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告白 二
告白 二 その3
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謎が解けたのは、高校の卒業式だった。
高校二年生に付き合ったクラスメイトが、話があると一年以上ぶりに声をかけてきたのだ。そこで、思わぬ告白を受けた。
陽菜乃と付き合っている頃、桜子からアプローチを受けたという。初めは揺るがなかった彼だが、あの美貌を誇る桜子に何度も求められたら、流されてしまいたくもなるだろう。
結局、桜子に言われるがままに陽菜乃と別れた。するとすぐに桜子は彼に興味を失ったように、メールの返事がなくなり、電話も出なくなった。そうして自然消滅したという。
「俺は本当に陽菜乃が好きだった。一時の感情に流されたことを後悔してる。そんな自分を、俺自身も許せない。だから、よりを戻したいと言いたいんじゃないんだ。お詫び代わりというわけじゃないけど、このことを陽菜乃に伝えた方がいいと思って」
別れた後も、彼は陽菜乃が気になってよく目で追っていた。だから高校三年の時に、陽菜乃が同じ部活の男子生徒に恋をしたことも、なんとなくわかっていた。
いい感じにもなってきたので、幸せになってくれたらいいと見守っていたが、その部活の生徒に桜子が近づいていった。その二人が付き合っているのを知り、陽菜乃が男を諦めると、桜子もあっさりと身を引いた。
自分の時と同じだと思った。
「どう考えても、陽菜乃に恋人を作らせないよう行動しているようにしか見えない。彼女とはつき合わない方がいいと思うけど、それは陽菜乃が判断することだ」
彼は陽菜乃にそう忠告して立ち去った。
その言葉を、陽菜乃はどう受け止めていいかわからなかった。ただ、彼の言ったことは全て真実だろうと感じていた。
だとすれば、中学生で三日も学校を休むほど心に傷を受けたのは、桜子のせいだということになる。献身的に尽くしてくれて感謝したが、ただのマッチポンプだったのだ。
骨格がしっかりしていて背が高く、あまり女性扱いされなかった陽菜乃。だからこそ、誰よりも王子様が迎えに来てくれるのを心待ちにしていた。そんな陽菜乃の青春を踏みにじったのは、お姫様のように美しい幼なじみだった。
「つき合わない方がいいと言われても、同じ大学なんですけど」
陽菜乃は額を押さえながら校門に向かった。すると桜子が陽菜乃を見つけて駆け寄ってきた。
「陽菜乃! よかった、どこに行っちゃったのかと思ったよ。この後、時間ある? 二人だけで祝賀会しよ」
「……いいよ」
断った方がいい。距離を置いた方がいい。
わかっていても桜子の頼みは断れない。子供の頃からの刷り込みだ。
「やったっ。陽菜乃、大好き!」
桜子は腕をからめてきた。同じ女性であるはずの自分と全く違う、軽やかで柔らかい体が密着する。ふわりといい匂いが鼻をかすめた。
「触らないで」
陽菜乃は桜子の腕を振り払った。桜子は驚いて動きを止める。
「最近、腕が痛くって」
「そうなんだ、ごめんね。行こう陽菜乃」
桜子はにっこりと笑う。
いとおしくて、同じくらい憎らしい。
桜子はそんな存在だ。
このままずるずると桜子といるのだろうか。
それは恐怖で……。
――どこか甘美だった。
同じ大学に入学したものの、桜子とは学部が別で、しかも今まで以上にバイトを入れているようなので、高校時代ほど一緒にいる時間は多くなかった。
しかし陽菜乃が大学の奇術愛好会に入会すると、桜子も当たり前のようについてきた。桜子には内緒にしておきたかったが、そう上手くはいかないものだ。
卒業式で受けた忠告はとりあえず棚上げにしていたのだが、向き合わなければならない事態に直面した。
陽菜乃は奇術愛好会で、小野寺龍之介に一目ぼれしてしまったのだ。
桜子との関係は、概ね良好だ。
桜子が悪魔に変貌するのは、陽菜乃が恋をしたときなのだから。
高校二年生に付き合ったクラスメイトが、話があると一年以上ぶりに声をかけてきたのだ。そこで、思わぬ告白を受けた。
陽菜乃と付き合っている頃、桜子からアプローチを受けたという。初めは揺るがなかった彼だが、あの美貌を誇る桜子に何度も求められたら、流されてしまいたくもなるだろう。
結局、桜子に言われるがままに陽菜乃と別れた。するとすぐに桜子は彼に興味を失ったように、メールの返事がなくなり、電話も出なくなった。そうして自然消滅したという。
「俺は本当に陽菜乃が好きだった。一時の感情に流されたことを後悔してる。そんな自分を、俺自身も許せない。だから、よりを戻したいと言いたいんじゃないんだ。お詫び代わりというわけじゃないけど、このことを陽菜乃に伝えた方がいいと思って」
別れた後も、彼は陽菜乃が気になってよく目で追っていた。だから高校三年の時に、陽菜乃が同じ部活の男子生徒に恋をしたことも、なんとなくわかっていた。
いい感じにもなってきたので、幸せになってくれたらいいと見守っていたが、その部活の生徒に桜子が近づいていった。その二人が付き合っているのを知り、陽菜乃が男を諦めると、桜子もあっさりと身を引いた。
自分の時と同じだと思った。
「どう考えても、陽菜乃に恋人を作らせないよう行動しているようにしか見えない。彼女とはつき合わない方がいいと思うけど、それは陽菜乃が判断することだ」
彼は陽菜乃にそう忠告して立ち去った。
その言葉を、陽菜乃はどう受け止めていいかわからなかった。ただ、彼の言ったことは全て真実だろうと感じていた。
だとすれば、中学生で三日も学校を休むほど心に傷を受けたのは、桜子のせいだということになる。献身的に尽くしてくれて感謝したが、ただのマッチポンプだったのだ。
骨格がしっかりしていて背が高く、あまり女性扱いされなかった陽菜乃。だからこそ、誰よりも王子様が迎えに来てくれるのを心待ちにしていた。そんな陽菜乃の青春を踏みにじったのは、お姫様のように美しい幼なじみだった。
「つき合わない方がいいと言われても、同じ大学なんですけど」
陽菜乃は額を押さえながら校門に向かった。すると桜子が陽菜乃を見つけて駆け寄ってきた。
「陽菜乃! よかった、どこに行っちゃったのかと思ったよ。この後、時間ある? 二人だけで祝賀会しよ」
「……いいよ」
断った方がいい。距離を置いた方がいい。
わかっていても桜子の頼みは断れない。子供の頃からの刷り込みだ。
「やったっ。陽菜乃、大好き!」
桜子は腕をからめてきた。同じ女性であるはずの自分と全く違う、軽やかで柔らかい体が密着する。ふわりといい匂いが鼻をかすめた。
「触らないで」
陽菜乃は桜子の腕を振り払った。桜子は驚いて動きを止める。
「最近、腕が痛くって」
「そうなんだ、ごめんね。行こう陽菜乃」
桜子はにっこりと笑う。
いとおしくて、同じくらい憎らしい。
桜子はそんな存在だ。
このままずるずると桜子といるのだろうか。
それは恐怖で……。
――どこか甘美だった。
同じ大学に入学したものの、桜子とは学部が別で、しかも今まで以上にバイトを入れているようなので、高校時代ほど一緒にいる時間は多くなかった。
しかし陽菜乃が大学の奇術愛好会に入会すると、桜子も当たり前のようについてきた。桜子には内緒にしておきたかったが、そう上手くはいかないものだ。
卒業式で受けた忠告はとりあえず棚上げにしていたのだが、向き合わなければならない事態に直面した。
陽菜乃は奇術愛好会で、小野寺龍之介に一目ぼれしてしまったのだ。
桜子との関係は、概ね良好だ。
桜子が悪魔に変貌するのは、陽菜乃が恋をしたときなのだから。
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