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2 おさげの女の子と虹色のオーラ
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「恵美ちゃん?」
声をかけている途中から、恵美ちゃんはスッと姿を消した。
あんなに楽しそうにしていたのに、急にどうしたんだろう?
「スズ香ちゃん」
「あっ、悠一郎くん」
悠一郎くんが、すぐ後ろに立っていた。
そうか、悠一郎くんが近づいてきたから、恵美ちゃんは逃げちゃったんだ。
悠一郎くんの虹色のオーラ、本当に強いな。
「授業中、小さな子の霊を膝にのせてた?」
「えっ、悠一郎くん、見えたの?」
「ううん、違うよ。スズ香ちゃんの動きがさ、小さな子供をあやしているようだったから」
わからないようにしていたつもりだったのに、バレちゃってた。悠一郎くんの席は後ろのほうにあるから、わたしの動きが見えやすかったのかもしれない。
「でも、悠一郎くんが来たから、いなくなっちゃった。さっき、オーラが強いって言ったでしょ」
「そうか、悪いことをしちゃったかな」
「学校が終わった後で会う約束をしてるから、だいじょうぶだよ」
「なら、よかった」
悠一郎くんはほっとしたように笑った。
「ねえ悠一郎くん。どうしてわたしのこと、信じてくれるの?」
ずっと気になっていたことを、思い切って聞いてみた。
「スズ香ちゃんは、ウソをつくようなタイプには見えないよ。それに」
悠一郎くんは言葉を切って、思い出すように窓の外の青空に目を向けた。外からミンミンゼミの声が聞こえてくる。
「以前、見たことがあるんだ。スズ香ちゃんがかがんでいて、なにもないところに手をかざすと、白く光りだした。その光の中に小型の犬のシルエットが映って、消えたんだ。あれって成仏っていうの? そういうことしてたんだよね」
「うん」
迷っている霊を成仏させてあげることは、よくあることなんだ。いつも周囲に誰もいないことを確かめているのだけれど、ときどき見られてしまう。そして今日みたいに「変な子」って言われちゃうんだよね。
でも、困っている人がいたら放っておけないのと同じ。特に幽霊の場合は見える人が限られているから、わたしがやらなきゃって気になるんだよね。
「それから気になってスズ香ちゃんのことを見てるんだけど、さっきみたいに、見えないなにかに、優しい顔で話しかけていることがよくあるなって」
悠一郎くんがにっこりとほほえんだ。なんだか、すごく照れくさい。顔が熱くなってなって、わたしは顔をそらしてしまった。
「ぼくも幽霊が見えたらいいのにな」
「でもね。いくら見えたって、わたしが一番会いたい幽霊は来てくれないんだよ」
「スズ香ちゃん、それって……」
「おい、スズ香!」
その声は悠一郎くんをさえぎった。そして、わたしはとつぜん腕を掴まれた。
顔をあげると、不機嫌そうな龍司がいた。
「放してよ龍司」
せっかくホッコリした気持ちだったのに。
「デレデレしてんじゃねえよ。来い」
「いたっ」
龍司に腕を引っ張られた。立ち上がった勢いで、龍司の体にぶつかってしまう。
「龍司くん、女の子をそんな乱暴にあつかうなよ」
悠一郎くんも眉をつり上げて、龍司を注意した。
「うっせーな、スズ香はおれのものなんだから、いいんだよ。おまえは別の女にチヤホヤされてろ」
元々悪い目つきを更にとがらせて、龍司は悠一郎くんをにらんだ。
「ちょっと、わたしがいつ龍司のものに……」
「いいから来い」
腕を引っ張られたまま、わたしは龍司に、廊下に連れ出された。
声をかけている途中から、恵美ちゃんはスッと姿を消した。
あんなに楽しそうにしていたのに、急にどうしたんだろう?
「スズ香ちゃん」
「あっ、悠一郎くん」
悠一郎くんが、すぐ後ろに立っていた。
そうか、悠一郎くんが近づいてきたから、恵美ちゃんは逃げちゃったんだ。
悠一郎くんの虹色のオーラ、本当に強いな。
「授業中、小さな子の霊を膝にのせてた?」
「えっ、悠一郎くん、見えたの?」
「ううん、違うよ。スズ香ちゃんの動きがさ、小さな子供をあやしているようだったから」
わからないようにしていたつもりだったのに、バレちゃってた。悠一郎くんの席は後ろのほうにあるから、わたしの動きが見えやすかったのかもしれない。
「でも、悠一郎くんが来たから、いなくなっちゃった。さっき、オーラが強いって言ったでしょ」
「そうか、悪いことをしちゃったかな」
「学校が終わった後で会う約束をしてるから、だいじょうぶだよ」
「なら、よかった」
悠一郎くんはほっとしたように笑った。
「ねえ悠一郎くん。どうしてわたしのこと、信じてくれるの?」
ずっと気になっていたことを、思い切って聞いてみた。
「スズ香ちゃんは、ウソをつくようなタイプには見えないよ。それに」
悠一郎くんは言葉を切って、思い出すように窓の外の青空に目を向けた。外からミンミンゼミの声が聞こえてくる。
「以前、見たことがあるんだ。スズ香ちゃんがかがんでいて、なにもないところに手をかざすと、白く光りだした。その光の中に小型の犬のシルエットが映って、消えたんだ。あれって成仏っていうの? そういうことしてたんだよね」
「うん」
迷っている霊を成仏させてあげることは、よくあることなんだ。いつも周囲に誰もいないことを確かめているのだけれど、ときどき見られてしまう。そして今日みたいに「変な子」って言われちゃうんだよね。
でも、困っている人がいたら放っておけないのと同じ。特に幽霊の場合は見える人が限られているから、わたしがやらなきゃって気になるんだよね。
「それから気になってスズ香ちゃんのことを見てるんだけど、さっきみたいに、見えないなにかに、優しい顔で話しかけていることがよくあるなって」
悠一郎くんがにっこりとほほえんだ。なんだか、すごく照れくさい。顔が熱くなってなって、わたしは顔をそらしてしまった。
「ぼくも幽霊が見えたらいいのにな」
「でもね。いくら見えたって、わたしが一番会いたい幽霊は来てくれないんだよ」
「スズ香ちゃん、それって……」
「おい、スズ香!」
その声は悠一郎くんをさえぎった。そして、わたしはとつぜん腕を掴まれた。
顔をあげると、不機嫌そうな龍司がいた。
「放してよ龍司」
せっかくホッコリした気持ちだったのに。
「デレデレしてんじゃねえよ。来い」
「いたっ」
龍司に腕を引っ張られた。立ち上がった勢いで、龍司の体にぶつかってしまう。
「龍司くん、女の子をそんな乱暴にあつかうなよ」
悠一郎くんも眉をつり上げて、龍司を注意した。
「うっせーな、スズ香はおれのものなんだから、いいんだよ。おまえは別の女にチヤホヤされてろ」
元々悪い目つきを更にとがらせて、龍司は悠一郎くんをにらんだ。
「ちょっと、わたしがいつ龍司のものに……」
「いいから来い」
腕を引っ張られたまま、わたしは龍司に、廊下に連れ出された。
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