4 / 31
1 動物の霊がいっぱい!
3
しおりを挟む
隠れているつもりだったのか、木曽龍司はわたしと目が合うと、ギクッとしたように背をのけぞらせた。
「あれは、うちのクラスの龍司か?」
相沢さんも鳥居のほうを見ていた。
「うん、そうみたいだね」
わたしは口をすぼめる。せっかくの日曜日なのに、なんの用なのかな。
龍司は小さなころから、よくわたしにからんできた。遊んでくれるなら嬉しいのに、いつもいじわるをするんだ。
龍司はハーフパンツをはいた足を振り上げて、文字どおり鳥居の前にいるシカなどの霊を蹴散らした。
「あっ、わたしがやろうとしたのに。手間が省けちゃった。やったね」
「なにが?」
相沢さんがわたしにたずねる。
「龍司が鳥居のところにいた動物霊を除霊したんだよ」
「除霊って、幽霊を消し去ったってこと?」
「そうだよ」
龍司は同い年で唯一の、幽霊が見える仲間なんだ。
だけど、そのせいで「どっちが早く幽霊を退治できるか」って勝負を挑まれたりする。一人でやればいいのに。
あと、わたしが理不尽だと思うのは、龍司には友達がいっぱいいること。
わたしと同じで幽霊が見えるし、それをみんな知ってるのに。
それに、龍司のほうが性格が悪いのに、こんなのゼッタイおかしいよっ!
動物の霊を消してから、龍司はかぶっている帽子を取って、鳥居の前で一礼してから敷地に入ってきた。
「鳥居って、礼をしてくぐるものなの?」
相沢さんが、またわたしに質問した。
「うん。神社は神さまがいらっしゃる場所だから、その聖域に『おじゃまします』みたいな感じで入るんだよ。出るときも『おじゃましました』みたいな気持ちで一礼するのが作法なんだ」
「へえ、知らなった。あいつ、きちんとしてるんだな。あたしも帰りはちゃんとやるよ」
相沢さんは龍司を見ながら言った。
参道の中央は神さまの通り道と言われているので、龍司は中央を避けて脇を歩いている。龍司はお寺の息子だからか、こういうルールはいつもしっかり守るんだ。そこはいいなって思う。
「龍司は冬月に会いに来たんだろうな。じゃあ、あたしは帰るよ。父のこと、ありがとう」
「どういたしまして」
相沢さんは父親と一緒に帰っていった。
仲がいい似たもの親子だね。……いいなあ。
わたしは白衣の胸を押さえて、ふうっと息をはく。
《どうした。父親がうらやましいのか》
「ううん、ちょっと緊張しちゃっただけだよ」
わたしはコンゴウとシロガネに向かって首を横に振った。
相沢さんは目立つからよく見かけてはいたけれど、同じクラスになったことがないので、しゃべったのは初めてだった。それでも同級生なら名前と顔が一致するくらい、この町は小さい。
ここは都会から電車で一時間くらいの、ベッドタウンって呼ばれる地域なんだ。
その中でも端っこなので、山に囲まれていて、自然がいっぱいある。
田園風景、というほどの田舎でもないけれど、高いビルはなくて、一つ一つの建物が大きいし、みんなゆったりと生活している感じ。
「よお。見てたぞ、スズ香」
龍司がわたしの前に立った。背は相沢さんと同じくらい。ベリーショートの黒髪は、ほとんど帽子に隠れている。
眉も目じりも上がっていて目つきが悪いのに、龍司はなぜか女の子に人気がある。
運動神経がいいから、スポーツをしているときは、カッコよく見えるのかもしれないね。
「あれは、うちのクラスの龍司か?」
相沢さんも鳥居のほうを見ていた。
「うん、そうみたいだね」
わたしは口をすぼめる。せっかくの日曜日なのに、なんの用なのかな。
龍司は小さなころから、よくわたしにからんできた。遊んでくれるなら嬉しいのに、いつもいじわるをするんだ。
龍司はハーフパンツをはいた足を振り上げて、文字どおり鳥居の前にいるシカなどの霊を蹴散らした。
「あっ、わたしがやろうとしたのに。手間が省けちゃった。やったね」
「なにが?」
相沢さんがわたしにたずねる。
「龍司が鳥居のところにいた動物霊を除霊したんだよ」
「除霊って、幽霊を消し去ったってこと?」
「そうだよ」
龍司は同い年で唯一の、幽霊が見える仲間なんだ。
だけど、そのせいで「どっちが早く幽霊を退治できるか」って勝負を挑まれたりする。一人でやればいいのに。
あと、わたしが理不尽だと思うのは、龍司には友達がいっぱいいること。
わたしと同じで幽霊が見えるし、それをみんな知ってるのに。
それに、龍司のほうが性格が悪いのに、こんなのゼッタイおかしいよっ!
動物の霊を消してから、龍司はかぶっている帽子を取って、鳥居の前で一礼してから敷地に入ってきた。
「鳥居って、礼をしてくぐるものなの?」
相沢さんが、またわたしに質問した。
「うん。神社は神さまがいらっしゃる場所だから、その聖域に『おじゃまします』みたいな感じで入るんだよ。出るときも『おじゃましました』みたいな気持ちで一礼するのが作法なんだ」
「へえ、知らなった。あいつ、きちんとしてるんだな。あたしも帰りはちゃんとやるよ」
相沢さんは龍司を見ながら言った。
参道の中央は神さまの通り道と言われているので、龍司は中央を避けて脇を歩いている。龍司はお寺の息子だからか、こういうルールはいつもしっかり守るんだ。そこはいいなって思う。
「龍司は冬月に会いに来たんだろうな。じゃあ、あたしは帰るよ。父のこと、ありがとう」
「どういたしまして」
相沢さんは父親と一緒に帰っていった。
仲がいい似たもの親子だね。……いいなあ。
わたしは白衣の胸を押さえて、ふうっと息をはく。
《どうした。父親がうらやましいのか》
「ううん、ちょっと緊張しちゃっただけだよ」
わたしはコンゴウとシロガネに向かって首を横に振った。
相沢さんは目立つからよく見かけてはいたけれど、同じクラスになったことがないので、しゃべったのは初めてだった。それでも同級生なら名前と顔が一致するくらい、この町は小さい。
ここは都会から電車で一時間くらいの、ベッドタウンって呼ばれる地域なんだ。
その中でも端っこなので、山に囲まれていて、自然がいっぱいある。
田園風景、というほどの田舎でもないけれど、高いビルはなくて、一つ一つの建物が大きいし、みんなゆったりと生活している感じ。
「よお。見てたぞ、スズ香」
龍司がわたしの前に立った。背は相沢さんと同じくらい。ベリーショートの黒髪は、ほとんど帽子に隠れている。
眉も目じりも上がっていて目つきが悪いのに、龍司はなぜか女の子に人気がある。
運動神経がいいから、スポーツをしているときは、カッコよく見えるのかもしれないね。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP
じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】
悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。
「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。
いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――
クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ちいさな哲学者
雨宮大智
児童書・童話
ユリはシングルマザー。十才の娘「マイ」と共に、ふたりの世界を組み上げていく。ある時はブランコに乗って。またある時は車の助手席で。ユリには「ちいさな哲学者」のマイが話す言葉が、この世界を生み出してゆくような気さえしてくるのだった⎯⎯。
【旧筆名、多梨枝伸時代の作品】
湖の民
影燈
児童書・童話
沼無国(ぬまぬこ)の統治下にある、儺楼湖(なろこ)の里。
そこに暮らす令は寺子屋に通う12歳の男の子。
優しい先生や友だちに囲まれ、楽しい日々を送っていた。
だがそんなある日。
里に、伝染病が発生、里は封鎖されてしまい、母も病にかかってしまう。
母を助けるため、幻の薬草を探しにいく令だったが――
おねしょゆうれい
ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。
※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
ポストとハトと流星群
澄田こころ(伊勢村朱音)
児童書・童話
中学1年生のアスは、夏休みなのに退屈していた。
勉強ばっかりで、九州のおじいちゃんのところへ遊びにいけない。
どこにもいけなくて、本当につまらない夏休み。
おじいちゃんに書いた手紙を、ポストへ入れた瞬間、変なおじさんの声が聞こえた。
「そなたの願い、かなえてやろう」
瞬間、アスは緑に覆われた世界へ。
いったいここはどこ?
異世界で、不思議な友だちや動物たちと、星のかけらをさがし始めたアス。
つまらない夏休みが、大冒険の夏休みにかわった。
アスの行きて帰りし物語がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる