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告白 二
告白 二 その2
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自分のなにが悪かったのかも、全く心当たりがなかった。
どんなに泣いてすがっても、彼の気持ちは変わらなかった。
陽菜乃はショックで、三日間学校を休んだ。
その間、励ましてくれたのは桜子だった。
初日は一人にしてほしいと言って、桜子が来ても部屋に入れなかった。しかし、部屋の外に桜子がいて、返事をしない陽菜乃にずっと語りかけていた。
二日目、桜子の根気に折れて部屋に入れた。悲しんだり、憤ったり、八つ当たりをしたりする陽菜乃を、桜子は優しく包んだ。
三日目、二人で街に出かけた。随分と気が晴れた。
桜子もこの三日間学校を休んで、陽菜乃を元気づけたのだ。
こうして四日目には陽菜乃は学校に登校できるようになった。
桜子に感謝した。今まで距離を取っていたが、このときからまた登下校を共にするようになった。
同性の友達と一緒にいる方が気が楽だと思った。受験も控えていたので、しばらく恋人はいらないと陽菜乃は思った。
その後、高校も桜子と同じになった。正確にいうと、桜子が陽菜乃に学校を合わせたのだ。
桜子は華奢な身体に女性らしさをまとわせて、更に美しくなっていた。こうなってくると陽菜乃は、自分だっていけてるのに、と比べるのがバカらしくなった。
私服をパンツルックに統一していた陽菜乃が桜子と並んで街を歩いていると、十センチの身長差もあって、よくカップルと間違われた。
一度ファッション雑誌の編集者に声をかけられて、カップルで写真を撮らせてほしいと頼まれた。その編集者は完全に陽菜乃を男性だと勘違いしていた。
断ろうとした陽菜乃の手を引っ張り、「記念になるから撮ってもらおう」と桜子は陽菜乃を説得した。桜子があまりにも熱心なので、まあいいかと陽菜乃も承諾することにした。
編集者にいわれるがまま、数ポーズの写真を撮られた。
後日後に送られてきた雑誌には、ほぼ一ページ丸々使った、陽菜乃と桜子の全身写真が載っていた。はにかむように笑いながら抱き合っている写真だ。さすがにこれは恥ずかしくて、二度とその雑誌を開いていない。
高校二年のとき、桜子が近所から引っ越した。桜子は親の仕事の都合だと言っていた。
それと同時に、桜子は一緒に入っていたバドミントン部を辞めて、授業が終わるとすぐに帰るようになった。なにをしているのかと聞くと、見聞を広めるためにバイトを始めたと言っていた。
部活や登下校が桜子と一緒ではなくなったことで、友達が増えた。いつも桜子とばかり過ごしていたので、他のクラスメイトやチームメイトと話す機会が極端に少なかった。
そうしているうちに、高校生活初の恋人ができた。あまり話したことがないクラスメイトだったが、告白されるのは嬉しく、また断るほど嫌なところもなかったので、付き合うことにしたのだ。
一緒に過ごすようになると話が合い、気配りが行き届いていて、陽菜乃のしてほしいことを先回りしてやってくれるような人だった。また褒め上手で、陽菜乃が失いかけていた自尊心も取り戻すことができた。
なんとなくで付き合い始めた彼だったが、陽菜乃は彼を本気で好きになった。
そんな頃、彼から距離をとられはじめた。
一緒に過ごす時間が少なくなり、そしてしばらくすると、別れを切り出された。陽菜乃が理由を聞いても答えてもらえなかった。
ここでも励ましてくれたのは、クラスや部活が違っても一緒にお昼を食べていた桜子だ。友達は大事だと身に染みた。
高校三年生になると、陽菜乃に好きな人ができた。同じバドミントン部の同級生だ。積極的に話しかけるようになって、おそらく相手も自分のことが好きであろうと確信し、告白しようと思った矢先に、その彼は桜子と付き合っていた。
そんな偶然があるだろうかと、目の前が真っ暗になった。桜子には「好きな人がいる」とだけ伝えていて、誰とまでは言っていなかった。
陽菜乃は告白する前に失恋してしまった。
今まで陽菜乃を慰めてくれていた桜子の恋なので、陰ながら応援しようと気持ちを切り替えた。
付き合って一、二か月目といえば、人目も気にせずいちゃつきたくなる時期だと思うが、どうも桜子からはそんな印象を受けなかった。恋人がいるという報告は受けたが、のろけも特になかった。
恋人がいる時の陽菜乃は、かなり桜子にのろけていた。もしかしてそれが嫌だったので遠慮しているのだろうか。そう思った陽菜乃は、「自慢話でもなんでも聞くよ」と伝えたが、「そんなのないよ」と桜子は笑っていた。
控えめな桜子らしいとは思ったが、それでも、恋人ができたとき特有のキラキラした気配が感じられず、違和感を抱いていた。
謎が解けたのは、高校の卒業式だった。
どんなに泣いてすがっても、彼の気持ちは変わらなかった。
陽菜乃はショックで、三日間学校を休んだ。
その間、励ましてくれたのは桜子だった。
初日は一人にしてほしいと言って、桜子が来ても部屋に入れなかった。しかし、部屋の外に桜子がいて、返事をしない陽菜乃にずっと語りかけていた。
二日目、桜子の根気に折れて部屋に入れた。悲しんだり、憤ったり、八つ当たりをしたりする陽菜乃を、桜子は優しく包んだ。
三日目、二人で街に出かけた。随分と気が晴れた。
桜子もこの三日間学校を休んで、陽菜乃を元気づけたのだ。
こうして四日目には陽菜乃は学校に登校できるようになった。
桜子に感謝した。今まで距離を取っていたが、このときからまた登下校を共にするようになった。
同性の友達と一緒にいる方が気が楽だと思った。受験も控えていたので、しばらく恋人はいらないと陽菜乃は思った。
その後、高校も桜子と同じになった。正確にいうと、桜子が陽菜乃に学校を合わせたのだ。
桜子は華奢な身体に女性らしさをまとわせて、更に美しくなっていた。こうなってくると陽菜乃は、自分だっていけてるのに、と比べるのがバカらしくなった。
私服をパンツルックに統一していた陽菜乃が桜子と並んで街を歩いていると、十センチの身長差もあって、よくカップルと間違われた。
一度ファッション雑誌の編集者に声をかけられて、カップルで写真を撮らせてほしいと頼まれた。その編集者は完全に陽菜乃を男性だと勘違いしていた。
断ろうとした陽菜乃の手を引っ張り、「記念になるから撮ってもらおう」と桜子は陽菜乃を説得した。桜子があまりにも熱心なので、まあいいかと陽菜乃も承諾することにした。
編集者にいわれるがまま、数ポーズの写真を撮られた。
後日後に送られてきた雑誌には、ほぼ一ページ丸々使った、陽菜乃と桜子の全身写真が載っていた。はにかむように笑いながら抱き合っている写真だ。さすがにこれは恥ずかしくて、二度とその雑誌を開いていない。
高校二年のとき、桜子が近所から引っ越した。桜子は親の仕事の都合だと言っていた。
それと同時に、桜子は一緒に入っていたバドミントン部を辞めて、授業が終わるとすぐに帰るようになった。なにをしているのかと聞くと、見聞を広めるためにバイトを始めたと言っていた。
部活や登下校が桜子と一緒ではなくなったことで、友達が増えた。いつも桜子とばかり過ごしていたので、他のクラスメイトやチームメイトと話す機会が極端に少なかった。
そうしているうちに、高校生活初の恋人ができた。あまり話したことがないクラスメイトだったが、告白されるのは嬉しく、また断るほど嫌なところもなかったので、付き合うことにしたのだ。
一緒に過ごすようになると話が合い、気配りが行き届いていて、陽菜乃のしてほしいことを先回りしてやってくれるような人だった。また褒め上手で、陽菜乃が失いかけていた自尊心も取り戻すことができた。
なんとなくで付き合い始めた彼だったが、陽菜乃は彼を本気で好きになった。
そんな頃、彼から距離をとられはじめた。
一緒に過ごす時間が少なくなり、そしてしばらくすると、別れを切り出された。陽菜乃が理由を聞いても答えてもらえなかった。
ここでも励ましてくれたのは、クラスや部活が違っても一緒にお昼を食べていた桜子だ。友達は大事だと身に染みた。
高校三年生になると、陽菜乃に好きな人ができた。同じバドミントン部の同級生だ。積極的に話しかけるようになって、おそらく相手も自分のことが好きであろうと確信し、告白しようと思った矢先に、その彼は桜子と付き合っていた。
そんな偶然があるだろうかと、目の前が真っ暗になった。桜子には「好きな人がいる」とだけ伝えていて、誰とまでは言っていなかった。
陽菜乃は告白する前に失恋してしまった。
今まで陽菜乃を慰めてくれていた桜子の恋なので、陰ながら応援しようと気持ちを切り替えた。
付き合って一、二か月目といえば、人目も気にせずいちゃつきたくなる時期だと思うが、どうも桜子からはそんな印象を受けなかった。恋人がいるという報告は受けたが、のろけも特になかった。
恋人がいる時の陽菜乃は、かなり桜子にのろけていた。もしかしてそれが嫌だったので遠慮しているのだろうか。そう思った陽菜乃は、「自慢話でもなんでも聞くよ」と伝えたが、「そんなのないよ」と桜子は笑っていた。
控えめな桜子らしいとは思ったが、それでも、恋人ができたとき特有のキラキラした気配が感じられず、違和感を抱いていた。
謎が解けたのは、高校の卒業式だった。
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