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3 神隠し~死者と会えるトンネル~【恐怖指数 ☆☆★★★】
神隠し~死者と会えるトンネル~【恐怖指数 ☆☆★★★】 6
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(こわい、誰か助けて! おばあちゃん助けて!)
地蔵の前でアカリは祈った。
すると、目の前がぼうっと白くなり、小さく丸い背中が見えた。その次の瞬間、辺りが真っ白になる。まぶしくて、アカリは手をかざして光を遮った。
目を開けると、霊たちの動きが止まっていた。口からなにかをボトリと吐き出して、霊が消える。他の霊も同じようにして消えていく。
ボトボトボトと落ちるそれは、爪が伸びた大人の男性の指のようだった。
霊はいなくなり、やがて、その指も消えた。
アカリの目の前にいた白い影が振り返った。
「おばあちゃん……」
涙がこみ上げた。忘れもしない、大好きだったアカリの祖母だった。
「おばあちゃん!」
アカリは祖母に抱きついて泣いた。
「よしよし、怖かったね。もっと早く来てあげられなくて、ごめんね」
祖母はしわの刻まれた柔らかい手で、アカリの頭をなでた。
霊に追いかけられて恐ろしい思いをしたこと。祖母が助けてくれたこと。祖母に久しぶりに会えたこと。
すべての感情があふれだし、アカリは泣くことしかできなかった。
「アカリに、ずっと言いたいことがあったんだよ」
祖母の声に、アカリは顔を上げた。顔じゅうが汗と涙でぬれている。その顔を、祖母はハンカチで拭ってくれた。
「あの葬式の日、驚かせてごめんね。あれから、暗いところが怖くなっちゃったね」
アカリは首を振る。
「わたしこそ、せっかくおばあちゃんが会いに来てくれたのに、怖がっちゃってごめんね。ずっと謝りたかったんだよ」
またアカリの大きな瞳に涙が浮かんだ。祖母は優しくほほ笑んで、アカリの涙を拭った。
「これからおばあちゃんが、暗闇が怖くなくなるおまじないをしてあげるからね」
祖母はアカリの頭に手をのせる。
「怖いの怖いの、飛んでいけ~」
思わずアカリは笑ってしまった。
「それはケガしたときのおまじないでしょ」
「あら、ちゃんと効くのよ。暗闇が怖いの、飛んでいけ~、飛んでいけ~」
その声を聞いていると、本当に暗闇が怖くなくなっていく気がした。
「おばあちゃん、ありがとう。大好き」
祖母をぎゅっと抱きしめた。
「暗い場所が怖くなったら、おばあちゃんを思い出してね。いつもアカリを見守っているから」
「うん」
ぬくもりに包まれたアカリは、安心して目を閉じた。
「……カリ、……アカリ!」
(どこからか、声がする……)
「アカリ! こんなところで、なにやってんだよ!」
肩を揺らされて、アカリは目を開けた。目の前に翔陽がいる。
「翔ちゃん。そんな怖い顔をして、どうしたの?」
「はあ? ふざけてんのかよ、地蔵なんかに抱きついて」
「お地蔵さまって、……えっ!」
アカリは横穴の地蔵を抱きしめていた。
「あれ? おばあちゃんは?」
「寝ぼけてんのか? つか、今までどこにいたのか話せよ。オーイ、アカリを見つけたぞ!」
後半はトンネルに向かって翔陽は叫んだ。トンネル内で足音を反響させながら、すぐに京四郎と冴子が駆けつける。
「無事でよかった! ずっと探してたのよ」
「そろそろ警察に連絡しようと話していたところだ」
冴子に抱きつかれ、京四郎はホッとしつつも疲れたというような顔をしている。
「そんな、探してたのはわたしのほうなのに……」
とにかくトンネルを出ようということになり、京四郎が待機していた場所に戻る。
(機材も、自転車もある……)
アカリは狐につままれた気分になった。
地蔵の前でアカリは祈った。
すると、目の前がぼうっと白くなり、小さく丸い背中が見えた。その次の瞬間、辺りが真っ白になる。まぶしくて、アカリは手をかざして光を遮った。
目を開けると、霊たちの動きが止まっていた。口からなにかをボトリと吐き出して、霊が消える。他の霊も同じようにして消えていく。
ボトボトボトと落ちるそれは、爪が伸びた大人の男性の指のようだった。
霊はいなくなり、やがて、その指も消えた。
アカリの目の前にいた白い影が振り返った。
「おばあちゃん……」
涙がこみ上げた。忘れもしない、大好きだったアカリの祖母だった。
「おばあちゃん!」
アカリは祖母に抱きついて泣いた。
「よしよし、怖かったね。もっと早く来てあげられなくて、ごめんね」
祖母はしわの刻まれた柔らかい手で、アカリの頭をなでた。
霊に追いかけられて恐ろしい思いをしたこと。祖母が助けてくれたこと。祖母に久しぶりに会えたこと。
すべての感情があふれだし、アカリは泣くことしかできなかった。
「アカリに、ずっと言いたいことがあったんだよ」
祖母の声に、アカリは顔を上げた。顔じゅうが汗と涙でぬれている。その顔を、祖母はハンカチで拭ってくれた。
「あの葬式の日、驚かせてごめんね。あれから、暗いところが怖くなっちゃったね」
アカリは首を振る。
「わたしこそ、せっかくおばあちゃんが会いに来てくれたのに、怖がっちゃってごめんね。ずっと謝りたかったんだよ」
またアカリの大きな瞳に涙が浮かんだ。祖母は優しくほほ笑んで、アカリの涙を拭った。
「これからおばあちゃんが、暗闇が怖くなくなるおまじないをしてあげるからね」
祖母はアカリの頭に手をのせる。
「怖いの怖いの、飛んでいけ~」
思わずアカリは笑ってしまった。
「それはケガしたときのおまじないでしょ」
「あら、ちゃんと効くのよ。暗闇が怖いの、飛んでいけ~、飛んでいけ~」
その声を聞いていると、本当に暗闇が怖くなくなっていく気がした。
「おばあちゃん、ありがとう。大好き」
祖母をぎゅっと抱きしめた。
「暗い場所が怖くなったら、おばあちゃんを思い出してね。いつもアカリを見守っているから」
「うん」
ぬくもりに包まれたアカリは、安心して目を閉じた。
「……カリ、……アカリ!」
(どこからか、声がする……)
「アカリ! こんなところで、なにやってんだよ!」
肩を揺らされて、アカリは目を開けた。目の前に翔陽がいる。
「翔ちゃん。そんな怖い顔をして、どうしたの?」
「はあ? ふざけてんのかよ、地蔵なんかに抱きついて」
「お地蔵さまって、……えっ!」
アカリは横穴の地蔵を抱きしめていた。
「あれ? おばあちゃんは?」
「寝ぼけてんのか? つか、今までどこにいたのか話せよ。オーイ、アカリを見つけたぞ!」
後半はトンネルに向かって翔陽は叫んだ。トンネル内で足音を反響させながら、すぐに京四郎と冴子が駆けつける。
「無事でよかった! ずっと探してたのよ」
「そろそろ警察に連絡しようと話していたところだ」
冴子に抱きつかれ、京四郎はホッとしつつも疲れたというような顔をしている。
「そんな、探してたのはわたしのほうなのに……」
とにかくトンネルを出ようということになり、京四郎が待機していた場所に戻る。
(機材も、自転車もある……)
アカリは狐につままれた気分になった。
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