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8 思いがけない再会
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全身の力が空っぽになったように、わたしはその場にくずれた。
「スズ香、だいじょうぶかよ」
龍司がわたしを支えながら、そっと地面に座らせてくれた。
「わかんない。いろいろ、ありすぎちゃって……」
体に力が入らないし、頭も真っ白でなにも考えられない。
「ちょっと休んでから帰ろう。スズ香は大活躍だったからね」
カヲルがとなりに座って、ハンカチでわたしの涙を拭ってくれる。
「スズ香ちゃんってあんな風にも泣くんだって、びっくりしたよ。クラスではあまり感情を出さずに、いつも静かに本を読んでいたからね」
悠一郎くんもわたしの向かいに座った。
「一番驚いたのは、スズ香が空を飛んだことだけどね!」
そう言った麗子ちゃんは、悠一郎くんのとなりに座った。
「おれはショックだったぞ。おまえは、一人だと思ってたんだって」
龍司は目尻の上がった瞳を伏せて、くちびるをかんだ。
「あたしも。すいぶん仲良くなったと思ってたのにさ」
カヲルはすねたような顔で、指先でわたしの頬をつついた。
「ごめん、そういうつもりじゃ、なかったんだけど……」
ずっと待っていたお父さんとお母さんと会えて、もう二度と離れたくなくて。それで……。
「わかってるけどさ」
はあ、と龍司はため息をついた。
「おまえのオヤジさんを越えなきゃいけないのか。もっとスズ香に会いに行かないとな。クラスが違うのがネックだよな」
「えっ」
どういう脈絡で、お父さんを越えるって話になってるんだろう。
それに、じゅうぶん龍司は押しかけてきてるから、これ以上来られても困る。
「あたしも、もっとスズ香をかわいがってあげないとね」
カヲルがわたしの頬をつつきながら、流し目を送ってくる。女の子同士なのに、なんだか、ドギマギしてしまった。
「ぼくは同じクラスだから、スズ香ちゃんが一人にならないように目を配るね」
悠一郎くんは普通の提案でよかった。
「あたしもそうする!」
悠一郎くんに密着できて、ご機嫌な麗子ちゃんはそう言った。
麗子ちゃんは、今日みたいなオソロシイ企画さえ思いつかなければ、それでいいよ!
《スズ香、オレたちのことも忘れるなよ》
《毎日一緒にいるのに、イヤになっちゃうわ》
すねる神使たちに、わたしは「ごめん」と手を合わせた。
コンゴウとシロガネに関しては、家族だと思ってるんだから。さっきのは、本当に言葉のアヤだったんだようっ。
本当に、なんであんなこと言っちゃったんだろうね。
わたしはぜんぜん、一人じゃなかった!
からっぽになっていた体が、温かいもので満たされた。
「みんな、ありがとう。遅くなりすぎないうちに家に帰ろう!」
わたしは立ち上がった。
でも、急に立ち上がったせいで、頭がクラリとしてふらついてしまう。
「スズ香!」
となりに座っていた龍司とカヲルが同時に立ち上がって、両サイドから支えてくれた。
「だいじょうぶかよ」
「急に立ち上がったら危ないよ」
「うん。エヘヘ。ありがとう」
――わたしは、幸せものだな。
イヤな幽霊の気配がなくなった森の坂を、わたしたちはゆっくり下っていった。
「スズ香、だいじょうぶかよ」
龍司がわたしを支えながら、そっと地面に座らせてくれた。
「わかんない。いろいろ、ありすぎちゃって……」
体に力が入らないし、頭も真っ白でなにも考えられない。
「ちょっと休んでから帰ろう。スズ香は大活躍だったからね」
カヲルがとなりに座って、ハンカチでわたしの涙を拭ってくれる。
「スズ香ちゃんってあんな風にも泣くんだって、びっくりしたよ。クラスではあまり感情を出さずに、いつも静かに本を読んでいたからね」
悠一郎くんもわたしの向かいに座った。
「一番驚いたのは、スズ香が空を飛んだことだけどね!」
そう言った麗子ちゃんは、悠一郎くんのとなりに座った。
「おれはショックだったぞ。おまえは、一人だと思ってたんだって」
龍司は目尻の上がった瞳を伏せて、くちびるをかんだ。
「あたしも。すいぶん仲良くなったと思ってたのにさ」
カヲルはすねたような顔で、指先でわたしの頬をつついた。
「ごめん、そういうつもりじゃ、なかったんだけど……」
ずっと待っていたお父さんとお母さんと会えて、もう二度と離れたくなくて。それで……。
「わかってるけどさ」
はあ、と龍司はため息をついた。
「おまえのオヤジさんを越えなきゃいけないのか。もっとスズ香に会いに行かないとな。クラスが違うのがネックだよな」
「えっ」
どういう脈絡で、お父さんを越えるって話になってるんだろう。
それに、じゅうぶん龍司は押しかけてきてるから、これ以上来られても困る。
「あたしも、もっとスズ香をかわいがってあげないとね」
カヲルがわたしの頬をつつきながら、流し目を送ってくる。女の子同士なのに、なんだか、ドギマギしてしまった。
「ぼくは同じクラスだから、スズ香ちゃんが一人にならないように目を配るね」
悠一郎くんは普通の提案でよかった。
「あたしもそうする!」
悠一郎くんに密着できて、ご機嫌な麗子ちゃんはそう言った。
麗子ちゃんは、今日みたいなオソロシイ企画さえ思いつかなければ、それでいいよ!
《スズ香、オレたちのことも忘れるなよ》
《毎日一緒にいるのに、イヤになっちゃうわ》
すねる神使たちに、わたしは「ごめん」と手を合わせた。
コンゴウとシロガネに関しては、家族だと思ってるんだから。さっきのは、本当に言葉のアヤだったんだようっ。
本当に、なんであんなこと言っちゃったんだろうね。
わたしはぜんぜん、一人じゃなかった!
からっぽになっていた体が、温かいもので満たされた。
「みんな、ありがとう。遅くなりすぎないうちに家に帰ろう!」
わたしは立ち上がった。
でも、急に立ち上がったせいで、頭がクラリとしてふらついてしまう。
「スズ香!」
となりに座っていた龍司とカヲルが同時に立ち上がって、両サイドから支えてくれた。
「だいじょうぶかよ」
「急に立ち上がったら危ないよ」
「うん。エヘヘ。ありがとう」
――わたしは、幸せものだな。
イヤな幽霊の気配がなくなった森の坂を、わたしたちはゆっくり下っていった。
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