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5 神の怒り【恐怖指数 ★★★★★】
神の怒り【恐怖指数 ★★★★★】 1
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アカリたちは、よく話し合った。
赤髪の霊を専門家に任せるべきか、どうか。
赤髪の霊の正体を調べ、今までの経験から、対抗する方法を考えた。
そして、勝算があると判断した。
なにより、四人全員が、挑戦したいと思ったのだ。
九月末。
雨が降りそうな、厚い雲に覆われた夜だった。
アカリ、翔陽、冴子は、目的地に向かって歩いていた。
「いざとなったら、やっぱり緊張するね」
「相手は、神さまだからなあ」
アカリと翔陽は、硬い表情で視線を合わせた。
――赤髪の正体は、土地神だった。
“赤髪の和装の霊”は、廃れた神社で多く目撃されていた。
今回は動画配信をせず、純粋に「悪霊のボス」を倒すことを目的にすると決めた。
それならば安全を第一に考えて、四人で昼間、目的の廃神社に行った。
廃神社の状況を知ることはできたが、うわさの「赤髪の男の霊」は現れなかった。
だから仕方がなく、目撃証言の多い夜に出直すことにしたのだ。
《この神社は、土地神をまつる、由緒ある神社だった》
ヘッドセットから、別行動をしている京四郎の声が聞こえてきた。雑音もするので、少々声が聞き取りづらい。
京四郎の話は一度聞いているので、アカリたちが神社に着くまで、おさらいの解説をするのかもしれない。一つ目の鳥居から神社まで、長い階段があって時間がかかるのだ。
《しかし、強盗に襲われた。お賽銭だけではなく、本殿に入ってご神体まで盗もうとしたようだ。近くに住んでいた宮司夫婦が気づき、強盗を捕まえようとして、殺されてしまった。ついてきた夫婦の子供も殺された。これは実際に起きた事件だ》
五十年ほど前のことで、当時は騒ぎになった。
《本殿は血の海になったそうだ。赤い髪の霊が現れるようになったのは、それからだ》
うわさを集めていくと、赤い髪の霊は、キツネを連れていた、というものもあった。
この神社は、稲荷神社だ。キツネは神の使者なのだ。
《死や血は、けがれだという考えがある。ご神体も血で染まり、けがれ、荒振(あらぶる)神(かみ)、つまり邪神や悪神といわれる邪悪な神になってしまったのかもしれない。髪は宮司たちの血の色に染まったのかもしれないな》
(神さまは怒って、我を忘れているのかもしれない。謝ったら、元に戻ってくれるよね)
邪神と聞くとまがまがしいが、元々は土地を守ってくれていた神なのだ。
《さらに調べると、この神社を撤去しようとすると、それに関わった人たちがみんな悪いことが起きて、工事が進まなかったそうだ。何度もおはらいが行われたが、効果はなかった。もう誰も引き受けたがらず、放置されているんだ》
この話を聞いて、アカリは怖い気持ちを押しやって、廃神社に来ることにした。
専門家は既におはらいをしていた。このまま放置され続けるくらいなら、自分たちで神をしずめられたらと考えたのだ。
(昼間来た時、神社の本殿の中がグチャグチャなのが見えた。体の中が真っ黒に染まるような、すごくイヤな感じがした)
《最近、この辺りに心霊現象が増えたのは、この神社にいる邪神が悪さをしている可能性が高い。本殿はしめ縄で囲まれていたが、その一部が切られていた。断面はまだ新しかった。誰かのイタズラだと思われる。それで封印されていた邪神が動き出したのかもしれない》
このしめ縄の修理は京四郎が発注済みだった。ただ、儀式をする日取りや材料の調達やらに時間がかかり、すぐには直せないものらしい。
「神さま、出てきてくれるかな」
「出てくるまで通うしかないな。でも準備が大掛かりだから、今日で方(かた)をつけたいところだ」
そうなのだ、大掛かりなのだ。
安全第一と言った京四郎の言葉に、いつわりはなかった。
赤髪の霊を専門家に任せるべきか、どうか。
赤髪の霊の正体を調べ、今までの経験から、対抗する方法を考えた。
そして、勝算があると判断した。
なにより、四人全員が、挑戦したいと思ったのだ。
九月末。
雨が降りそうな、厚い雲に覆われた夜だった。
アカリ、翔陽、冴子は、目的地に向かって歩いていた。
「いざとなったら、やっぱり緊張するね」
「相手は、神さまだからなあ」
アカリと翔陽は、硬い表情で視線を合わせた。
――赤髪の正体は、土地神だった。
“赤髪の和装の霊”は、廃れた神社で多く目撃されていた。
今回は動画配信をせず、純粋に「悪霊のボス」を倒すことを目的にすると決めた。
それならば安全を第一に考えて、四人で昼間、目的の廃神社に行った。
廃神社の状況を知ることはできたが、うわさの「赤髪の男の霊」は現れなかった。
だから仕方がなく、目撃証言の多い夜に出直すことにしたのだ。
《この神社は、土地神をまつる、由緒ある神社だった》
ヘッドセットから、別行動をしている京四郎の声が聞こえてきた。雑音もするので、少々声が聞き取りづらい。
京四郎の話は一度聞いているので、アカリたちが神社に着くまで、おさらいの解説をするのかもしれない。一つ目の鳥居から神社まで、長い階段があって時間がかかるのだ。
《しかし、強盗に襲われた。お賽銭だけではなく、本殿に入ってご神体まで盗もうとしたようだ。近くに住んでいた宮司夫婦が気づき、強盗を捕まえようとして、殺されてしまった。ついてきた夫婦の子供も殺された。これは実際に起きた事件だ》
五十年ほど前のことで、当時は騒ぎになった。
《本殿は血の海になったそうだ。赤い髪の霊が現れるようになったのは、それからだ》
うわさを集めていくと、赤い髪の霊は、キツネを連れていた、というものもあった。
この神社は、稲荷神社だ。キツネは神の使者なのだ。
《死や血は、けがれだという考えがある。ご神体も血で染まり、けがれ、荒振(あらぶる)神(かみ)、つまり邪神や悪神といわれる邪悪な神になってしまったのかもしれない。髪は宮司たちの血の色に染まったのかもしれないな》
(神さまは怒って、我を忘れているのかもしれない。謝ったら、元に戻ってくれるよね)
邪神と聞くとまがまがしいが、元々は土地を守ってくれていた神なのだ。
《さらに調べると、この神社を撤去しようとすると、それに関わった人たちがみんな悪いことが起きて、工事が進まなかったそうだ。何度もおはらいが行われたが、効果はなかった。もう誰も引き受けたがらず、放置されているんだ》
この話を聞いて、アカリは怖い気持ちを押しやって、廃神社に来ることにした。
専門家は既におはらいをしていた。このまま放置され続けるくらいなら、自分たちで神をしずめられたらと考えたのだ。
(昼間来た時、神社の本殿の中がグチャグチャなのが見えた。体の中が真っ黒に染まるような、すごくイヤな感じがした)
《最近、この辺りに心霊現象が増えたのは、この神社にいる邪神が悪さをしている可能性が高い。本殿はしめ縄で囲まれていたが、その一部が切られていた。断面はまだ新しかった。誰かのイタズラだと思われる。それで封印されていた邪神が動き出したのかもしれない》
このしめ縄の修理は京四郎が発注済みだった。ただ、儀式をする日取りや材料の調達やらに時間がかかり、すぐには直せないものらしい。
「神さま、出てきてくれるかな」
「出てくるまで通うしかないな。でも準備が大掛かりだから、今日で方(かた)をつけたいところだ」
そうなのだ、大掛かりなのだ。
安全第一と言った京四郎の言葉に、いつわりはなかった。
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