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3章 掴み取った真実、そして――

掴み取った真実、そして―― 13

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「わかりました。とことんつきあいますから、一人で行動するのだけはやめてください」
 紫子さんは俺を見上げた。その表情は強がっているようでもあり、俺に感謝しているようでもあった。
 紫子さんの視線が、俺の後ろにあるガラス戸棚に移った。
「あのカメラが、お父さんの形見?」
「そうです。ニコンD1」
「見てもいい?」
「もちろん」
 そういえば、俺も紫子さんのコンパクトデジタルカメラを見せてもらおうと思っていたんだ。
 俺たちは形見のカメラを交換した。
 俺は手の平に銀色のカメラをのせた。十五年も前の型なので、最近のものと比べて、大きさの割に重い。
 このコンパクトデジタルカメラは、お父さんが亡くなる前に、わざわざ社長宛てに郵送されたと聞いている。メッセージもなにもついていなかったということは、急いでいたのではないか。
(このコンデジには、必ず社長への、紫子さんへのメッセージが込められているはずだ)
 まずは表面を観察する。変わった傷も細工もないようだ。電池を取り出したり、レンズを開いたりしたが、おかしなところはなかった。
 紫子さんたちも一通りチェックしたと言っていたし、警察にも届けているのだから、こんなところに不審な点があったらとっくに気づいているだろう。
 ではやはり、写真になにか写っているのか。
 俺は液晶画面に写真を映した。六歳くらいの女の子のバストアップが表示される。ふっくらとした頬はマシュマロのように柔らかそうで、垂れ気味のクリクリとした大きな瞳は光の粒子を受けて輝いている。
 この少女が紫子さんだろう。今でも面影がある。
 俺の体温が急上昇し、思わず手で口元を押さえた。
(可愛すぎる!)
 強烈な破壊力だった。
 生半可な言葉では表現できない。「天使のようだ」なんてありきたりな言葉でも足りない。なにに例えればいいのかわからない。
 あまりにも可愛い子供時代の紫子さんに悩殺されつつ、写真を確認していく。
 その他の写真も、ひたすら紫子さんが写っていた。文化祭、運動会という学校行事から、ひな祭り、クリスマス、誕生日というイベントまで。おそらく父親だろうが、撮影者の愛情が伝わってきた。
 すべて確認したが、写真の内容からも日付からも、紫子さんの父親の死と関連しそうなものは見つからなかった。
 写真の順番に意味があるのか。何か写りこんでいないか。手掛かりになるような写真が混ざっていないか。合成写真があるんじゃないか。
 そんな目でもう一度見たが、ひっかかるものはない。
(画面が小さすぎて、見逃してるのかな)
 俺はパソコンにつなぐことにした。
「あっ」
 コンパクトデジタルカメラとパソコンをUSBケーブルで接続したとき、閃いた。
 そうだ。コンパクトデジタルカメラ自体が、大容量のメモリーの役割になるじゃないか。
 ここに、音声ファイルが入っているのではないか。
 俺は緊張しながらディレクトリを確認する。
 ファイルは、「CLIPINF」「DCIM」「Readme」の三つ。
(やっぱり!)
 明らかにおかしなものがある。
 ――「Readme」だ。
 コンパクトデジタルカメラ内に、こんなファイルがあるのを見たことがなかった。
 俺ははやる気持ちを抑えながら、慎重にマウスを動かした」

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