Oil & Water~サークル合宿の悲劇~

じゅん

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告白 一

告白 一 その4

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 翌朝、桜子が姿を消していた。
 桜子の携帯は繋がらなかった。メンバーは手分けして桜子を探したが、敷地のどこにもいなかった。荷物もなくなっていることから、緊急で帰ったのだろうという話になった。もちろん、行きに乗ってきた車は二台とも停まっていたので、携帯で知り合いでも呼びつけたのだろう。
 そんな流れに、龍之介は納得できなかった。
 合宿中に無断で姿を消すほど桜子はいい加減な人間ではない。しかも、昨夜付き合うことになったばかりの龍之介に、なにも言わないなんてあり得ない。
 桜子の親や警察にも連絡をした。事件性があるかが焦点となったが、ここで桜子が親に内緒でキャバクラで働いていたことが裏目に出た。
 桜子に入れあげている客も多かったようで、店の客と駆け落ちのような状態で姿を消したのだろう、というのが有力な説になった。桜子が住んでいたマンションの連帯保証人も客だった。
 ただし、その客は親切で連帯保証人になっただけで、部屋を訪れたこともなければ、桜子の恋人でもないと言っている。
 龍之介が警察に、自分と付き合ったばかりだからいなくなるはずがないと伝えても、桜子に入れあげていた客と同じ扱いになるだけだった。
 母親が捜索願を出さなかったこともあり、桜子は家出扱いになり、事件性はないと判断された。
サークルメンバーたちにも警察からその話をされて、きっと遠くで恋人と幸せに暮らしているのだろう、ということで話がついた。桜子が、この合宿が終わったら遠くに行く、と言っていたことも、姿を消したことと辻褄が合ってしまったのだ。
 龍之介の想像だが、サークルメンバーたちだって、桜子が合宿中に無断でいなくなるのはおかしいと思っているはずだ。しかし、事件に巻き込まれたくないという保身から、何事もなかったことにしたかったのではないか。
もちろん、サークルメンバーが悪さをしているはずがない、という信頼もあったのかもしれない。

 山奥の別荘まで、深夜に車で呼びつけることができる知人が桜子にいたとは思えなかった。それに、もし桜子が荷物と共に川に落ちたのだとしたら、下流で見つからないわけがない。
だとすれば、別荘から立ち去っていないのではないか。
 つまり、今でも桜子は屋敷の中にいるはずなのだ。
 あの夜、桜子はサークルメンバーの誰かに、なにかをされた。
 龍之介はそう考えた。
 龍之介は度々別荘を借りては、隅々まで一人で捜索した。しかし、桜子は見つからなかった。
それから一年過ぎても、龍之介は諦めなかった。
この屋敷には、隠し部屋があるはずだ。そう確信していた。
オーナーに尋ねたが、赤字らしいこの貸別荘について無関心で、ほとんど知らなかった。持ち主が転々としていたため、建設者にたどり着くこともできなかった。
――それから二年。
大学三年生になっていた龍之介は、大掛かりな罠を張ることにした。
サークルメンバーを貸別荘に閉じ込めて、極限状態を作るのだ。

 サークルメンバーは、桜子が失踪してから一度も合宿をしていなかった。どこかに後ろめたい気持ちがあるのだろう。誰も提案しなかったのだ。
 そこで龍之介は、そろそろどうだと、同期生の六人を誘った。前回の合宿から、桜子を除いたメンバーだ。
 この計画は、女性の悲鳴を聞いた後にすぐ訪ね、シロ確定しているクリスとキャロルに協力を頼んでいた。もう合宿は……と渋るメンバーもいたが、クリスとキャロルの働きかけもあり、予定通り七人で行くことになった。
 合宿先は、偽りの場所を伝えていた。房総半島にある前回の屋敷だと伝えてしまうと、知らないうちにターゲットに先手を打たれてしまう可能性がある。
当日、クリスにはカーナビゲーションに住所を登録せず、龍之介の運転する車についてきてほしいと伝えておいた。予定の合宿所とは別の場所に向かっていることを、ギリギリまでメンバーに気づかせないためだ。
 到着後、事前情報と場所が違うではないかと不満の声が上がったが、予定の宿泊先が急遽キャンセルされて仕方がなかったと伝えた。
 別荘は二年前と基本的に変わらず不便で、龍之介の計画としては都合がいいのだが、基地局ができてしまって、携帯の電波が入るようになってしまった。
そこで携帯電話ジャマーという、携帯電話やGPS電波などをジャミングして操作不能にする装置を、屋敷のいくつかの場所に仕込んでおいた。スマートフォンを使われて、外部と通信できてしまっては計画が台無しだ。
 龍之介は当初、ジャマーのオン・オフを切り替えてキャロルやクリスとだけ携帯で連絡を取ろうとしたのだが、和樹に携帯が使えることに気付きそうになったため、途中から古典的な光での信号で合図をするように切り替えた。

* * *

「二人が生きていることに驚いているようだな」
 龍之介が、クリスとキャロルの後ろから前に進み出た。
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