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4 凶暴化しているケモノの原因とは?
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「おいスズ香、あそこを見ろよ」
龍司は今入ったのとは別の、もう少し高い山のふもとを指さした。
「トンネル? ロープがはってあるね、使われてないトンネルなのかな?」
「そうだよ、封鎖されてる。通称は『おばけトンネル』。おばけが出るって噂で、最近人気の心霊スポットなんだよ」
相沢さんが解説してくれた。
「へえ、カヲルがそんなことに詳しいなんて、意外だな。おまえって、オカルト系が好きなのか?」
「まさか、チームメイトに行こうって誘われただけ。断ったけどね」
「そいつらにも行くなって言っとけよ。ヤバイ感じがする。スズ香も感じるだろ?」
「確かに、悪い幽霊がいっぱい集まってそうだね」
ずいぶんと離れているのに感じるって、よっぽど強いってことだよ。そんなところに遊びに行くなんて、みんなだいじょうぶなのかな。
「立ち入り禁止にしたって入るヤツはいるだろうけどさ。せめておれたちの知り合いだけでも、近づかせないようにしたほうがいいな」
そんな話をしながら、シロガネに山のふもとで降ろしてもらった。
また車で迎えに来てもらうために、相沢さんはお父さんに電話をかけはじめた。
その間に、わたしは龍司のケガの汚れをペットボトルの水で洗って、タオルを巻いた。
「大げさだな、そのままで平気なのに」
「ばい菌が入っちゃうでしょ」
龍司はおとなしくしていたけど、やっぱり痛いようで、眉間にしわを寄せていた。
「本当にありがとう。龍司が助けてくれなかったら、どうなってたかわからないよ」
「もういいっつってんだろ」
龍司は怒ったような顔をして、ぷいっと顔をそむけた。ちょっと顔が赤くなってる。
恥ずかしいから本人には言わないけど。
さっきの龍司、すごくカッコよかったよ。
数日後。
昼休みに、相沢さんに呼ばれて廊下に出た。何人かの女の子たちが、チラチラとこちらを見ていた。相沢さんって、やっぱり人気あるなあ。
「あのあと山のお社を直して、スズ香の神社に頼んで、神事っての? やってもらったらさ、シカやイノシシが元に戻ったって」
「へえ、え、えっと」
相沢さんに名前で呼ばれたのが気になって、うまく相づちが打てなかった。
「どうした?」
「あの、名前……」
「ああ」
相沢さんはクスリと笑った。
「あんな体験を一緒にしたんだからさ、あたしたちは友達だろ?」
「友達っ?」
心臓が飛び跳ねて、ドキドキする。
《スズ香、初めての友達なんじゃないか?》
肩にいるコンゴウがわたしをからかってくるけれど、嬉しくてほとんど耳に入らない。
「スズ香も名前で呼んでよ」
「相沢さんのことを?」
「うん」
相沢さんは切れ長の瞳で、黙ってわたしを見つめている。呼ばれるのを待っているみたい。
「あの、カヲル、ちゃん」
「呼び捨てでいいよ」
「カ、カヲ……」
名前を呼ぶだけなのに、なんだか、ものすごく恥ずかしい。
「急にはムリ! 家で練習してくる!」
「うん、頑張って」
相沢さんは楽しそうに笑った。
「これからスズ香の言うことは、全部信じるから」
「えっ、どうして?」
「空飛んじゃったらさ、見えなくても信じざるを得ないよ」
「ふふっ、そうかも」
相沢さんが冗談めかして言うから、わたしも笑ってしまった。
わたしに、ステキな友達ができた。
龍司は今入ったのとは別の、もう少し高い山のふもとを指さした。
「トンネル? ロープがはってあるね、使われてないトンネルなのかな?」
「そうだよ、封鎖されてる。通称は『おばけトンネル』。おばけが出るって噂で、最近人気の心霊スポットなんだよ」
相沢さんが解説してくれた。
「へえ、カヲルがそんなことに詳しいなんて、意外だな。おまえって、オカルト系が好きなのか?」
「まさか、チームメイトに行こうって誘われただけ。断ったけどね」
「そいつらにも行くなって言っとけよ。ヤバイ感じがする。スズ香も感じるだろ?」
「確かに、悪い幽霊がいっぱい集まってそうだね」
ずいぶんと離れているのに感じるって、よっぽど強いってことだよ。そんなところに遊びに行くなんて、みんなだいじょうぶなのかな。
「立ち入り禁止にしたって入るヤツはいるだろうけどさ。せめておれたちの知り合いだけでも、近づかせないようにしたほうがいいな」
そんな話をしながら、シロガネに山のふもとで降ろしてもらった。
また車で迎えに来てもらうために、相沢さんはお父さんに電話をかけはじめた。
その間に、わたしは龍司のケガの汚れをペットボトルの水で洗って、タオルを巻いた。
「大げさだな、そのままで平気なのに」
「ばい菌が入っちゃうでしょ」
龍司はおとなしくしていたけど、やっぱり痛いようで、眉間にしわを寄せていた。
「本当にありがとう。龍司が助けてくれなかったら、どうなってたかわからないよ」
「もういいっつってんだろ」
龍司は怒ったような顔をして、ぷいっと顔をそむけた。ちょっと顔が赤くなってる。
恥ずかしいから本人には言わないけど。
さっきの龍司、すごくカッコよかったよ。
数日後。
昼休みに、相沢さんに呼ばれて廊下に出た。何人かの女の子たちが、チラチラとこちらを見ていた。相沢さんって、やっぱり人気あるなあ。
「あのあと山のお社を直して、スズ香の神社に頼んで、神事っての? やってもらったらさ、シカやイノシシが元に戻ったって」
「へえ、え、えっと」
相沢さんに名前で呼ばれたのが気になって、うまく相づちが打てなかった。
「どうした?」
「あの、名前……」
「ああ」
相沢さんはクスリと笑った。
「あんな体験を一緒にしたんだからさ、あたしたちは友達だろ?」
「友達っ?」
心臓が飛び跳ねて、ドキドキする。
《スズ香、初めての友達なんじゃないか?》
肩にいるコンゴウがわたしをからかってくるけれど、嬉しくてほとんど耳に入らない。
「スズ香も名前で呼んでよ」
「相沢さんのことを?」
「うん」
相沢さんは切れ長の瞳で、黙ってわたしを見つめている。呼ばれるのを待っているみたい。
「あの、カヲル、ちゃん」
「呼び捨てでいいよ」
「カ、カヲ……」
名前を呼ぶだけなのに、なんだか、ものすごく恥ずかしい。
「急にはムリ! 家で練習してくる!」
「うん、頑張って」
相沢さんは楽しそうに笑った。
「これからスズ香の言うことは、全部信じるから」
「えっ、どうして?」
「空飛んじゃったらさ、見えなくても信じざるを得ないよ」
「ふふっ、そうかも」
相沢さんが冗談めかして言うから、わたしも笑ってしまった。
わたしに、ステキな友達ができた。
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