【完結】神柱小町妖異譚

じゅん

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序章

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 土砂降りの闇夜のなか、木造の長い橋は激しい濁流に揺れていた。
 小藤はこの橋脚に縛られて身動きが取れない。十六歳の少女の胸まで淀んだ川の水が上がってきている。
「怖いよ……、おっとう、おっかあ……」
 小藤は堪えきれずに涙を流す。
 冷たい水が急速に小藤を冷やし、激しい流れは刃となって小藤の小袖と身を切り裂いた。泥水の飛沫が顔にかかり、目を開けていられない。
 ふと、小藤は川の流れが変わるのを感じた。
 目を凝らすと、大きな流木が迫ってきていた。当たれば押しつぶされて小藤の命はないだろう。
 いよいよ当たるというとき、小藤は恐怖で意識を失った。

 意識を取り戻した小藤は、神々しいばかりの美しい男性に抱えられていた。
 ああ、私は神様に召されたんだ。神様ってやっぱり綺麗なんだなあ。
 そう思いながら小藤は再び瞳を閉じた。
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