンアントもくるか?と思ったが、残念ながら現れなかった。
「時間は……ちょうど3時ぐらいですね。街に戻って報告しましょう」
テオの言葉に従い、剥ぎ取った部分を麻袋に詰め、森を逆戻りしていると、森を抜ける一歩手前で大きな悲鳴を聞いた。
「ぎゃああぁぁぁぁ!!痛い痛い痛いっ!!!」
「う、うわぁぁぁぁ!!!」
街道で誰かが何かに襲われているようだ。急いで森を抜けてみると、そこには商隊と思われる馬車が2台とその護衛らしき冒険者が5人、そしてそれを襲っているソルジャーアントとクイーンアント。
「「「クイーンアント、見つけた」」」
綺麗に声をハモらせて、ユールたちはクイーンアントに向かう。ノルンの衝撃波ファントムブロウが5、6匹のソルジャーアントを両断し、テオのスカイハリケーンが空を飛ぶインペリアルアントを地面に叩きつけ、ユールがすれ違いざまストーンバレットで頭を潰す。
馬車と冒険者の介護用にポーションを数個ノルンに渡して、ユールとテオはクイーンを潰しにいく。クイーンが吐き出した蟻酸をカウンターで弾き返して、クイーンが自分の蟻酸に怪我を負わされている間にそれぞれ次の魔法を準備する。
金髪の少女に介抱してもらった冒険者たちは、目の前の光景に驚きを隠せなかった。
ミミールから馬車の護衛依頼を受け、今日中にスルトに着けると思った矢先に、クイーンアント率いるアリの群れに襲われた。ランクCパーティの彼らであるが、数には勝てなかった。おまけにBランクのクイーンがいたからなおさらだ。
40匹近いソルジャーやインペリアル相手に善戦し、半分近く数を減らしたが、5人のうち一人がソルジャーたちに食われかけたところで防戦に入った。食われかけたやつは重傷で、残り4人で防御を保っていたが、一人がクイーンの蟻酸を食らって半身グロテスクになり、一人がインペリアルの毒を受けて次々と戦力を減っていく。
もうダメだ、と思った矢先、どこからともなく飛んできた衝撃波がソルジャーアントを5、6匹まとめて両断した。続いて空中に巻き起こった竜巻がインペリアルアントを巻き込んで地面に落とし、大粒の岩がインペリアルの頭を潰す。
魔法が飛んできた方向に目を向けると、そこには10歳ぐらいにしか見えない少年少女が3人いた。銀髪の少女がリーダーのようだ。
一言二言会話を交わし、少女たちは行動を起こす。黒髪の少年と銀髪の少女はクイーンに向かい、金髪の少女はこっちへ向かってきた。
「頼む!あっちの三人をなんとかしてくれ!」
やってきた少女に、リーダーであるシュラはそう言う。シュラとリュイ以外の3人は、全員が瀕死の重傷者だ。
「わかりました!」
金髪の少女は俺の要望に二つ返事で頷き、てててっと3人のところに走って行き、手に持っていたポーションと思われる液体を三人にかける。すると3人の怪我がみるみる治って行った。
そのすごすぎる回復効果に、シュラもリュイも驚愕した。こんなすごい回復薬は見たことがない。市販の回復薬はこの瀕死の怪我を治すことは断じてできない。それどころか最上級でなければ厳しいほどだ。なのにこの少女が使った回復薬は、1本しか使っていないのに3人分の怪我を直してみせた。
呆然としているシュラたちに、少女は薔薇の形をした小瓶を渡してきた。鮮やかな赤い入れ物の中にはさらさらした液体が入っている。少女曰く、お二人で飲んでください。
中身を半分ずつ飲む。最初に驚いたのはその味、次にその効果。世間一般で売られている回復薬は、回復効果は平凡な上、最高級でも非常にまずいことで有名だ。しかしこの回復薬は蜂蜜を薄めたような、甘くて飲みやすいものだった。
それに回復効果もすごい。見ていた時もすごいと思っていたが、自分で体験してみると改めてそのすごさに驚く。俺は戦闘であちこちに多くの怪我を負っていたが、それを飲むと傷口はキラキラ光りながら瞬時に治った。自分のあとに薬を飲んだリュイも、そのすごさに目を見開いている。
こんな美味しくて効果が高い回復薬など聞いたことがない。それどころかこの世に存在すらしてないのではないか?思わず金髪の少女の方を見ると、彼女は無属性の衝撃波を飛ばして近寄ってくるアリ軍団を粉砕していた。
その頃には他の二人の少年少女もクイーンアントと対峙していた。威嚇なのか、クイーンアントが口から蟻酸を放つ。危ない!と思うと、クイーンアントが放った蟻酸を、銀髪の少女は魔法でクイーンに弾き返す、という離れ業をやってのけた。カウンター魔法など、前代未聞である。挑戦しようとした人は多くいたが、みんな失敗していたのだ。それを成功させたというのか?
自分の放った蟻酸に焼かれてクイーンアントが断末魔をあげる。その隙に、少年がウィンドカッターを生み出す。その数20個以上。18歳以上の一般的な魔法使いでようやく15本ほどまでしか作れないのに、この少年は10歳と少しで大人をはるかに上回る魔法の腕を持っているようだ。隣にいる魔法使いのリュイも呆然としている。
少年が、作り出したウィンドカッターを次々にクイーンに投げつける。その早さと威力に二度驚愕する。王宮の魔法使いにも劣らないスピード、自分たちには傷をつけることすらできなかったクイーンの体に容赦なく切り傷を作っていく。
終盤数個のウィンドカッターはクイーンの頭上に向けて放たれた。それを回避するためか、クイーンが地面に伏せる。
そこに今度はクイーンの頭がある真下の地面から、長く鋭い土の槍が出現し、硬いことで有名なクイーンの頭をいとも簡単に貫いた。もはや驚きすぎて言葉も出ない。この少年少女たち、下手したら魔術師団長より強いんじゃないか?
戦闘時間わずか数分でクイーンアントを片付けた少年少女たちは、これまた秒殺で残党を始末していく。5分も満たないうちに、3人の子供はその場にいた全ての魔物を沈黙させた。
その末恐ろしい実力に恐怖したり感謝したりしたが、驚きはまだ終わらないらしい。頭を貫かれて絶命したクイーンを、銀髪の少女がアイテムボックスに収納したのだ。あんなでかいクイーンが入るアイテムボックスとか、本当にあの子たちは何者なのか。モンスターの剥ぎ取りをウィンドカッターでやる冒険者なんて見たことないぞ!
「ユール様、クイーンアントは収納できました?」
「全部入ったわ」
はたからみればアイテムボックスのように見える異次元収納を使って、ユールはクイーンアントを収納する。ソルジャーアントやインペリアルアントに関してはテオにウィンドカッターで必要な部分だけ切り取ってもらう。
ちなみにアイテムボックスとは収納魔法のことであるが、使える人は少ない上、容量もそこまで大きくないらしい。
テオに切り取ってもらった討伐証明も収納し、ノルンのところに戻る。
「あ、ユール様、おかえりー」
馬車まで行くと、ニコニコ顔のノルンが出迎えた。横には驚きを通り過ごして呆れ顔の冒険者が二人。重傷を負っていた三人も安定したようだ。
「大丈夫でしたか?」
ノルンのすぐ横にいた、リーダーっぽい人に話しかける。
「あ、ああ………助かったよ。本当にありがとう」
「いえ。ちょうど討伐対象でしたから」
「討伐対象?」
「ええ。本日昼頃の緊急依頼です」
ざっくりと説明する。
「そうか。改めて、助けてくれてありがとう。俺はシュラ。"風の手"のリーダーだ」
「ユールです。"世界樹"のリーダーです」
「聞かないパーティ名だね。でも君たち、強いね」
「聞かないのは当然ですね。まだランクFのパーティですから」
「「え」」
シュラさんの横にいた魔法使いの人も一緒に驚いた。
「F?君たちって、その強さでFなの?」
「はい。彼と彼女は三日前ですが、私は今日登録したばかりですから」
「今日!?」
「いよいよ規格外だな」
ぼそりと魔法使いの人がつぶやく。
「もう驚くのも疲れてきた……とにかく、援護と回復薬をありがとう。回復薬にはいくら払えば………」
「いらないですよ」
その後回復薬の代金について少しもめて、最終的には無料で落ち着いた。
「とりあえず、もう街に戻ろうか」
「そうですね」
商人たちに怪我もなく、馬車の損傷も少なかったからこのままスルトに戻ることになった。途中、気絶していた三人が目を覚まし、泣きながらお礼を言ってきたりしたが、スルトに戻った一行は、シュラさんたちとはギルド前で別れた。彼らの行き先は商業ギルドの方らしい。
「お待ちしていました!!」
ギルドに入るなり、アリ討伐を持ち込んできた職員さんが駆け寄ってきた。なんかすごい注目されてる。
「それで、どうでした?」
「確認したアントは全て討伐しました。クイーンアントもいたので倒しておきました」
ざわり!ざわざわ。
「え?クイーンアント?討伐してきたんですか?」
「ええ。解体はギルドでやっていただこうかと思って、アイテムボックスで持って帰ってきました」
ざわざわひそひそ。
ギロリ。
テオが一睨みすると、急速に静かになって行くギルド内。
「そ、そうですか。それでは倉庫に案内しますのでどうぞこちらに」
若干引きつった笑みを浮かべている男性のあとをついて倉庫に行く。テオは剥ぎ取った素材と討伐証明を精算に行った。
「ではここに出してください」
ドンッ!
突如倉庫に体長7mはありそうなクイーンアントが現れる。
「で、でかいですね……」
「解体、お願いできますか?」
「あ、はい。代理解体には金貨5枚が必要です」
「じゃあこれで。いつ頃終わりそうですか?」
「明朝には終わると思いますので、明日の午前中にきていただければお渡しできます。報酬金もその時でよろしいですか?」
「はい」
解体職人に指示を出し始めた男性に一礼し、ユールたちは倉庫を出る。ギルドでは買取を終わらせたテオが待っていた。買取値段を聞くと、討伐部位一つで銀貨5枚、全部で100あったから金貨50枚。それから素材の代金が金貨364枚だった。
「素材、全部売ってしまってよかったんですか?」
「ええ。アリの素材なんて冒険者以外使い道ないわ。クイーンアントの素材は全部戻してもらうつもりだし、魔石も全部こっちで持ってるから」
今、ユールは試したいことがあった。そのためにゴブリンやスライム以外の、そこそこランクの高い魔物の魔石を集めている。今回の買取に魔石がなかったのもこのためだ。
「ユール様がそういうなら大丈夫ですね。では宿に戻ってゆっくりしましょう」
「その途中では買い食いもして行きましょうよ!」
「買い食いね……私はあそこのパン屋さんの前に屋台がいいかな」
戦闘以外の時だけ10歳児の三人は、ギルドにいる人たちから微笑ましいような怯えるような微妙な視線を向けられつつ、買い食いをするために大通りに出るのだった。
「ユール様、次はどこに行くのですか?」
御者台にいるテオが聞いてきた。
「そうね………ミミールの南にあるスルトが一番近いかな?」
「了解。では次はスルトに向かいますね」
街道の分かれ道で左へ進むテオ。左の道がスルトへ続く街道だ。
「今日はここで休もう」
街道を半分ほど進んだところで日が暮れた。一行は街道を外れ、野営の準備を始める。
「テオ、今日は何を所望?」
「そうですね……チーズリゾットにします。えーっと、チーズと肉と牛乳と米をお願いします」
「わかった」
テオが所望した材料を異次元収納から取り出す。
テオが焚き火のところで料理をしている横で、ユールとノルンはテントの準備などに取り掛かる。馬車と馬に結界を張るのも忘れない。襲撃してこないように近隣のエリアにいるモンスターも殲滅しておく。
「ユール様ー、ノルンー、食事だよー」
あれよこれよと準備していたらだいぶ時間が経ったらしい。
「うわぁ!おいしそう!」
「自信あるからね。ユール様も食べますよね?」
「うん、食べる」
ユールが異次元から取り出した皿に、テオが料理をよそっていく。
「うんまー!チーズとろっとろだよ!」
「ん、おいしい」
野営とは思えない良い食事を食べつつ、談笑する三人。周囲の警戒も怠らない。
「ところで、ユール様だけギルドに加入してないって、変な感じよね」
雑談中にふと、ノルンがそんなことを言った。
「確かに。ユール様だけ冒険者登録をしてないとなると不便な時もあるな」
テオも便乗した。
「でも、私は10歳未満よ?」
「そこはどうにでもなりますわよ」
「ええ。最悪リーヴ公爵の身分をちらつかせばなんとかなりますよ」
ノルンとテオの言うことも納得できる。確かにユールだけ冒険者ギルドに加入していないから、緊急時に別行動を取らざるを得なくなるかもしれない。それは手間だし、安全性が低い。それを考えるとユールも冒険者ギルドに加入した方がいい。
「それにユール様は大人びていますから、10歳と言われても疑われませんよ」
「そうですよ。バレませんよ」
二人は私にギルドに入って欲しくて仕方がないようだ。
「じゃあスルトの街で登録してみる。できればいいけど、できなかったら諦めてね」
「「はい」」
こうしてスルトの街で冒険者ギルドに登録挑戦(?)することが決まり、見張りを順番に立てて一行は森の隅っこで夜を明かした。
次の日、昼前にスルトの街に到着した一行は、勧められた宿屋で宿を取り、冒険者ギルドに向かう。今度はちゃんと普通の宿屋である。高級宿屋も悪くないが、そう何度も高い金を払いたくないのだ。
「いらっしゃいませ、ご用件はなんでしょう?」
「登録をお願いします」
昼前だからそこそこ空いているギルドで、ユールはギルド登録に挑戦。
「ギルドの登録ですね。登録は10歳以上の方が対象となりますが、よろしいですか?」
「はい」
さて、怪しまれるか?
「わかりました。ではこちらの記入事項を埋めてください」
全く怪しむそぶりを見せず、受付嬢は用紙を渡してきた。ごまかせたらしい。
とりあえず名前だけ書いておいた。年齢は書いてしまうとあとでややこしくなりそうだったから。
「ありがとうございます。この内容で受け付けます」
ユールが書いた紙をそのまま持って行く受付嬢。年齢を記載していないけど、どうやらそれは珍しくないらしい。
説明をしようとした受付嬢の申し出を丁重にお断りし、黒いランクFのギルドカードを受け取る。
「案外ごまかせるのね」
「俺の言う通りだったでしょ」
ついでだから依頼を受けてみようとボードを見にいく。
三人がFランクとEランクの依頼ボードを見て受ける依頼を検討していると、突然ギルドに誰か入ってきた。
「緊急依頼だ!街道付近にソルジャーアントが大量発生している。数からしてクイーンアントがいると思われる!ランクは問わない、実力があれば誰でもいい、至急討伐を頼む!」
入ってきたギルド職員らしく人が早口でまくし立てた。
「数は?」
「少なくとも40匹以上はいるかと。成功報酬は白金貨6枚、働きによって追加報酬あり」
「でもランクBのクイーンアントが………」
「4、40………」
パーティ登録もしつつ話を聞いていると、実に面白い依頼を聞いた。
「だって」
「ソルジャーアントぐらいだったら100体いても問題ありませんよ」
「クイーンアントも俺たちが協力すれば問題ないでしょう」
ヒソヒソと相談すれば、全会一致でソルジャーアント討伐依頼を受けることになった。
「それではこれがランクFパーティ、"世界樹"のパーティ証明です。パーティリーダーがなくさずお持ちください」
「ありがとうございます。それとさっきのソルジャーアント討伐依頼を受けたいんですが」
「はい?」
ユールがそう切り出すと、受付嬢が間抜けな声をあげた。
「え?ソルジャーアント討伐ですか?無茶ですよ、皆さんはまだFランクなんですよ?しかも登録したてですよ?集団だとランクD相当のソルジャーアントをどうやって………」
「相応の実力があればいいのですよね?」
「そうですが………」
「なら大丈夫です。ここにいる全員、一人でナイトホースを仕留められる程度の実力はあります」
「ナイトホース!?」
ナイトホースとは名前の通り夜に活動する馬の魔物である。普通の馬を装って人に近づき、油断しているところを襲う、小賢しい魔物である。皮は使えるし、肉も美味しいので、野営をしている時などにかなりお世話になった魔物である。ランクはC。
「それで、依頼は受けられますよね?」
「え?あ、はい。ではこちらに署名してください。詳しくは後ろにいる職員が説明してくれます」
渡された用紙を記入し、ユールたちは入り口で数名の冒険者に囲まれている男性職員のところに向かった。
「すみません、こちらで説明を聞くように言われたのですが」
「え…?説明、ですか……?」
「はい」
男性職員だけでなく、周りいる冒険者たちも目を丸くしてこちらを見ている。
「えっと……それは依頼を受けたということですよね?」
「そうですね」
「大丈夫なんですか?」
「問題ありません。ナイトホースを仕留める程度の実力はあるので」
「…!?た、確かにそれなら大丈夫そうですね………」
ナイトホースの名前を出せば納得してもらえた。周りの冒険者は「ナイトホースだと!?」「あれ、確かランクCだよな?」「あれを討伐したのか!?」「若いのに有能だな」とかいろいろ言っている。
「えっと………ソルジャーアントはここから北部の街道に出没しています。近くに大きな森がありますので、おそらくそこに巣を作っているのではないかと思います。可能であればクイーンアントの討伐もお願いしたいですが、それが無理でも群れを半分以上削ってください」
「わかりました。では日暮れまでには戻りますので」
聞くことも聞いたので、さっさとソルジャーアント討伐依頼に向かう。
スルトの北門から出て、そこそこの距離まで進んで転移。ここはユールたちがくる時に通ってきた道なので、ソルジャーアントが目撃された森の場所もわかっている。
森まで転移した三人は早速森に入る。途中ゴブリンが何体かいたが、全て瞬殺して森を練り歩く。
「「ギギギギッ!」」
突然そんな声が聞こえた。ソルジャーアントのお出ましだ。
「来た。さっさと倒すよ」
「「はい!」」
「ふぅ、これで最後ですね」
死屍累々。そう表現するのにふさわしい光景の中、最後の剥ぎ取りを終えて、ノルンが一息つく。討伐証明である背中の突起と、素材となる触覚が60匹分積み上がっている。ソルジャーアントのほかインペリアルアントも多数いたのでクイーンアントもくるか?と思ったが、残念ながら現れなかった。
「時間は……ちょうど3時ぐらいですね。街に戻って報告しましょう」
テオの言葉に従い、剥ぎ取った部分を麻袋に詰め、森を逆戻りしていると、森を抜ける一歩手前で大きな悲鳴を聞いた。
「ぎゃああぁぁぁぁ!!痛い痛い痛いっ!!!」
「う、うわぁぁぁぁ!!!」
街道で誰かが何かに襲われているようだ。急いで森を抜けてみると、そこには商隊と思われる馬車が2台とその護衛らしき冒険者が5人、そしてそれを襲っているソルジャーアントとクイーンアント。
「「「クイーンアント、見つけた」」」
綺麗に声をハモらせて、ユールたちはクイーンアントに向かう。ノルンの衝撃波ファントムブロウが5、6匹のソルジャーアントを両断し、テオのスカイハリケーンが空を飛ぶインペリアルアントを地面に叩きつけ、ユールがすれ違いざまストーンバレットで頭を潰す。
馬車と冒険者の介護用にポーションを数個ノルンに渡して、ユールとテオはクイーンを潰しにいく。クイーンが吐き出した蟻酸をカウンターで弾き返して、クイーンが自分の蟻酸に怪我を負わされている間にそれぞれ次の魔法を準備する。
金髪の少女に介抱してもらった冒険者たちは、目の前の光景に驚きを隠せなかった。
ミミールから馬車の護衛依頼を受け、今日中にスルトに着けると思った矢先に、クイーンアント率いるアリの群れに襲われた。ランクCパーティの彼らであるが、数には勝てなかった。おまけにBランクのクイーンがいたからなおさらだ。
40匹近いソルジャーやインペリアル相手に善戦し、半分近く数を減らしたが、5人のうち一人がソルジャーたちに食われかけたところで防戦に入った。食われかけたやつは重傷で、残り4人で防御を保っていたが、一人がクイーンの蟻酸を食らって半身グロテスクになり、一人がインペリアルの毒を受けて次々と戦力を減っていく。
もうダメだ、と思った矢先、どこからともなく飛んできた衝撃波がソルジャーアントを5、6匹まとめて両断した。続いて空中に巻き起こった竜巻がインペリアルアントを巻き込んで地面に落とし、大粒の岩がインペリアルの頭を潰す。
魔法が飛んできた方向に目を向けると、そこには10歳ぐらいにしか見えない少年少女が3人いた。銀髪の少女がリーダーのようだ。
一言二言会話を交わし、少女たちは行動を起こす。黒髪の少年と銀髪の少女はクイーンに向かい、金髪の少女はこっちへ向かってきた。
「頼む!あっちの三人をなんとかしてくれ!」
やってきた少女に、リーダーであるシュラはそう言う。シュラとリュイ以外の3人は、全員が瀕死の重傷者だ。
「わかりました!」
金髪の少女は俺の要望に二つ返事で頷き、てててっと3人のところに走って行き、手に持っていたポーションと思われる液体を三人にかける。すると3人の怪我がみるみる治って行った。
そのすごすぎる回復効果に、シュラもリュイも驚愕した。こんなすごい回復薬は見たことがない。市販の回復薬はこの瀕死の怪我を治すことは断じてできない。それどころか最上級でなければ厳しいほどだ。なのにこの少女が使った回復薬は、1本しか使っていないのに3人分の怪我を直してみせた。
呆然としているシュラたちに、少女は薔薇の形をした小瓶を渡してきた。鮮やかな赤い入れ物の中にはさらさらした液体が入っている。少女曰く、お二人で飲んでください。
中身を半分ずつ飲む。最初に驚いたのはその味、次にその効果。世間一般で売られている回復薬は、回復効果は平凡な上、最高級でも非常にまずいことで有名だ。しかしこの回復薬は蜂蜜を薄めたような、甘くて飲みやすいものだった。
それに回復効果もすごい。見ていた時もすごいと思っていたが、自分で体験してみると改めてそのすごさに驚く。俺は戦闘であちこちに多くの怪我を負っていたが、それを飲むと傷口はキラキラ光りながら瞬時に治った。自分のあとに薬を飲んだリュイも、そのすごさに目を見開いている。
こんな美味しくて効果が高い回復薬など聞いたことがない。それどころかこの世に存在すらしてないのではないか?思わず金髪の少女の方を見ると、彼女は無属性の衝撃波を飛ばして近寄ってくるアリ軍団を粉砕していた。
その頃には他の二人の少年少女もクイーンアントと対峙していた。威嚇なのか、クイーンアントが口から蟻酸を放つ。危ない!と思うと、クイーンアントが放った蟻酸を、銀髪の少女は魔法でクイーンに弾き返す、という離れ業をやってのけた。カウンター魔法など、前代未聞である。挑戦しようとした人は多くいたが、みんな失敗していたのだ。それを成功させたというのか?
自分の放った蟻酸に焼かれてクイーンアントが断末魔をあげる。その隙に、少年がウィンドカッターを生み出す。その数20個以上。18歳以上の一般的な魔法使いでようやく15本ほどまでしか作れないのに、この少年は10歳と少しで大人をはるかに上回る魔法の腕を持っているようだ。隣にいる魔法使いのリュイも呆然としている。
少年が、作り出したウィンドカッターを次々にクイーンに投げつける。その早さと威力に二度驚愕する。王宮の魔法使いにも劣らないスピード、自分たちには傷をつけることすらできなかったクイーンの体に容赦なく切り傷を作っていく。
終盤数個のウィンドカッターはクイーンの頭上に向けて放たれた。それを回避するためか、クイーンが地面に伏せる。
そこに今度はクイーンの頭がある真下の地面から、長く鋭い土の槍が出現し、硬いことで有名なクイーンの頭をいとも簡単に貫いた。もはや驚きすぎて言葉も出ない。この少年少女たち、下手したら魔術師団長より強いんじゃないか?
戦闘時間わずか数分でクイーンアントを片付けた少年少女たちは、これまた秒殺で残党を始末していく。5分も満たないうちに、3人の子供はその場にいた全ての魔物を沈黙させた。
その末恐ろしい実力に恐怖したり感謝したりしたが、驚きはまだ終わらないらしい。頭を貫かれて絶命したクイーンを、銀髪の少女がアイテムボックスに収納したのだ。あんなでかいクイーンが入るアイテムボックスとか、本当にあの子たちは何者なのか。モンスターの剥ぎ取りをウィンドカッターでやる冒険者なんて見たことないぞ!
「ユール様、クイーンアントは収納できました?」
「全部入ったわ」
はたからみればアイテムボックスのように見える異次元収納を使って、ユールはクイーンアントを収納する。ソルジャーアントやインペリアルアントに関してはテオにウィンドカッターで必要な部分だけ切り取ってもらう。
ちなみにアイテムボックスとは収納魔法のことであるが、使える人は少ない上、容量もそこまで大きくないらしい。
テオに切り取ってもらった討伐証明も収納し、ノルンのところに戻る。
「あ、ユール様、おかえりー」
馬車まで行くと、ニコニコ顔のノルンが出迎えた。横には驚きを通り過ごして呆れ顔の冒険者が二人。重傷を負っていた三人も安定したようだ。
「大丈夫でしたか?」
ノルンのすぐ横にいた、リーダーっぽい人に話しかける。
「あ、ああ………助かったよ。本当にありがとう」
「いえ。ちょうど討伐対象でしたから」
「討伐対象?」
「ええ。本日昼頃の緊急依頼です」
ざっくりと説明する。
「そうか。改めて、助けてくれてありがとう。俺はシュラ。"風の手"のリーダーだ」
「ユールです。"世界樹"のリーダーです」
「聞かないパーティ名だね。でも君たち、強いね」
「聞かないのは当然ですね。まだランクFのパーティですから」
「「え」」
シュラさんの横にいた魔法使いの人も一緒に驚いた。
「F?君たちって、その強さでFなの?」
「はい。彼と彼女は三日前ですが、私は今日登録したばかりですから」
「今日!?」
「いよいよ規格外だな」
ぼそりと魔法使いの人がつぶやく。
「もう驚くのも疲れてきた……とにかく、援護と回復薬をありがとう。回復薬にはいくら払えば………」
「いらないですよ」
その後回復薬の代金について少しもめて、最終的には無料で落ち着いた。
「とりあえず、もう街に戻ろうか」
「そうですね」
商人たちに怪我もなく、馬車の損傷も少なかったからこのままスルトに戻ることになった。途中、気絶していた三人が目を覚まし、泣きながらお礼を言ってきたりしたが、スルトに戻った一行は、シュラさんたちとはギルド前で別れた。彼らの行き先は商業ギルドの方らしい。
「お待ちしていました!!」
ギルドに入るなり、アリ討伐を持ち込んできた職員さんが駆け寄ってきた。なんかすごい注目されてる。
「それで、どうでした?」
「確認したアントは全て討伐しました。クイーンアントもいたので倒しておきました」
ざわり!ざわざわ。
「え?クイーンアント?討伐してきたんですか?」
「ええ。解体はギルドでやっていただこうかと思って、アイテムボックスで持って帰ってきました」
ざわざわひそひそ。
ギロリ。
テオが一睨みすると、急速に静かになって行くギルド内。
「そ、そうですか。それでは倉庫に案内しますのでどうぞこちらに」
若干引きつった笑みを浮かべている男性のあとをついて倉庫に行く。テオは剥ぎ取った素材と討伐証明を精算に行った。
「ではここに出してください」
ドンッ!
突如倉庫に体長7mはありそうなクイーンアントが現れる。
「で、でかいですね……」
「解体、お願いできますか?」
「あ、はい。代理解体には金貨5枚が必要です」
「じゃあこれで。いつ頃終わりそうですか?」
「明朝には終わると思いますので、明日の午前中にきていただければお渡しできます。報酬金もその時でよろしいですか?」
「はい」
解体職人に指示を出し始めた男性に一礼し、ユールたちは倉庫を出る。ギルドでは買取を終わらせたテオが待っていた。買取値段を聞くと、討伐部位一つで銀貨5枚、全部で100あったから金貨50枚。それから素材の代金が金貨364枚だった。
「素材、全部売ってしまってよかったんですか?」
「ええ。アリの素材なんて冒険者以外使い道ないわ。クイーンアントの素材は全部戻してもらうつもりだし、魔石も全部こっちで持ってるから」
今、ユールは試したいことがあった。そのためにゴブリンやスライム以外の、そこそこランクの高い魔物の魔石を集めている。今回の買取に魔石がなかったのもこのためだ。
「ユール様がそういうなら大丈夫ですね。では宿に戻ってゆっくりしましょう」
「その途中では買い食いもして行きましょうよ!」
「買い食いね……私はあそこのパン屋さんの前に屋台がいいかな」
戦闘以外の時だけ10歳児の三人は、ギルドにいる人たちから微笑ましいような怯えるような微妙な視線を向けられつつ、買い食いをするために大通りに出るのだった。
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