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エピローグ
エピローグ 【完結】
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邪神のいる廃神社に行ってから、一週間後。
十月に入り、やっと秋らしくなってきた。制服も衣替えで長袖になった。
翔陽のケガは後遺症が残るようなものではなかったが、まだ左腕は包帯が巻かれていた。
「アカリ、見ろよ見ろよ、おれたちのチャンネル、スゲー再生数伸びてる!」
翔陽がスマートフォンの画面を向けて来る。
「もう何度も見たよう」
動画は一か所につき前後編に分かれていて、現在八回投稿されている。全てに恐怖指数が五段階で評価されていた。
一番多い再生数の動画は、五十万再生を超えていた。翔陽は着々と、念願の人気ユーチューバーに近づいているようだ。
八回の投稿とは、ひとりかくれんぼ、黄泉トンネル、髪切り屋敷、そして廃神社。
動画にしないと言っておいて、京四郎はちゃっかり、廃神社にカメラを仕込んでいた。
(もう、なにも言うまい……。キチクの京四郎くんだもんね)
その京四郎も心霊スポットMAPが更新できて、ほくほくとした顔をしている。
「見てくれたまえ、ひと月で四カ所制覇だ。このペースでどんどん行こう」
京四郎は、ご自慢の大きなMAPを翔陽の机に広げた。行った場所には、魂の形をした赤いシールが貼ってある。
「さて、次の場所だが……」
「ストップ! わたしは抜けるからね」
「えっ、なぜだい?」
京四郎は心底驚いたような顔をする。
「何回、死にかけたと思ってるの⁉」
同じことを何度言わせる気だろうか。
「さすがに、邪神を相手にするのはまずかった。今後は、そういう場所は避けよう」
「普通の幽霊だって危なかったでしょ!」
「でもアカリ、その邪神に『また会おう』とか言われてたよな。名前を覚えられてたし」
翔陽の指摘に、アカリは真っ青になった。
(わたし、なんであの時、名乗っちゃったの⁉)
アカリは頭を抱えた。
それに、別れ際の邪神の表情も忘れられなかった。
元土地神は、望んで邪神になったわけではないのだろう。
(できれば、元に戻してあげたいけど……)
そんなことができるのだろうか。
「邪神に狙われているのなら、ぼくらと心霊スポット巡りをするなんて、かわいいものじゃないか」
京四郎がニッコリとほほ笑む。
邪神に目をつけられるキッカケを作ったのは、あなたなんですけど! と声を大にして言いたい。
「アカリがいないと、心霊現象が起きないかもしれないじゃん。再生数も回ってきたし、次もいっしょに行こうぜ」
翔陽に手を握られそうになって、アカリはパッと立ち上がって避けた。
「もう、その手にはのらないからねっ」
「あら、次の心霊スポットの相談? 私も混ぜて」
後ろから冴子に抱きしめられた。ショートカットの冴子も見慣れてきた。
「……もしかして冴子ちゃん、前向きな感じですか?」
アカリはなぜか敬語になった。
「ええ。心霊現象の前では無力で、知らなかった感情が引き出される。もっと自分を知りたいの。それに、せっかく寺の娘に生まれたのだから、除霊アイテムを作ることにしたのよ。仲間の役に立ちたいと思って」
「素晴らしいね、冴子くん!」
京四郎が感嘆の声をあげた。
「うまく行きそうなアイテムもあるの。お披露目を楽しみにしていて。熱中できるって楽しいことだったのね」
何事にも夢中になれず、感情も動かないことがコンプレックスだった冴子も、この心霊スポット巡りで変化があったようだ。
アカリだって、この心霊スポット巡りに付き合っていたおかげで、亡くなった祖母に会え、暗闇恐怖症を克服できたのだ。悪いことばかりではなかった。
――なかったが。
「アカリ、頼りにしているからな。おれのユーチューバー作戦は、おまえにかかっている!」
「ぼくらと心霊スポット巡りをしているうちに、邪神の弱点がわかるかもしれないよ」
「私たち、仲間でしょ。これからも力を合わせましょうね」
三人三様に口説かれて、アカリはううっとうめいた。
「わたしは、怖くない毎日を送りたいの!」
アカリの平和な日常は、まだ先のようだ。
おわり
十月に入り、やっと秋らしくなってきた。制服も衣替えで長袖になった。
翔陽のケガは後遺症が残るようなものではなかったが、まだ左腕は包帯が巻かれていた。
「アカリ、見ろよ見ろよ、おれたちのチャンネル、スゲー再生数伸びてる!」
翔陽がスマートフォンの画面を向けて来る。
「もう何度も見たよう」
動画は一か所につき前後編に分かれていて、現在八回投稿されている。全てに恐怖指数が五段階で評価されていた。
一番多い再生数の動画は、五十万再生を超えていた。翔陽は着々と、念願の人気ユーチューバーに近づいているようだ。
八回の投稿とは、ひとりかくれんぼ、黄泉トンネル、髪切り屋敷、そして廃神社。
動画にしないと言っておいて、京四郎はちゃっかり、廃神社にカメラを仕込んでいた。
(もう、なにも言うまい……。キチクの京四郎くんだもんね)
その京四郎も心霊スポットMAPが更新できて、ほくほくとした顔をしている。
「見てくれたまえ、ひと月で四カ所制覇だ。このペースでどんどん行こう」
京四郎は、ご自慢の大きなMAPを翔陽の机に広げた。行った場所には、魂の形をした赤いシールが貼ってある。
「さて、次の場所だが……」
「ストップ! わたしは抜けるからね」
「えっ、なぜだい?」
京四郎は心底驚いたような顔をする。
「何回、死にかけたと思ってるの⁉」
同じことを何度言わせる気だろうか。
「さすがに、邪神を相手にするのはまずかった。今後は、そういう場所は避けよう」
「普通の幽霊だって危なかったでしょ!」
「でもアカリ、その邪神に『また会おう』とか言われてたよな。名前を覚えられてたし」
翔陽の指摘に、アカリは真っ青になった。
(わたし、なんであの時、名乗っちゃったの⁉)
アカリは頭を抱えた。
それに、別れ際の邪神の表情も忘れられなかった。
元土地神は、望んで邪神になったわけではないのだろう。
(できれば、元に戻してあげたいけど……)
そんなことができるのだろうか。
「邪神に狙われているのなら、ぼくらと心霊スポット巡りをするなんて、かわいいものじゃないか」
京四郎がニッコリとほほ笑む。
邪神に目をつけられるキッカケを作ったのは、あなたなんですけど! と声を大にして言いたい。
「アカリがいないと、心霊現象が起きないかもしれないじゃん。再生数も回ってきたし、次もいっしょに行こうぜ」
翔陽に手を握られそうになって、アカリはパッと立ち上がって避けた。
「もう、その手にはのらないからねっ」
「あら、次の心霊スポットの相談? 私も混ぜて」
後ろから冴子に抱きしめられた。ショートカットの冴子も見慣れてきた。
「……もしかして冴子ちゃん、前向きな感じですか?」
アカリはなぜか敬語になった。
「ええ。心霊現象の前では無力で、知らなかった感情が引き出される。もっと自分を知りたいの。それに、せっかく寺の娘に生まれたのだから、除霊アイテムを作ることにしたのよ。仲間の役に立ちたいと思って」
「素晴らしいね、冴子くん!」
京四郎が感嘆の声をあげた。
「うまく行きそうなアイテムもあるの。お披露目を楽しみにしていて。熱中できるって楽しいことだったのね」
何事にも夢中になれず、感情も動かないことがコンプレックスだった冴子も、この心霊スポット巡りで変化があったようだ。
アカリだって、この心霊スポット巡りに付き合っていたおかげで、亡くなった祖母に会え、暗闇恐怖症を克服できたのだ。悪いことばかりではなかった。
――なかったが。
「アカリ、頼りにしているからな。おれのユーチューバー作戦は、おまえにかかっている!」
「ぼくらと心霊スポット巡りをしているうちに、邪神の弱点がわかるかもしれないよ」
「私たち、仲間でしょ。これからも力を合わせましょうね」
三人三様に口説かれて、アカリはううっとうめいた。
「わたしは、怖くない毎日を送りたいの!」
アカリの平和な日常は、まだ先のようだ。
おわり
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非常に筆力が高く、テンポも良かったのであっという間に読めた。さすが大賞作品といったところか。
それぞれのキャラクターが非常に魅力的であり、少年時代に主観視点で戻って楽しめる要素がある。単なる児童文学を超えて、大人も安心して楽しめる素晴らしい作品だった。
コメントありがとうございます✨ うれしすぎるご感想、感謝です!
励みになります💖
アカリたちのキャラクターがいいですね。恐怖指数のアイデアも面白いです。続きを楽しみにしていますね。
コメントありがとうございます✨ 励みになります(≧∀≦*)
月末に完結します。よろしくおねがいします!
会話のテンポが良くて読みやすい作品ですね。臨場感があって、とても素敵な作品だと思います。
コメントありがとうございます✨
嬉しいです❤ これからも頑張ります💪